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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第5章 交流の中で変わりゆく両世界
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5-5 レイナ妃暗殺未遂2

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 レイナは、ミラを連れて王都を歩いている。

「奥様、いくら何でも私達2人だけというのは危ないのじゃないですか?」


「大丈夫よ。貴方がいるからね。ハハハ、まあ、それは冗談だけど。いつまでも襲われるのを恐れていたんじゃあ、うっとうしいもの。いい加減にけりをつけたいのよ。先日のは単独犯で、まあ、やり方も他の人を巻き込むようなものでなく、まっとうなものだよね。


 困るのは大勢の人がいる時に、雷魔法や爆裂魔法などを使われることよ。私は結界で助かるけれど、巻き込まれて死ぬ人が大勢出ます。だから、人が集まる場所に行けないのよ。何度か襲われて撃退して、ダメだということを納得させるのよ。そのために、今日2人で外に出ているわけ」


「ううーん。まあ奥様の結界を突破は出来ないでしょうが、それでも心配です。でも、敵方には私達が出かけているのは判っているのでしょうか?」

「ええ、勿論よ。王宮勤めのものは親族関係などで全て繋がっています。勿論自分が漏らしたことが私の暗殺に繋がるとは思っていませんでしょうが。まあ、今日は何らかの動きがあるでしょうね」


「奥様、王太子殿下、旦那様はご心配にならないのですか?」

「うーん、心配はしているわよ。でもね、うぬぼれでなく、現時点で実際のところ危険はないはずよ。そこをちゃんと説明して判って貰っているの。それに、懐妊したら私もこんなことはできないわね。それまでのことですから、と言ってね」


「それにしても、奥様。先日の魔法学園のことですが、何でまた奥様に毒を盛るなどということをしたのでしょうか?奥様が人の悪意を見抜くこと、また鑑定をできることなど判っていると思うのですが」


「そこは、ミラが逆に常識がないのよ。私は転移とか雷の魔法とかの大魔法ができるという点では有名だけど、細かい魔法は不得意と思われているらしいの。鑑定とか人に見せたことはないしね。人の悪意を見抜く魔法も、そういう魔法があるということも知られていないよ。ミラは知っていた?」


「うーん、そう言えばそうですね。私も悪意を見抜くとか精神系の魔法はまるっきり不得意で、鑑定もダメでしたが、奥様から教えられました」


「そう、念話をできるようになってからよね、少し時間がかかったけれど、念話というか感覚を共有できれば、大抵の魔法は覚えることができるわよ。だけど、魔力操作が一定のレベルにないと、無理ですからね。そして、魔力操作は地道な努力が必要で、それが最も苦手なのが魔力の大きい高位貴族なのよ。


 それでいて、自分の魔法に絶大な自信があるわけで、傲慢だから魔術師団には全く採用されないの。だけど、彼等の魔術師団への評価は、小器用な魔術師というもののようね。確かに、彼等は以前は魔力量が大きく、単調でも威力のある魔法が撃てるということで、それなりの価値はあったわ。


 だけど、人工魔石が行き渡った今は、殆どの者が彼等レベルの魔法を使えるから価値がなくなった訳よ。そして、彼等高位貴族の最大の問題は、怠惰ということね。少数の天才はいるけれど、幼い頃から教えられ、人に何でもやらして物事を済ませる。要は上から強制されることしかやらない。


 素質的には優秀な者が多いのは確かだけど、甘やかされて傲慢になり、人の言うこと聞かないし、下は忖度して言わない。でも、彼等も困っているでしょうよ。彼等は下士官や下級将校に全く人望がないから兵を動かせないのよ。だから、軍を組織的に使って私を襲撃させることはできない。


 また、裏の組織に頼むにしても、すでに王都警務隊を使って殆ど危ない組織は潰したから、受けるものは居ないでしょうね。他国の裏の組織はまだ残っていますが、私の襲撃を受ける馬鹿はいないでしょうよ。つまり彼等は自分でやるしかないのよ。先日の暗殺未遂犯のオプーライにようにね」


「ええ、奥様。あのレベルでは無理ですね。殺気も漏れていましたし、まあ奥様一人で魔法を使わなくても無理です。だから、毒なんでしょうけど、離れた位置から鑑定を使える奥様では無理です」


「あら、変ね。車が途切れたな。なるほど、トラックと来たか。それとランクルねえ、ええ!後ろから騎馬かあ」

 車道に車が通らなくなったのに気がつき、後ろを振り向いて呑気にレイナが言うが、ミラは緊張した。


 大型ダンプ1台と、ランクル(ランド・クルーザー)2台が前方から突進してくる。電動だから音は大したことはない。さらに後ろを振り返ると騎馬が10騎ほど駆けてくる。少数の歩行者は慌てて走り出す者や蹲る者もあり、最終的には建物の中に逃げ込む。


「なかなか派手ね。量で押そうということか。でも相変わらず工夫がないわね。命が懸っている割に」

 まだレイナは呑気に言っているが、急ブレーキをかけて止まったトラックの荷台とランクルから乗り出した者達、騎馬からファイアボールと風の刃が飛んでくる。


 レイナもミラも結界を張っているので、あの程度の魔法で傷つくことはない。本来であれば、風の槌であれば少なくとも運動量で転ばせることが出来るのに、ファイアボールや風の刃では無理だ。しかし、次の瞬間、バリバリと大音響が鳴ってピカッと光った。


 その中で、太い光の矢がレイラとミラに直撃するのがはっきり見える。だが、光の矢は結界に反射して騎馬群に直撃する。10騎ほど騎馬は、前後に重なり合いながら道路幅10m程に広がっていた。そのほぼ中心を光の矢が走り、2~3人の振り上げていた剣に吸い込まれるように膨れあがった光が砕け散った。


 それは、一種の光の爆発で、バリバリと更なる音響と響き、血と共に人体が砕け散った。距離はレイナ達から30mほど離れていたが、その衝撃波は襲ってきた。だが、絶縁した結界に守られていたのでレイナ達には影響なく感電などもなかった。


 一方で、近くで直接被害を受けなかった騎馬隊の人と馬は、声もなく痙攣して倒れ伏している。明らかに感電だ。

「こ、これはちょっと半端ではないね。絶縁結界を作っておいてよかったよ」

 レイナもその結果は予想外だったので聊かビビッた。それでも道路の反対方向を見ると、トラックにランクルは停止しており、乗っている者も唖然として見ている。


 ランクルの助手席で、今回の襲撃のリーダーであるレイソン男爵は、雷の魔道具を使った結果に息が止まるほど驚いた。雷の魔道具は、トラックの荷台に乗った隊員が、レイナ達をめがけて撃ったもので、結界があろうと黒こげに出来るはずであった。


 しかし、彼の記憶に引っかかるものがあった。その魔道具をレイソンに渡した将校は、後で絶対に返すように念を押してさらに言ったのだ。

「これは、我が国軍の正式装備になっている。こいつで人を撃つと黒焦げだし、結界でも防げんはずだ。ただな、これを防ぐ方法があるという説もあるんだ」


「ええ!防ぐ方法が?」

「ああ、只の理屈だけどな。つまり、『無敵の武器を国軍に数千オーダーで配備する訳はない』ということだ。数千もあれば、盗まれることもあるし、戦場で鹵獲されることもある。だから、きっと何らかの防ぐ方法があるに違いないという理屈だよ」


「お前は知っているのか?」

「いや、結界は雷の光の矢を防ぐが、中の生物は『感電』という奴で死んでしまう。だから、防ぐことにはならない。でも、その感電を防ぐ方法はあるのかも知れない。俺は知らんがな」


 それで、レイソンは気にしても仕方がないと割り切り、雷の魔法具を本命の武器として用意したのだ。ファイアボールや風の刃は油断させるために放ったもので、騎馬群に刀を持たせたのもその心算だった。しかし、今の状況を見ると明らかに雷を防ぎかつ中の者を安全に保つ方法がある。


 しかも、それは雷の稲妻を操れるものだ。レイソンは、始めて心底からレイナ妃を暗殺する試みをしたことを後悔した。考えてみれば、雷の魔法具を王国に持ち込んだのはレイナであり、さらに彼女は、それを実用するための人工魔石も持ち込んでいる。


 それを防ぐ方法をすでに知っているのも、ある意味当然である。彼女が雷魔法を使えるのは有名であり、それを自在に使われたら、自分達の襲撃など一蹴されることは間違いない。今までは甘く見ていたが、先ほどの惨事を見て、それを確信せざるを得なかった。


 彼は侯爵家の2男であるが、彼等の仲間は皆有力貴族の子弟であり、世の中を甘く見ている所がある。少々不利になっても貴族それも高い爵位を振りかざせば、それで済んできたのだ。それが変わり始めたのは、レイナ妃が異世界から帰国してからだ。


 高位貴族は魔力が強く、強い魔法を使えるうえに、弱い魔力のものにとって強い魔力の人は畏怖の対象になる。だから、以前は貴族が傲慢であっても、階級を嵩にきて不正行為をしても、平民は泣き寝入りをしていた。そうせざるを得なかったのだ。


 しかし、レイナ妃は日本という貴族制度がない国の『法の下に平等』という中で暫く過ごし、イスカルイ王国もそうあるべきと思ったと著書に書いていた。考えてみれば、彼女の行動はそのことに一致している。その考えの元で、貴族を含めた国の役人を調べたら、不正行為が山ほど出たのは当然だ。


 我々は組織を律するのは我々の判断だと思ってきたし、規則を作るのは我々だと思っていた。だから、逆に法の下に平等などと言えば、我々が罰せられるのは当然だろう。そして、レイナ妃は影響力を高める中で、日本の専門家を呼んで法と規則を作って、実際に国の公式のものとした。


 それでも、我々の行動は改めることはなかった。確かにその法と規則によれば、それに反した我々は罰せられても仕方がない。しかし、我々はそれを不当と考えて、それをひっくり返そうとして、レイナ妃の暗殺という挙にでたのだが、明らかにその対象の方が我々より強そうだ。


 レイソンは同じランクルの中、もう1台のランクルの中、それからトラックの荷台など周りの仲間を見た。自らの撃った雷の魔法が逸らされ、3人の人体が光の爆発のなかでばらばらに引き裂かれる情景をみて、すっかり怖気づいている。

「レ、レイナ様があんなひどいことをするなんて!なんてことだ」

 運転席の仲間が震えながら、馬鹿なことを言っている。


 後とり得る手段としてはトラックとランクルで突っ込むしかないが、魔術師団の連中は飛行魔法を使えるから、あの2人ができないはずはない。つまり、すでに完全な手詰まりである。そこに、サイレンが鳴り響くが、これは王都警備隊車両の緊急時のサイレンである。


「だめだ、襲撃は失敗だ。俺たちは逃げられるかも知れんが、どうせ素性はばれる。ほら見ろ、騎馬隊の連中に生きている者がいる。逃げても無駄だ」


 レイソンの声に、ランクルは動かず大人しく警備隊に捕まった。トラックともう1台のランクルの、同じく動かず逮捕された。結局お坊ちゃん達は素性を知られて、逃げ回る自信がないのと、騎馬隊の惨状に心を折られたのだ。それがレイナ妃の暗殺の試みの最後であった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  今まで持っていた権力でも対抗できない。武力(暴力)でも対抗できない。だとしたら民衆の支持を取り付けて議会を通して自分たち(貴族)の意見を通すしかないのだけど、今の貴族たちにそれができるかな…
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