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顔出し絶対NGの人気歌姫ですが、友達の家で女子会をしていたらなぜか推しが訪ねてきました。  作者: 小野寺雀


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1/4

顔出しNGの歌姫ですが…


ワァーーー___


「ありがとうございましたー!」


歌い切るとすぐに大きな歓声が沸き起こり、私は釣られた興奮そのままに頭を下げ大きく手を振ってステージからはける。


「お疲れ様です!ありがとうございました!」


せかせかと廊下を動き回るスタッフすべてに軽く頭を下げ、まるで赤べこのようになりながら楽屋へと急ぐ。

どんな時でも挨拶は社会人としての基本、いや…社会人じゃなくても大切か…。とにかく、そこは大事にしたいといつも思っている。どうせ関わるなら無愛想より愛想がいい方がいいだろう。人生の大先輩であるおじいちゃんおばあちゃんからも評判はいいんだから間違い無いはず。



バタン___


「あっっっつぅ〜。」


楽屋に着くなり顔を覆っていた、藍色にキラキラと星や月が輝く仮面を外す。

そうすることで私は歌姫ールナーから、ごくごく普通の25歳満島(みつしま) 柚月(ゆづき)へと戻るのだ。


「あぁ〜疲れた〜。ちょっと出たしブレちゃったな。」


今日のステージのプチ反省会をしながら汗だくの顔をゴシゴシと拭いていく。

あまり多くはないが、人前に出て歌う時は必ず仮面を付ける。だから私は表情で何かを伝えることはできない。音に乗せて体を揺らすくらいはするが、ダンスを踊れるわけでもない。

その分、歌声と言葉に一生懸命心を込める。私にはそれしかできないから。



コンコン___


「え"っ!…は、は〜い!」


楽屋のドアをノックされ、またこの仮面を付けるの?せっかく外したのに…今日は早く着替えて帰りたいし、と様々な感情が濁った一音にすべて集約され喉の奥から漏れ出る。


「お疲れ〜。」


とりあえず仮面を顔に当て開いたドアの方へ振り向くと、見覚えのあるサングラスをかけた男性が入ってきた。


「なんだ、たっくんか。お疲れ様。」

「なんだとはなんだ。どうせ仮面付けるのめんどくさ!とか思ってたんだろ?」

「思ってた。」


ドアが閉まると私はすぐに顔から仮面を離し、力の入っていた顔を緩める。

彼は世界的に有名な音楽プロデューサー"takuya"で、私をルナとしてここまで連れてきてくれた人。

学生の頃からの付き合いで、今では相棒のような兄のようなそんな存在だ。


「そろそろ仮面やめれば?」

「いやムリムリ!あ、ほら私早く帰りたいから出てって!まだ着替えもしてないんだから。」

「何今日用事でもあんの?」

「いや…あぁそう!あるのあるの!」


と彼を楽屋からすぐに追い出した。

今夜は待ち望んでた大事な用事があるのだ。



「テレビテレビっと…よしっ!間に合った!」


『こんばんはー!SDsmile(エスディースマイル)でーす!』


家に着くなりテレビをつけ、目線は外さずキッチンでパッパと手洗いを済ませる。

そして帰りに買ってきた夕飯をノールックで広げ準備は万端だ。


「キャーーー!エディー、かっこいい!リアタイできてよかった〜。」


画面に映る7人は顔面良し!歌良し!ダンス良し!喋っても良し!の私が思う中で最高の男性グループだ。

彼らに出会ったのは5年くらい前だろうか…。


私が初めて野外の音楽フェスに参加した時、まだそんなに人前で歌ってなかった私は緊張でガチガチだった。

そんな時にデビューしたての彼らが歌うステージをたまたま舞台袖で目にし、私は文字通り心を打たれた。ズンズンと胸に響く重低音は縮こまっていた体を解き、彼らの力強い歌声と前向きな言葉に目の奥が熱くなった。ダークなかっこいい曲を歌い踊ったかと思うと次は笑顔眩しい応援ソングを歌いあげ、たぶん私はこの日が1番胸が忙しかったんじゃなかろうか。いや、今も忙しいけど…。


「うぅわっ…何?今のフェイク…カッコ良すぎる。もう神…。」


彼らは自分と同世代でもあり、勝手に親近感も湧いていた。接点は全くないためほんとに勝手に、だが。


「はぁ〜太陽くん。今日も…いい。」


そしてその中でも最推しなのが園山(そのやま) 太陽(たいよう)くん。

彼はダンスも歌もずば抜けていて、作詞作曲もしていたりする。なんてことないようになんでもこなしてしまうがとっても努力家で、人としてだけでなくアーティストとしても尊敬している。


「あぁ…。今夜のステージも最高でした。」


私はまんまとその沼にハマり抜け出す気もさらさらなかった。


「あ!ヤバい明日仕事だ!早く寝なきゃ…あ、でも仕事が終われば女子会だ!」


そしてこの日も私は彼らの曲を聴きながら心地のいい眠りに意識を沈めていった。


楽しみにしていた女子会であんなことが起きるとも知らずに…。

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