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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第1章 レイナ嬢日本に登場、巻き起こる渦
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1-7 レイナ嬢、大学での勉強

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 レイナは、月~金の週日は毎朝9時30分に香川教授の研究室に行く。俺の家から出て車で30分であるが、タクシー会社と契約して送迎を頼んでいる。研究室には香川教授と世話役の院生の皆川が待っていて、その日の予定を確認する。


 基本的には、午前中はレイナの日本というより地球の科学と、日本社会の勉強である。これについては、香川が教育学部の教育学科の武藤佳代教授に頼んで、カリキュラムとスケジュールを作って貰った。翌週の月曜日午前に、レイナも入って協議をした時の会話である。

 

 出席者は、レイナに彼女の大学側の担当の香川教授と補佐の皆川に対して、教育学部側は武藤教授と佐川彩香助教授の他に院生が5人加わっている。武藤教授が、香川からの紹介と依頼事項を聞いて言う。


「なるほど、レイナ君は日本の現在の社会が成り立っている基礎である科学を学びたいということですね。現在人の豊かな生活は、結局のところ科学の進歩による生産性の向上に支えられていますからね。さらに、あなたは、日本の社会がどう成り立っているかも知りたいと」


『はい、そうです。そのためには、まず私が日本語を学ぶ必要があります。それが出来れば、人を煩わすことなく、インターネットとかビデオ、さらに本によれば自分でかなりのことを勉強できます』


「うーん。語学が身につけばその通りですが、語学を一つ習うということは、容易なことではないですよ。相当密度を上げても1年やそこらでは無理でしょう」

 佐川助教授が言うと、レイナはこう伝える。

『他の言葉を学ぶ場合における問題は、習っても忘れることです。だから、ちょっと負担が大きいのですが、脳にある術を掛けるのです。このことで、1回で覚えることができます』


「ええ!そんな術が!?」

『できます。私は余裕のある時はそのような術をかけています。それで、私共の言葉に相当する日本語を大分覚えました。そうですね、3,000語程度は覚えていると思います』


それに対して香川が応じる。

「なるほど、講堂でのパフォーマンスでの日本語は、我々は教えた覚えがないのに、随分話せているなとは思った。そういうことか。じゃあ、レイナ君は誰かがひたすら何かを日本語で説明してくれると、その話した日本の言葉を学んだことになるのか?」


『そうですね。そうなります。でもそれには欠点があって、言葉にひたすら集中しますので、内容は頭に残っていないのです』

「ハハハ、なるほど。それはしゃべる方も疲れるな。しかし、疲れると言ったけどどの位続けられのかな?」


『そうですね、1時間位でしょうか。その日はもう同じことはダメですね。だから、使い勝手の悪い方法です』

 それを佐川助教授が手を振って否定する。

「日本語の平均文字数は6字くらいで、5分間に喋れる文字は1500位でしょう。つまり5分で250語を覚えるとなると、1時間では3,000語、1週間5日間では15,000語ですから、概ね会話には十分でしょう。

 使い勝手が悪いどころか、素晴らしい方法です!」


 そこに院生の一人が口を出す。

「ええ、私は修士2年の山口です。聞くのみでなく、文字を読み・書きを覚えるのも必要ですよね。ですから、ひたすら読んで聞いてもらうのみでなく、読み手とレイナさんが、両方とも文書を読みながら読み上げれば、文字の読みと意味は覚えられるのではないでしょうか?」


「うん、それはどうだろう。いくら何でもねえ。どうです、レイナさん」

 佐川助教授が院生の山口に首をかしげてレイナに聞く。

『ええ、他の人がそういうことをやったと聞いています。多分出来るでしょう』


 そういう話から、当面1週間は日本語を覚える試みをすることになった。その日の試みとして、3,000字位の新聞記事をコピーして、それをレイナも持って佐川助教授が読み上げる。誰一人席を立つ者もなく皆興味津々で見ている。


 レイナは、新聞記事を持って、佐川の読み上げに従って文字を目で追っているのが判る。表情から極度に集中しているのが見て取れる。

 それを見聞きしながら、香川は小声で武藤教授に言う。

「御手数をおかけしますね。でも、ああいう方法があるとは、意外だったなあ」


「いえ、これは十分な研究対象になります。これが普通にできるようになると、大変なことですよ。語学を一つ覚えるのは普通で3年かかります。これを1ヶ月以内に出来るとなると、大部分の語学専門の者は職を失います。まあ、この結果を見守りたいですな」


 読み上げが終わった後、佐川がレイナに聞く。

「どう、レイナさん。覚えられたかな?」

 数秒、ボーとしていたレイナであったが、頭を振って記事に視線を落として念話で返す。

『ええ、大丈夫だと思います。この文字が読めますもの。まだ全体の意味は掴めませんが』

「そうね、1時間ほど置いて、復唱してもらいましょうか。直後だとあり得ますから」


 その後、香川と皆川は研究室に帰り、レイナに対して教育内容と教材のガイダンスが行われた。基本的には、小学校から中学校の国語、理科、社会、算数、歴史のなどの教科書、さらに高校で国語現代文、世界史、数学、物理、化学、生物などの教科書による学習になる。


 日本の教育制度を説明され、教科書を見せられて、レイナは驚嘆する。

『小学校が6年、中学校3年、高等学校3年に大学4年ですか。更に2年に加え3年の大学院があるとは。皆さんはその16年以上の学習を経ておられるのですね。私の国では、貴族は雇った教師に家で教育を受けるか、または大きめの街にある学校に6年程行くかです。


 私は、家に家庭教師を呼んで6年位と、魔法学校に6年行きましたから、長く教育を受けたほうです。平民は精々読み書きと算数を、近所の爺さん婆さんから習う程度です。ですから、満足に読み書きを出来ない者が多いです。それに、この膨大な色とりどりの教科書!これを持って帰りたいですね』


「ええ、これは市販されていますので簡単に買えます。この教科書ですが、これは150年以上の積み重ねです。この中で、中学校までの内容をちゃんと理解して覚えておけば、普通の社会人としての生活を送れると言われています。高校の内容はちゃんと理解して、覚えている人は少数派と言われていますね」


 佐川助教授が苦笑して言って、時計を見てレイナを促す。

「さて、先ほどから1時間は過ぎています。では、レイナさんに、先ほどの新聞記事を復唱してもらいましょうか」


「はい………。ああ、ちゃんと覚えています。文字も鮮明に浮かびます。では始めます。

 ………………………………………………………………………………………………………………

 と言われている」

 10分ほど目を閉じての復唱を終えて、目を開きレイナが出来を問う。

「どうでしょうか?佐川先生」


「完璧ですね。2、3発音があいまいなところがありましたが、一言一句間違えていません」

 その言葉に、見ていた皆から拍手が起こり、同じく拍手していた武藤教授が言う。


「素晴らしい。これで、最初に言葉を覚えてもらって、後は自主学習で随分進度を高めることができるだろう。我々は学習した内容についての質問を受け、また補足をすれば知識は完全なものになる。

 最初は、1年や2年では大したことは教えられないと思っていたけれど、これだったら随分色んなことを学べるな」


 それから、一拍置いて頼みを言う。

「それから、君のその能力を是非とも、我々も学びたい。実のところ、我々の日本語は少し特殊でね。他の言語を学ぶには少々不利なんだ。それで、他の言語『英語』などを習うのみのために、一つの学科がある位だ。だから、他の言語を短時間で学ぶことは素晴らしく意義がある。

 具体的に、あなたからどうやって学ぶかはこれから考えるが、どうか協力して欲しい」


『勿論です。出来ることは協力します。香川先生もいろんな計画をしているようですから。でも私は期待しています。というのは、この国の素晴らしい技術で魔法を解き明かしてくれると、私ももっとやれることが増えるのではないかと。だから、そういう協力は大歓迎です』


 教育学部の教員と院生の指導によって、レイナはその週の後半には、すでに念話を使わずに会話を成立させるようになった。更に、殆ど不自由なく文章を読めるようにもなった。しかし、元ネタが文章であるために、どうしても文語調の会話になるので、その点は気が付いたものが指摘して直させている。


 そして、その次の週の終わりには小学校の過程はすでに終了して、中学校の過程に入っている。また、プライベートの時間に無理をしないように、睡眠時間は必ず8時間取るように、峰子を通じて厳しく指導されている。加えて、テレビやゲームに余り時間を費やさないようにもだ。


 レイナにとっては、ゲームは流石にないが、ドラマやマンガにはまっている面はある。しかし、6歳の頃からストイックに魔法を練習してきた彼女は、その点では我慢強い。しかし、イスカル王国には動画はないし、ましてや映像のドラマやマンガはない。つまり日本では面白いもののレベルが違う。


 だから、時間だからと観る番組を制限するのは、レイナにとって極めて辛いことではあった。とは言え、何とか誘惑を振りきり、決めた学習にうち込む彼女であった。そして、彼女の現在の最大の楽しみは食事と風呂であった。


 そもそも、イスカル王国では美味しいと思う食事のメニューが滅多にない。だから、食事とは楽しみではなく義務であり、命を繋ぐものである。その点で、日本に来て旨くないと思うものはあることはあるが、大部分が『本当に』美味しい。だから、とりわけ夕食は最大の楽しみである。


 また、イスカル王国でも風呂はある。レイナ達貴族で4~5日に1回であり、温かったり熱ったりで余り快適なものではないし、準備する使用人も大変だ。しかし、日本での風呂は勝手に沸くし、温度調節も楽々だし温水シャワーもある。風呂の快適さを知って嵌まっているレイナである。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  魔法は記憶力を高めることも出来たのですね。【1-5 レイナ嬢、時の人になる】の中において、レイナ嬢は元居た異世界へ帰る方法を見つける期間について、 》遅くとも3年、いや5年以内には見つけ…
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