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第28話どう足掻いても、嫉妬される運命

 赤坂さんと一緒に文化祭を回っている。

 悔しいことに普通に楽しい。

 赤坂さんの狙いは俺の恋人の座ということもあってか、やたらベタベタとしてくるのを除けば。


「赤坂さん。もうずいぶんと前にお化け屋敷を出たんだし、怖いからって俺の腕を掴むのはもういいんじゃないか?」

「えー、まだ怖い余韻が残ってるよ~」

「嘘つけ。いいか、友達としての節度を守れないなら、ガチで絶交だって言ったのを忘れてるのか?」

「あはは、怒られちゃった」


 俺の腕に抱き着いていた赤坂さんはてへへと言わんばかりに俺から離れて行った。

 にしても、腕に胸をずっと当てたな……。

 腕に伝わっていた胸の感触を忘れずにいると、赤坂さんが小さな声で俺に言う。


「今日はノンワイヤーの綿100%のをしてきたんだよ? で、どうだった?」

「やけに柔らかいし、こいつまさかしてないんじゃ……と思ったけど、そういうのだったんだな」

「さすがに痴女じゃないからね。あ、でも、颯太くんがどうしてもっていうなら……」

  

 赤坂さん思わせぶりなそぶりで、脱いでもいいよ? と言わんばかりに肩をチラッとさらけ出した。

 ほんと、凄いアピールだよなぁとか思いつつ、俺は赤坂さんに聞いてしまう。


「てか、なんで俺にそんな絡んでくるんだ?」

「教えてほしい?」

「まあ、それなりに」

「別に大したことないよ。ただ単になんか気が付いたら、颯太くんのことが気になっちゃうようになってただけ」


 大したことないけど、好きになっちゃったんだからしょうがないでしょ?

 と、ニコッと赤坂さんは俺に笑ってきた。 

 漫画やアニメでもあるまいし、好意を抱くきっかけなんて、なんとなく接していたら急に芽生えるほうが自然だよな。


「可能性ないのによく頑張れるな」


 俺は赤坂さんの気持ちに応じることはない。

 そうハッキリと告げると、赤坂さんは大胆不敵に笑った。


「可能性ないから頑張ってるんだよ。だってまぁ、こういうの初めてだし」

「初めてか……」

「そうそう。初めてだから、すぐには諦めきれないんですよ~だ!」

「……もしさ、目的が果たせなかったとしたら、辛くないか?」

「それはそれでいい思い出になると思わない?」


 ほんと強い子だなぁと赤坂さんのことを笑ってしまう。

 もし、俺が二人だったらよかったのに。

 なんて馬鹿げたことを考えていると、赤坂さんが相性占いの館へと俺を引っ張る。


「今後の私たちを占ってみよ!」


 元気だなぁとか思いつつ、俺は赤坂さんに引っ張られて占いの館へ連れて行かれた。


   ※


 占い研究会の出し物である占いの館。

 それっぽい雰囲気に装飾された教室の中、部員の子が俺と赤坂さんの相性をタロットカードで占った。


「えーっと、お二人の相性は悪くありません」

「やったね! で、私たちの今後はどんな感じなんですか?」


 わくわくと赤坂さんは占い師の子に聞いた。

 すると、占い師は神妙な面持ちで俺たちに言う。


「二人には大きな壁があります。この壁を乗り越えられるかどうかで、二人の運命は大きく変わることでしょう」

「それはどうすれば乗り越えられるか教えてください!」

「諦めない根気と緻密な作戦。この二つにより、壁を打ち破ることはできるかも……といった感じですが、残念なことに壁は分厚いです。本当に分厚くて、破るのはほぼ無理とだけはお伝えしておきましょう……」


 よしよし、このまま赤坂さんの心を折れ。

 占い師のことを内心で密かに応援しているも……。

 返って逆効果だったようで、赤坂さんがそんな壁には負けない! と言わんばかりにさらに燃え始めてしまう。

 俺は赤坂さんのやる気を削ぐために、俺は違うことを占ってくれという。


「すみません。今、好きな相手が居るんですけど、この恋愛が成就するか占ってください」

「……横のお方ではないですよね?」

「まあ、はい……」

「では、あなたの恋愛が成就するかを占いします……」


 タロットカードを何枚か選ぶ。

 そして、結果が出た。

 占い師は何とも言えない顔で俺の目を見て話し出す。


「恋愛は成就しない方がおかしいレベルで成就します。ただ、その後が問題で……」

「も、問題って?」


 占い師は俺の目をちらちらと見た後、凄く申し訳なさそうに口を開いた。


「相手はとても嫉妬深いため、行動には注意すべきでしょう」

「そ、そんなに注意しないとまずいんですか?」

「最悪の場合、死にます」

「マジか……」

「颯太くんの好きな人って、なんかすごい人なんだね」


 占い結果を聞いた赤坂さんが苦笑いで俺を見てきた。

 いやまあ、うん。

 あながち、占いの結果は間違ってなさそうなのが怖いんだよな……。

 まだ時間はあるし、葵に刺されないためにはどうすべきかを聞いておくか。


「で、俺はどうしたら安全に過ごせるんですか?」

「嫉妬深い相手のことを物凄く可愛がり続けてください」

「なるほど」

「ただ、可愛がれば可愛がるほど嫉妬されて危機が訪れる回数は減りますが……」


 ごくりと俺は唾を飲んだ。

 そんな緊張する俺に占い師は告げる。


「危機的状況になった際の危険度は劇的にあがります」


 うん、あんま意味ないな!

 どう足掻いても、ヤバいんだな……。


「あの……。俺の好きな人って、やばい感じですか?」

「はい。やばいです。私が占った中で一番ヤバいです。ちなみに、恋愛成就しなかったとしたら、好きな子は嫉妬深いのであなたのヤバめなストーカーになる可能性が非常に高いので気を付けてください」

「ねえねえ、やっぱり私の方がいいんじゃない?」


 俺の好きな奴がヤバいやつという占いの結果を聞いて、それなら私の方がよくない? と赤坂さんはアピールしてきた。

 しかし、占い師は苦笑いで俺に言う。


「たいして変わりませんよ。横にいる女の子が恋人になったとしても」

「赤坂さんって、嫉妬深いんですか?」


 恐る恐る聞いたら、占い師は俺にハッキリと告げた。


「はい、やっぱり私の方がいいんじゃない? とか言ってアピールしてくる子が、嫉妬深くないわけがありません」


 たしかに、それはそうだよなぁとか苦笑いしていると、赤坂さんはムスッとした顔で占い師に文句を垂れた。


「別に私は嫉妬深くないもん。ただちょっと愛が重いだけだし~~」

「っと、そろそろ時間ですので……」


 終了時間になったこともあり、俺たちは占いの館を出た。

 にしても、葵もヤバいし、赤坂さんもヤバいらしい。

 俺が好きになったり、俺を好きになる子はなんでヤバい子しかいないんだ?

 そんなこともあってか、俺は苦笑いが止まらなくなってしまうのであった。

 



 



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