聖夜に瞬く、希望のギフト
「なろうラジオ大賞7」参加作品です。
「おおっ、召喚成功ですぞ!」
王城で行われている勇者召喚。勇者は聖女と婚約できるといいます。
50年ぶりに行われた儀式は、成功したのです。
周りの大人の緊張の糸が切れ、代わりに高揚感が高まります。今から勇者が現れるのです。
「……ここは?」
現れたのは、若くミステリアスな黒髪黒目の男性でした。
……なんということでしょう。好みにどストライクです。
落ち着いた印象の彼は、前髪の奥で何を考えているのでしょうか。風に揺れる黒髪と、その瞳に私は目を、そして心を奪われたままです。
――わかっています。どうせ、叶わぬ恋なのです。聖女様に私が勝てるわけがないのですから。
◇ ◇ ◇
それなのに。
勇者は我が家に剣を習いに来るようになったのです。これほど公爵家に生まれてよかったと思った事はありません。なんていったって、彼が毎日視界にいるのです。
ジンが来るようになってから、私は警備を口実に毎日訓練場に出向いています。
そして今日、初めて勇者と言葉をかわすことができました。
「やぁ、君がここのお嬢様?会えて嬉しいよ。僕は仁。君は?」
「わっ……私は、レイナ、ですわ」
ジンは、つっかえたことも気にせずにこにこと話しかけてくれます。
「レイナ、いい名前だね。響きから素敵じゃないか」
私は今日のために生まれてきたのでしょうか。
それからというもの、彼はよく話してくれました。
「僕のいた国では、政治は選ばれた人がするんだ。王様じゃなくてね」
ジンの話は興味深く、聞いているだけで幸せでした。
◇ ◇ ◇
「12月24日の夜、一緒に広場にいかない?」
彼からそう誘われ、私はすぐに承諾しました。
広場の大きなモミの木の前で、ジンを待ちます。まもなく彼が袋を持ってやってきました。
星がよく見えるベンチに二人で腰掛け、空を見上げます。
「僕が暮らしていた国ではね、12月24日の夜は想いを寄せる人と過ごす『聖夜』なんだよ」
唐突に何でしょう。……え?
「それで、このギフトを、受け取ってくれないかな?」
先程掲げていた袋からジンがギフトを取り出し、私に差し出します。
「そ、そういうことでしたら……受け取ってやらないこともないのですわ」
あぁ、なぜ私はこんなにも素直になれないのでしょうか。
受け取ったギフトを胸に、二人、空を見上げます。
そういえば、聖女様は……?
そんなことが脳裏によぎります。いえ、きっとうまくいくでしょう。
私の希望を裏付けるように、一等星がきらり、きらめきました。




