表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第1章 レイナ嬢日本に登場、巻き起こる渦
8/86

1-8 レイナ嬢、大学の魔法の研究への協力

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 レイナが地球に現れた最初の日に、魔法を使うところはビデオ等で撮影されている。それは、N大学の香川教授他の皆によるもので、ビデオの他赤外線、超音波など取りあえず準備できた機材を使ったものだ。さらに、講堂でのパフォーマンスもビデオで撮影されている。


 また、その後も大学に来たレイナが様々な魔法を使うところを、試験室において様々な角度からあらゆる測定を行っている。また、香川の了解のもとに、あらゆる精密な身体測定を行うと共に、魔法を使っている時の超音波、体表面の体温などを測定している。この際に体内の把握には放射線による被ばくを避けるためにCT検査は避け、超音波検査及びMRI検査のみ行っている。


 そのような、様々な測定結果が揃った段階での発表会が、N大学の大講義室で開かれた。これには、N大学の理工学系の教員研究者のほぼ全員、さらに他大学、国立研究所の研究者もかなりの数集まって、総員300人を超えている。無論、俺間島もレイナと出席している。


 まずは、俺の家とN大学講堂でのパフォーマンスの様子が撮影され、それぞれにどのような魔法で、どういう現象が起きたかが香川教授から説明された。その説明は適宜、画面を停止させてのもので、極めて解りやすいものであった。これは、レイナが最も集中して視聴していた一人だったろう。


 彼女は後に、あの映像見ながらの解説を聞いて、始めて本当の意味で自分の魔法が理解できたと言っている。さらに、彼女は教育学部での教育によって、様々な現象の成り立ちを定性的かつ定量的に把握できるようになった。つまり、彼女は風魔法では空気を操作する際に、空気という存在は感じて操っている。


 だが、その構成が不活性な窒素と活性のある酸素から成り立っていること、その重量が1㎡で1.2㎏であることも知らなかった。さらには、膨張させれば温度が下がり、圧縮させれば上がるなども同様である。彼女の教育が中学の課程を終えた到着の1月後には、これらのことを理解したお陰でその魔法は応用手法が格段に増え、威力も2倍近くに上がった。


 そのK大学での発表会では、出席者の研究者達は、全員が夢中になって魔法のビデオを視聴している。一通りの映写が終わった後、聴衆を正面から見て説明者の香川が言った。


「皆さんは、お気づきだと思います。レイナ嬢の使う魔法は、彼女に意思というか命令に従って、特定の物理現象をなんらかの手段で起こしています。何らかの手段は後で説明して貰いますが、レイナ嬢の体から発するある波動のようです。

 しかし、ここで重要な点は、エネルギー収支から言えば『魔法により引き起こされた現象は、我々の知る科学からすればあり得ない』ということです。つまり新しい物理学、例えば『魔法物理学』とも言える新たな科学を構築しないと説明がつかないのです」


 ここで、出席者が一斉にがやがやと私語を始めたが、半数ほどの者たちは、香川の言うことを理解して大いに頷いている。


「そして、おそらく多くの諸兄も、そのことには映像を見て気がついたことと思う。私も見るところではその『魔法物理学』によると、物質はやけに素直で容易に操作されている。つまり、そのメカニズムを再現出来れば、我々の科学では不可能であったことが可能になる可能性があると思うのです。


 例えば、レイナ嬢は空気を操って自らの体を浮かせて飛行しましたが、ある道具でこれを再現できれば空を飛ぶという動作を、プロペラやジェットなしにできる可能性がある言うことです。さらに、レイナ嬢によると、魔法には物質を操る錬金術があるそうですから、原子変換も出来るかもしれない。


 さらには、空間収納ということが可能であることはすでに確認しています。だから、これを究明すれば同じことができるでしょうし、場合によっては離れた空間を繋ぐことだって出来ると思われます。私は、レイナ嬢の齎してくれた『魔法』は、このような可能性を秘めたものだと思うのです。

 では、次に様々な測定によって、魔法の科学的な分析をしてくれた南准教授にお願いします」


 南の発表は、レイナが魔法を使っている間には、何らかの物理的な波動や力が出ているはずということで、あらゆる測定器具で測った結果であった。これには、他の3つの研究室から装置を借り、分析に協力して貰った成果でもある。


 結果として、レイナが魔法を使っている間に彼女からある波動が放射されていることが観測されている。これは、光や電波もその1種である電磁波の1つであり、振動数がガンマ線に近く極めて振動数が高いために浸透力は強いが質量を持たないので人体への有害性はない。


 この波動を仮に『魔導波』と呼ぶ。これにより、魔法が発動されていることはほぼ確実であるが、どのように作用して魔法という現象を引き起こしているかは分らない。

 ただ、それがどこから生み出されているかは、レイナの体の検査結果から調べられた。それは、地球人の脾臓に当たる部分から発せられて、血管を通して手のひらから放射されているという。


 つまり、レイナの脾臓に当たる部分が魔力の発生源であり、そこで生まれた魔力が手のひらから放射されて魔法を引き起こしている。魔力とは発生するとある種の電磁波であり、ガンマ線並みの高周波であるがガンマ線のように質量は持たないので人体などに害はない。


 そして、その魔力がどうやって魔法という現象を引き起こしているかはまだ不明ということだ。また、引き起こされた現象はエネルギーの収支からすれば、現在の物理学的ではあり得ない。


「だから、その魔力は触媒的な働きをして、物質に意図した変化を促しているんだ。そして物質には、いや空間もそうだろうが、我々の知らない性質があって、その触媒的な効果がその性質を引き出すのだろう」

 一通りの説明が終わった後に、議論しているグループで、白髪のT大の教授が持論を吐いている。


『その内容は香川の言っていることと同じだな』そう思って俺は聞いていた。会場はとてもまだ解散する雰囲気でなく、発表者は取り囲まれて質問攻めにあっていた。


 レイナも無論、学者連中に囲まれているが、彼女はもはや普通の日本語の会話は普通にこなせるので、直接質問に答えている。通常であれば、世の男は彼女のエキゾチックな美貌に魅かれるのであるが、流石にそのようなことに関心を持つ者はいないようだ。


 この日の発表会は、どちらかというと他大学からの要請を無視できなくなった結果である。香川の話によると、現状のデータからすれば、魔力による物質への働きかけのメカニズムは、その観測結果から導きだすのは無理そうだということだ。


 しかし、魔方陣を用いた魔道具があり、其方から攻めれば何とかなりそうだと言う。魔道具についてはレイナが余り得手ではないというが、いくつか彼女が空間収納に持っていたのでそれを研究しているらしい。また、魔道具は魔石という魔力のバッテリーによって魔力のない者も使えるという。


 他大学からの研究者は明日以降、魔法を研究している研究室を訪問したいということで、遠方の者はN市に泊まるらしい。そこで自然発生的に出てきたのは、目の前でレイナの魔法を見たいという希望である。


 そこで、レイナは『まあ仕方がないわね』とつぶやき、いつもの光魔法による光球と、光りながら風魔法による空中飛行を行った。観衆はビデオでは見ていたが、室内を暗くしてのこのパフォーマンスはやはり見ごたえがあるもので、拍手喝さいであった。


 ―*-*-*-*-*-*-*-*-


 まだ、研究の途上であったために、発表会では報告されなかったが、N大学の関係者としては魔道具と魔石が重要であることが認識されていた。これは、魔道具で魔法が実現できるのであれば、地球の科学がそれを再現できる可能性が高い。さらに魔石も魔力のバッテリーなのであるが、物質である以上これも再現できる可能性が高い。


 さらに重要なのは空間収納である。レイナは財布型の小型の収納袋を持っており、それに灯り、給水、火付け、治癒の魔道具を入れていた。これらは、貴族の大人のたしなみとして常時持っているものだそうだ。また、彼女は魔法で空間収納も使えるそうだが、常時魔力を使うので余り使わないという。


 だから、レイナは大学で、魔法を使う際の様々な測定が終わると、魔道具の研究に加わることになった。ちなみにあの発表会の後に、N大学は文科省の申し入れもあって、魔法研究に他大学や研究機関から20人ほどの研究者を受け入れている。


「さて、魔方陣をプログラミング言語で組んだが、どうなるかな」

 電気工学科の宮島健太助手が、それを手に取って楽し気に言う。その様子をレイナが少々複雑な面持ちで、香川教授がわくわくして見ているが、他にも7人ほどが見ている。これはレイナが持っていた灯りの魔道具の魔方陣を、レイナに解き明かして貰ったが、それを、CADを使ってプログラミング言語で描いて、アルミ板にエッチングしたものだ。


 宮島が相変わらず軽い調子でレイナに頼む。

「さて、このなんちゃって魔法具に魔力を流して貰おうか。レイナ君?」

「ええ、解りました。エイ!」


 彼女が可愛く気合をいれると、その魔方陣を刻んだかまぼこ板位のアルミ板の先端に3㎝ほどの球になった明かりが灯る。

「おおー、やった!点いた、点いたよ!メイドインジャパンの魔法具だ」


 宮島がはしゃぎ、香川以下がにこにこして拍手する。それに対して、レイナが半分ふくれっ面で言う。

「ああー、言語が違ってもいいのか。いやあ出来るとは思っていなかったですよ。でも魔道具を作るのは高等な技術なんですよ。そのCADでチャカチャカ作って、焼き付けるなんて。誰でもできちゃう」


「まあ、レイナ君これも君のお陰だよ。これで、少なくとも魔道具で魔法を再現することが出来ることは解った。後は魔石の制作だな」

 香川が言った言葉に対して、宮島が聞く。

「香川先生、どうなんですか、魔石の制作は?」


「うん、応用物理学科の名波准教授がやっているけど、概ね目途が付いてきたと言っている」

「それは楽しみですね。いよいよ、次元収納容器ですね」

「ああ、灯りは電気で出来るが、次元収納は作れると世の中が変わるな」

 宮島の言葉に香川がしみじみ言う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  まずは日本人が直接魔法を使うという方向よりも、魔道具を地球の技術で再現するという方向へ話が進みましたね。これは地球人の常識としては全くリアルなやり方だと思います。  光の魔法が再現できた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ