表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その38~あの時

作者: 天海樹

「シフト代わってもらえません?」

「無理無理、18時以降はダメだって知ってるじゃん」

マサキはここ1年ずっと用事があるからと

18時以降のシフトには入っていない。

あまりにも特別扱いされているので

ハルが店長に何度か文句を言ったこともあるが、

「人一倍やってくれるからな」

でいつも片付けられてしまう。

それでもバイト仲間は納得してなかった。

バイトにとってシフト交換は当たり前の行事で、

ある程度融通が利くものとして

当てにしているところがあるからだ。

ハルもそんなマサキにウンザリしていた。


ある日ハルは、

友達のお見舞いに行くために

彼女が好きなケーキを買いに行った。

ラスイチだったのですぐに注文すると、

他の客が駆け込んできて

「売切れかよー」

と残念そうに言った。

「もし良かったら…」

とハルが振り返ったら、

そこにいたのはマサキだった。

マサキもハルに気付き、初めは遠慮していたが

「悪いな」

そう言ってケーキを持って出て行った。


ハルは他のものをお土産にして病院へと向かった。

「元気かー!」

そう言って病室に入ると、

友達のリンの目の前にあのケーキがあるのに気付いた。

「お兄ちゃんが買ってきてくれたんだ」

嬉しそうにリンが言うと、

「いらっしゃい」

と言いながら病室に入ってきたのはマサキだった。

お互いに顔を見合わせ驚いているとリンが

「もう知り合いみたいだね」

と笑った。

ハルは、バイトのシフトといいケーキといい

妹想いのマサキを見て印象がガラリと変わった。


それから二人は病室で会ったり、

バイト先でリンの話をしたりと急接近した。

そんな二人にリンは「付き合えばいいのに」と言ったりもした。

ハルもまんざらではないのだが、

「そっか、ハルはずっと想ってる人がいるんだもんね」

とハルの気持ちを代弁するように言った。

それはハルが中学生の時に

不良に絡まれていたところを助けてくれた

当時高校生の男子だった。

「誰が不良に絡まれたって?」

マサキがそう言うと、リンがハルを指さした。

「やっぱりそうか。いやー、あん時は参ったよ。

 助けたのに泣いてるからまるでオレが泣かせてるみたいで」

ハルを初めて見た時、

あの時の子じゃないかとマサキは思っていたらしく

ずっと気にはなっていたと言った。

それを聞いたハルは、

開いた口を手で塞ぎ目を丸くして驚いた。

マサキは硬直しているハルを見て

「今度は笑顔にしてやらないとな」

と言ってハルの頭に手を乗せて

髪の毛をクシュクシュにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ