5-11 イスカルイ王国の魔獣狩りツアー3
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いよいよ、今日は魔獣狩りである。客は5人ずつ10組が構成され、朝9時出発の午後16時にホテルに帰って来る行程になっている。なおこの時間はあくまで惑星カガルーズでの時間である。魔獣狩りツアーの募集人数は100人であるので、2日で一巡することになっている。
ちなみに、惑星カガルーズの1日は24.5時間であるので地球と30分ずれる。また年間は452日と10時間である。だから、イスカルイ王国では地球式の時計やスマホに切り替える時に、1日を24時間にして、1週間を7日、1月を30日または31日とし、年間を15ヶ月とした。
どの道、イスカルイ王国では以前には時計がなく、時間はいい加減であったから、それほどの問題は起きなかった。それに、惑星カガルーズの地軸の傾きが小さいので、季節の変化がはっきりしないために、人々は季節の移り変わりをあまり意識しない。
だから、1年も400日から500日までの諸説があって、その認識は明確ではなかった。一方で、昼夜の変化は毎日のことなので、意識せざるを得ない。だから、何日という単位の時間は正確に把握しているが、その間の区切りについては厳密でなく結構いい加減であった。
その状況で、いきなり地球からスマホと時計が導入されると、時の数え方が大幅に変わっても『そんなもの』として受け入れた。これは、イスカルイ王国で勝手に決めたものであったが、他国へスマホや時計が導入されるとき、他国も『そんなもの』として受け入れている。
ちなみに、地球側と惑星カガルーズ側の人は、常時開いている次元ゲートを通じてネットで連絡を取れ、行き来もできる。しかし、互いの現地時間が異なっており、日々30分ずれる。だから、今はスマホにはそのずれを示すアプリがあって、相手の時間を確認して連絡することが義務付けられている。
伊勢谷と山名は、コテージを出てカート車でフロントのある本部ビルまで行き、待っているグループに合流した。彼等の服装は作業服にスニーカーを履き、タオルや軽い食べ物などが詰まった小さなリュックを背負っている。そこには、①~⑩の番号のついた旗が立っており、その周りにグループができている。
各グループの脇には、日本でも走っているグレイの電動バイクが10台ずらりと並び、その内の5台の後ろには多分客用であろう2輪車が連結されている。それを見て伊勢谷が隣の山名に言う。
「山名さん、あれが僕らの乗る客車ですよね、あれに乗ると思うとちょっと怖いな」
それに対して、そう思ってあらかじめ問い合わせをしていた山名が答える。
「うん、ちょっとね。だけど、林の中を走るとなるとサイドカーでは幅を取るので無理だし、あんな風に後ろに連結して走るしかないでしょう。歩くのは嫌だしね。僕もパンフレットを見て心配になって聞いたんですよ、『ちょっと危ないようにみえる』ってね。
そうすると、返事はけん引車のドライバーは風魔法が使えるから、魔法で安定させるって言っていた。彼等は、人を飛ばせるレベルの魔法を使えるらしいから、安定を保つのは問題ないらしいよ。また、殆どの経路は土魔法士が地面を舗装しているらしい。だからそんなに揺れないそうだよ」
「へえ!風魔法かあ、人を飛ばせるなら安定を保つ位はできるよね。林の中も舗装されているのか、それは凄いね。でも考えたら、日本みたいに重機を持っていく必要がないのだから簡単だよね。でもありがとうございます。安心しましたよ」
伊勢谷と山名は同じ⑤のグループである。彼等が着いた所には、10人の案内の魔獣ハンターがいて、すでに3人の客が待っているので、2人は一番遅かったようだ。客の3人の胸には現地語の名札を付けており、着いた2人に、日本語をしゃべるハンターの女性が名札を渡して付けるように言う。
10人のハンターは30代から20代に見えるが、3人が女性である。彼等は、皆お揃いの明るいグレーの上下の服にごつい靴を履き、革製の胴鎧にヘルメットを被っている。彼等の鎧の背には、リゾートのロゴが大きく記されており、さらに胸にはカタカナの名札がつけられていて名前が判るようになっている。
5人の客は互に自己紹介するが、伊勢谷と山名の他、川奈という30代に見える長身の男、日比野という中背の男に、30代に見える永井という女性であった。彼女は長身で鍛えている感じの美人で、100人で来たグループの中で5人の女性の中の一人である。
引率のハンターから、名札を渡してくれた20代初めに見える女性が進み出て話し始めた。身長は160㎝余りで、日に焼けた鋭い目つきで女性としては精悍な感じである。
「はい、皆さん、お早うございます。私は、ハンターグループのガイド役のDランクのジェリアと申します。間もなく狩りに出発しますが、その前に我々のメンバーを紹介します。名前は名札に書いている通りです。まず、こちらにごつい人がリーダーでBランクのガイラです。
後8人はCランクのミガル、オミダイ、カール、キャメラに、Dランクのセンタイ、アイラ、セメンズ、ペリエスです。また、皆さんの乗るキャリアをけん引するのは私を含めたDランクの5人です。この中で、日本語ができるのは私だけですが、皆さんお持ちのスマホのアプリによって、必要な意思疎通はできます。
さて、今日のコースは先ほどお渡しした地図の通りですが、今から説明しますのでご覧ください。私共のグループ⑤は、グループ④、⑥と共に地図のC点まで一緒に行きます。その後は3グループに分かれて私たちは背後のアイラ山の山麓に向かい、D点を過ぎて狩りの区域に向かいます。
ここA点から湖畔のB点までが7㎞、さらに湖畔のC点までが10㎞あります。その後、湖畔から離れて山麓のD点までが25㎞あります。狩りの区域はD点以降のE点、さらにF点までですが各点間の距離は10㎞あります。
C点までは、まず魔獣は出ませんが、そこからD点まではある程度遭遇するでしょう。この間、あるいは狩りの区間DからEさらにF点までに出会う魔獣の大きいものは私共のハンターが狩りますが、体長3m以下のものについては、希望する皆さんにも狩って貰います。
各点には安全な休憩所がありますので、各点では15分~30分休憩します。昼食はDの休憩所でとる予定です。移動の速度は時速20㎞程度ですし、その間は幅1.5mで舗装されていますので、余り揺れることはないと思います。
湖畔のB、Cでは美しい湖の景観、さらにそれ以降では原始の森の景観を楽しんでください。さて、皆さんに乗って頂くキャリアーについて説明しますので、こちらにおいでください」
ジェリアの言葉に、客の5人は移動してバイクと接続されているキャリアーを囲む。それを確認して、彼女は話を続ける。
「こちらが、私共が使っているバイクです。これは日本のN社の製品でMバッテリーと回転の魔道具で動きます。ガソリンタンクは不要なので、座席の前には収納庫がついており、ここにマジックバッグなどを入れます。従来、私共ハンターは大森林の中では、歩くしかなく、獲物などは荷車で運んでいました。
それが今では、森の中でもこうしたバイクを使え、年間の収入以上の値段だったマジックバッグもD級の私共でも買えるほどの値段になりました。だから、従来は頑張っても片道10㎞ほど移動するのがせいぜいでしたが、今では5倍以上の距離の移動が可能になりました。
さらに、人工魔石が日本のお陰で安く買えるようになりました。お陰で魔法を最大出力で何時間でも使えますし、結界の魔道具も買えます。それにキュアラ―もあります。だから私達ハンターは死ななくなりましたし、収入が何倍にも増えました。
ハンターは、以前ではそれしかできない者がやる仕事で、死の危険が高いのにほとんどの者が貧しかったのです。私達魔獣ハンターの状況はこのように、うんと改善されました。これは日本の技術のお陰であり、それを齎してくれたレイナ様のお陰です。
私共もこうしてそれなりの待遇で雇って貰えていますからね。ああ、話が逸れましたが、これがキャリアーです。これは、こちらの工房で組み立てています。ですので、ちょっと不細工ですが、頑丈なことは確かです。では仲間のセンタイに乗って貰います」
彼女が、現地語でセンタイというハンターに指示すると長身、長髪の若者が、頷いて進みでる。彼は、赤く塗られた2輪のキャリアーのサイドドアを開いて、座席に座ってその前にある手摺を掴む。キャリアーには、前にプラスチックの風防があり、後ろに荷物入れがある。
彼の足は、バイクと同様に地面についており、走り始めると足を上げて足置きに足を乗せるようになる。なお、キャリアーに人が乗っていないときは、スタンドが降りて走る前には跳ね上げるようになる。
ジェリアはホンタイが乗って見せるのを確認して、皆を見渡し続けて言う。
「では皆さんに乗って頂きましょうか。なお、このキャリアーは不安定に見えますが、けん引するバイクを運転する5人は私も含めて風魔法が使えます。だから、魔法で補助して安定を保つので大丈夫です。また、何らかの危険があればすぐに結界を張りますので、魔獣が出ても心配ありません」
こうして、グループ④に続いて、伊勢谷や山名のグループ⑤は一列になって出発する。それらは、リゾート地のゲートを潜り湖畔の細い道を走っていく。リゾートの前の湖には白い遊覧船が浮かんでおり、大勢の客が身を乗り出しているのが見える。
さらには、モーターボートが5~6隻、手漕ぎボートが20隻ほど浮かんで走り回っている。
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なぜか、1話で終わる予定の魔獣ツアーが終わりません。




