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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第5章 交流の中で変わりゆく両世界
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5-16 魔道具のある地球世界3

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 さて、R国、C国が文句を言うのを諦めている状態で、世界平和軍にいちゃもんを付けているのは、韓国、インド、ブラジル、インドネシアなどの勢いのある中進国である。要は『国際間の善悪をお前らだけで決めるのは許されないし、まして、実力行使までするのは独善的過ぎる!』という言い分である。


 まあ、もっともな言い分であるが、その辺りを考えていれば、まだ世界平和軍は成り立っていないだろう。そして、彼等の本音は『自分が入っていないので気に入らない』ということだから、当然無視した。だが、G7+1の本音は、もっと参加国を広げるべきで、将来的には各国の軍を無くすということだ。


 ところで、国連はR国、C国の態度変化に伴ってそれなりの改革を行っている。まず拒否権のある常任理事国という制度はなくした。フランス、イギリスなどは世界平和軍がある現在、安全保障分野で実権のない常任理事国など意味がないと思っている。


 しかし、アメリカは少々都合が悪い、アメリカはR国に次いで拒否権行使が多い国でありそのエゴを通してきた。とりわけ目立つのは、ユダヤ人の国であるI国を露骨に庇うことである。I国が、パレスチナの人々が住む地を奪って建国したのは歴史的な事実である。


 そして、世界からユダヤ人が集まり人口が増えるにつれて、I国は周辺のパレスチナ人の土地をどんどん入植地として勝手に奪っている。当然抵抗はあるが、その抵抗は武力で押しつぶす。また、パレスチナの地は水源が少ないがその多くをI国が占有している。


 これには、流石にI国内でも反対意見があるが、貧しい層は強硬であり、遅れたパレスチナ人は追い出せという態度である。当然それは、パレスチナ人の怒りと憎悪を買うことになる。武力でI国に抵抗するハマスに同調する者が多いのはある意味当然である。


 アメリカはI国の後ろ盾であり、過去多大な援助を行ってきたが、国民は必ずしもI国寄りではなく、入植地の拡大にははっきり反対している者が多い。ではアメリカ政府が、なぜI国寄りからと言えば政治的・経済的にユダヤ人の力が強いからである。


 アメリカの大統領選挙において、僅か人口比で2%のユダヤ人を敵にすると当選はおぼつかないという。さらには、多大な費用が必要な選挙資金の調達においてユダヤ人は頼りになる。だから、アメリカ政府は、建前として2千年間いじめられてきたとして、ユダヤ人の国であるI国を応援するのだ。


 利害関係のない日本はI国より、むしろパレスチナに同情的な立場である。イギリスは、I国建国の影の立役者と言われ、I国建国をけしかけた立場である。しかし、それには知らん顔をしており、中立的な立場であるので、入植地の拡大やパレスチナ人いじめには反対している。


 そして、I国はテロリストのハマス絶滅のためと言いながらやり過ぎた。ハマスの支配するガザ侵攻によって、5万を超える人々を殺している。さらには、220万人が住む大都会であるガザの1/3余りを廃墟にした。死者の中の数千はハマスの要員かもしれないが、多くは一般市民である。


 さらに、ヒズボラへの報復としてレバノンの爆撃で数千を殺している。加えて、廃墟にしたカザの復興については、紛争終結から5年を過ぎても自らは殆ど手を付けていない。要は金がないのであるが、これは大部分が国際的な援助によって復興が進んでいる。


 復興中においては、最初は英仏など、その後は世界平和軍が治安維持を担い、施政は国連が行ってきた。だが、ある程度復興に目途が着いた所で、厚かましくもI国はガザを占領下に置こうした。だが、これはすでに活動を始めていた平和軍に実力により拒まれた。


 このようなことで、余りに独善的なI国はアメリカ国民を含む世界を敵に回した。平和軍も、ガザの治安維持を通じて、パレスチナの実情をほぼ正確に把握しており、人権の深刻な侵害が常態的に行われている地域として認識して、軍として対応を取ることを宣言した。


 この宣言に当たっては、I国は当然が激しく反対した。だが、アメリカ政府は当初強く反対したものの、賛成の他の6ケ国と賛成とする国内世論に押されて、結局賛成さざるを得なかった。つまり、世界はI国のこれ以上のバレスチナ人への人権侵害を許さないと宣言したのだ。


 ただ、この話には裏があって、すでにロシア極東の独立は決まったに等しい段階に入っているが、その内のサハリン島について、第2のユダヤ人国家とする話が進行している。シベリア共和国と名付ける予定の国にとっては、独立するにあたって世界のユダヤ人から集まる資金は魅力である。


 だから、第2のユダヤ国家を建国するこの話は成立すると見られている。つまり、I国は現在の領土では増加する人口を支えきれないと見ており、だからこその入植地の拡大であった。世界平和軍はその宣言に従って、ガザに基地を置き、パレスチナとI国を巡る紛争に介入する構えを見せている。


 実際に3ヵ所の建設途上のユダヤ人入植地の建設を実力で止めて、地主のパレスチナ人に返した。さらに平和軍は、入植地の建設などによる家や農地を破壊する等の損害の賠償をI国に迫っている。加えて、力により奪い取った西岸地区の様々な拠点の返還をI国に迫っている。


 このような動きに、アメリカ政府は基本的にその一員である平和軍に同調している訳だが、これは国民の間に広がる、I国支援への疑問視及び内向き志向に迎合してのことだと見られている。多くのアメリカ人は、核無き今アメリカに安全保障上の懸案事項はないのだから、自国の世界平和へのコミットは平和軍で十分と考えている。


 その中で、動機はどうあれ、現代において5万人の抵抗できない人々を殺すような国は許せないということだ。結局、多くは自分の国のユダヤ人の国へのひいきが過ぎたと考えている。基本的にはアメリカにおいて、ユダヤ人を嫌っている人は多い。


 ちなみに、世界平和軍へのいちゃもんであるが、G7+1の諸国は別段その陣容を拡大することに否やはない。しかし、国連のように余りに利害が異なる国の集まりになって、何も決まらないということにしたくはないのである。その意味で、G7+1であれば安全保障に関しては概ね意見が一致する。


 世界平和軍の行動は世界平和機構の決定に従って行うことになっている。世界平和機構は平和軍の上位機関であり、G7+1の構成国から派遣された議員によって構成され、出身国の決定に従って採決に参加する。その決議は多数決によることになっていて、各議員の票の重みは同じである。


 ただ、緊急を要する事案については、各議員の独断で採決に参加することが許されている。つまりそれを許せるレベルの議員を派遣せよということだ。だから、各国は殆どが大統領や首相の経験者がその議員になっている。日本は元首相の岸辺俊一が選出されている。


 そして、世界平和機構の議会において、構成国拡大の議論が行われているが、議会と言ってもたった8人の会議であり、非公開でもあるので、砕けた会議になっている。

「それで、構成国を増やすことはいいのだな?」


 議長のドイツ元首相のカール・リューベックが問いかけ、7人の議員が頷くのを確認して続ける。

「それで、今候補に昇っているのは、オランダ、スェーデン、エジプト、インド、ブラジル、韓国、インドネシア、メキシコだな、全部加えると構成国はちょうど2倍だ。どうだね?」


「うーん。中東の国を入れなくていいかな?」

 フランスの元大統領のアラン・ミッシェルが首をかしげて言うのに、イギリスの元首相のチャール・ケインズが応じる。

「入れなくていいだろう。大体連中はうるさいけど、動きは悪いし面倒なだけだ。選ぶとすればサウジ程度だけど、連中は余り入りたいとは言ってなかった。それに、女性が車の免許もまともに取れない国の連中と同じ場で議論はしたくないぞ」


 ケインズの言葉にミッシェル以外が頷いている。皆中東の者との交渉には苦い思い出でがあるのだ。次に日本の元首相の岸辺が言う。


「韓国は外して欲しいな。大体において、あの国は約束を守らないし、国際貢献も少ない。またその割に、自国に意味不明の自信をもっている。そして、すぐに裏で金を使って動いて妙なこと仕掛けてくる。特に我が国がからむと妙な敵愾心を持って接して来るので、わが国としては一緒の席で議論したくない。


 今の国連での、他国を巻き込んで世界平和機構への非難の急先鋒はあの国だろう。今の構成国であれば心配していないが、今後増えるとかの国が騒動の元になると思う。それとこれを私が言ったのは絶対に秘密だぞ。漏れたら大変なことになる」


 岸辺の言葉にアメリカの前国防長官のジム・カーターが賛同する。

「うん、わが国も同感だ、国連での騒ぎの元はあの国であることは、我々も確認している。それに、あの国は信用ならん。誠実ということの大事さが判っておらん。将兵もそうだ、朝鮮戦争の経験から言えば、肩を並べて戦いたいとは思わない相手だ。


 それに、今の政権は基本的に反日・反米だ。もっとも頼る相手のC国が、親米親日を装っているので困っているようだがね。ハハ、しかしキシベが心配するのは判るよ。あの国に日本が加入に反対したのが漏れたら大変なことになる。あの国には多様な意見はないからな」


「ええ、日本の人々に憎悪が向きますからね、それこそ不測の事態が起きかねない」

 岸辺がポツリと言ったのを受けて、議長が議場を見回しながら言う。

「韓国については日本とアメリカが反対ということだ、他の国はどうかな?」


「ああ、わが国も加入に反対だ。国連の騒ぎであの国はいささか我が国も腹にすえかねている。また、そもそもあの国を入れる必然性がない。今まで、碌な国際貢献もしておらんし、魔道具先進国への嫉妬だろうが、日本憎しがが目に余る」


 アジアの情勢に通じているオーストラリアの前首相のケリー・ドノパンが反対意見を言うと、会場の全議員が頷いている。それを確認して議長が決める。

「では今回の加入は韓国を除いた7ヵ国ということだね。よろしいな?」

「「「「「賛成!」」」」」


 かくして、世界平和軍の構成国は15ヵ国になった。無論それに不満を持つ国はあり、とりわけ韓国は、構成国に選ばれると信じて疑わなかっただけに、大騒ぎになった。そして、そうなった犯人捜しがこの国のマスコミを賑わし、『日本がそのように提議したに違いない』と正解の議論が起きた。


 ただ、それに対して、アメリカから流した情報は、『余りに酷かった国連での韓国の反平和軍の活動が構成国の議員の怒りを買った』ということで、彼等にも自覚はあったので、日本憎しはそれほど盛り上がらなかった。



後数話で終結の予定です。

申し訳ありませんがすこしゆっくりの投稿になります。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  色々問題はあるみたいだけど、概ね良い方向へと世界が動いているところ。  I国の余剰人口の方々にサハリンに移住してもらうことは良いけど、世界には国土の無い民族が他にもいるわけだし、そういう…
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