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第27話諦めの悪い女の子

 今日は文化祭の日だ。

 友達と一緒に校内を回って楽しむ約束をしていたはずだった。

 あれ、俺の目がおかしくなったのだろうか?

 なぜか、待ち合わせ場所に一緒に回る約束をしてないのに赤坂さんがいる。


「……」


 そーっと素通りして一緒に回る予定だった奴らと連絡を取ろうとした。

 しかし、赤坂さんがバッと俺の前に立ちふさがる。


「颯太くんやい。私を置いてどこに行くおつもりで?」

「そういう赤坂さんこそ、俺と約束なんてしたのか?」

「してないよ。でもね、颯太くんのお友達がど~しても外せない用事が出来たから、俺たちの代わりに颯太の世話を頼んだ! って言われちゃってね」


 根回しして俺と一緒に文化祭を回ろうとする赤坂さんに俺は苦笑いしてしまう。

 葵との約束もあるし、さっさとハッキリとさせちゃうべきだろうな。

 俺は意を決して、赤坂さんに告げた。


「俺、赤坂さんの気持ちには答えられないからな」

「んー、なんのこと?」

「いや、それはその……」

「まったくもう、颯太くんの自意識過剰さんめっ!」


 ツンと俺のでこを赤坂さんは突いてきた。

 うん、強い。

 赤坂さんは脈なしなのを完全に分かっている。

 それがゆえに、告白をせずに友達という関係でチャンスを狙ってるんだ。


「ほんと、好きな人がいるから勘弁してくれ」

「あ、やっぱり?」

「……赤坂さんってなんかすごいな」

「えへへ、褒められちゃった」

「いや、褒めてないから……」


 恋する乙女は大胆不敵で最強なのだろう。

 諦めの悪さは人一倍で、俺のことを狙うのをやめる気はないようだ。

 とはいえ、赤坂さんと仲良くしてると葵は嫉妬してしまうので、俺は赤坂さんにしっかりとくぎを刺した。


「あくまで、俺たちは友達だ。だから、節度は弁えてくれないと絶交だからな」

「はーい! んじゃ、今日は《《友達》》として楽しく遊ぼうね?」


 ニコッと赤坂さんは俺に笑いかけてきた。

 葵が嫉妬するから俺に構ってくるなと言いたくなる。

 でも、そんなことを言えるわけもなく、俺はしょうがないので赤坂さんと一緒に文化祭を回ることにするのであった。


   ※


 文化祭で騒がしい学校の中を歩いていると、赤坂さんはかき氷屋さんの前で立ち止まり、いきなり俺の腕を引っ張ってきた。


「かき氷食べよ?」


 俺の返事を聞くまでもなく、赤坂さんはかき氷の列に並んだ。

 そして、策士っぷりを発揮した。

 赤坂さんは列の前に並んでいたクラスメイトである吉野さんの肩を叩いた。


「吉野ちゃん!」

「うわっ、いきなり声かけないでよしおり! って、まさか颯太くんと一緒なの?」

「んふふ~、友達に裏切られて独りぼっちだったから拾ってあげた」

「えー、そんなこと言っといて、あんたから颯太くんに無理言って一緒に回ろうとか言ったんじゃないの?」


 っく、やめろ。赤坂さん。

 俺と仲良しな雰囲気であることを周りに見せつけて、外堀から埋めようとするな。

 このままじゃまずいと思った俺は二人の間に割って入った。


「赤坂さんがどうしてもって言うからしょうがなく一緒に回ってる。吉野さんからも、わがまま言うなって怒ってくれよ」

「あはははは、やっぱりね! わがままな栞ちゃん、颯太くんにあんまり迷惑を掛けちゃだめだよ?」

「ううん、平気平気。だって、迷惑かけた分、ちゃ~んとお返しはしてるから」


 まあ、確かにお返しはされてるな。

 この前は、買い出しの日に色々と振り回したお詫びと称して、エッチな胸の写真とか送ってきたし。

 なんてことを考えていると、俺の背筋がいきなりぞわっとした。

 

「っっ!?」


 ふと、嫌な予感がした俺はあたりをきょろきょろと見てしまう。


 だって、赤坂さんと仲良くしてると葵との遭遇率が異常に高いのだから。


 あたり見渡してみるも葵の姿はない。

 まあ、今日はアイドルのお仕事があるって言ってたし、ここに居るわけがないか。

 俺は落ち着いた気持ちで勝手に外堀を埋め始めた赤坂さんに話しかける。

 吉野さんにもきちんと聞こえるように。


「でもまあ、俺も好きな人いるし、赤坂さんと一緒に仲良くしてるところをあんまり見られるのはちょっとな……」


 が、しかし、吉野さんは赤坂さんの味方だった。

 俺の脈なし宣言を聞いた後、ニコッとした顔で吉野さんは俺に聞いてくる。


「へー、彼女さんいるの?」

「いや、そういうわけじゃ……」

「じゃあ、栞と仲良くしてても今は大丈夫だね!」


 俺はぐぬぬぬという顔で赤坂さんを見た。

 すると、赤坂さんは小さな声で俺にこういうのだ。


「女の子はずるい生き物なんだよ?」

「赤坂さんを見てると、本当にそう思う」

「あははは、ごめんね?」


 ほんとうに厄介な子に好かれちゃったなぁ……。

 かき氷の列に並びながら、やれやれと俺は小さく溜息をついた。

 

 

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