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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第4章 地球と異世界カガルーズの交流とその余波
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4-19 地球・カガルーズ両世界の交流10 ―建設工事への魔法士の採用

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 こうして、イスカルイ王国の魔術師による資源探査が日本全土に渡って行われている。その後、探査チームは串木野金山に移動して探査を行い、資源量35トンのまずまずの鉱床を発見した。次は同じ九州の大分の鯛生金山である。


 一方で国交省も魔法士を呼んで魔法による施工に着手した。国交省はイスカルイ王国のインフラ整備に当たって、魔法を使うという条件の下での道路や、鉄道、港湾などの技術基準を作るのに積極的に協力している。その中で、派遣された技術者は魔法を使った施工の数々を見て日本への導入を考えた。


 土魔法を使った土木工事は基本的に材料が土なので、コストは実質的に魔法士の人件費のみになる。現状では、イスカルイ王国と日本では人件費は王国が安い。とは言え、土魔法士は王国で引っ張りだこのため急速に人件費が上昇している。


 これは、王国では国や領が実施する公共事業のインフラ整備が端緒について、かつ急速に豊かになってきた庶民が自分の家の建て替えを多数行い始めているとによる。この建設工事において、本体部分のコストは材料費が殆ど要しないために王国が日本の数分の1になる、


 具体的に言うと、建築の本体部分においては100㎡程度の平屋の建屋であれば2人程度の魔法士のみで1日で建てしまう。とは言え、窓やドアなどの建具や、天井や内装などは別途必要である。これらの施工で、国交省が注目しているのは道路の舗装である。


 日本では、舗装の大部分がアスファルト製であるが、大体10年から20年経過すると割れや沈下、段差などが生じて修繕として打ち替えを行う。日本における舗装道路の総延長は、120万kmと長大であるため、舗装修繕のコストは莫大である。


 アスファルト舗装というのは、表面に瀝青材で固めたアスファルト舗装を4cm~10㎝程度敷き、その下に15~30㎝の砂利層による路盤を敷く。さらにその下は地面のままだが、路床と呼びしっかり締め固めるが、軟弱であるとセメントを混ぜるなどして強化する。だから普通の舗装厚は20㎝~40㎝程度となっている。


 この修繕は、出来れば表面の5cm余りのアスファルト舗装面のみを削って平らにして、舗装のみ施工するのが理想である。しかし、通常はそれでは強度が足りずに、ある程度程度その下の砂利層も削って敷き直す必要があるのでコストが高くなる。


 一方で、国交省も協力して作った魔法施工の技術標準書によると、魔法で舗装する場合には、以上の順で施工する。ちなみに、土魔法で構築する擁壁など構造物は、曲げにも強いので原則として鉄筋は不要である。この場合の魔法士は人工魔石をによって魔力をブーストする。


 1)まず、側溝を含めた道路部分を、技師が指導して1mほどの余裕を残してマーキングする。

 2)技師が指導して、掘削高・盛土高を示した木製の表示木(遣り方)を道路の両側に立てる。

 3)その範囲の樹木や草などについては風魔法士が伐開するが、その状態ではまだ根が残っている。

 4)土魔法士が土を動かして、根と土を分離して道路用地外に根を移動させる。

 5)遣り方の高さに合わせて、土魔法士が地面の切土・盛土を行う。5m程度以下の高さの切土・盛土の

  端は土魔法で斜面を作る。この斜面の構造は高さ毎に技術基準書に定めている。

  また切土・盛土に際しては土魔法士が締め固める。この強度は路床を含めて路盤に必要な値である。

 6)切土・盛土に際しては、土魔法士が舗装の両側に設計通りの断面の側溝を構築する。

 7)土魔法士が仕上がった路盤の上に土を20㎝~30㎝被せて、それを固化して舗装面とする。

 8)土魔法師が石灰乳を使ってセンターや路肩のラインを引いて仕上げである。


 このように出来た道路の舗装は、厚みは10~15㎝であり、圧縮強度は鉄筋コンクリート以上で曲げ強度も高く柔軟性がある。また舗装は5m毎に目地を入れてひび割れを防ぐ。国交省の専門家の見立てでは、イスカルイ王国の交通量であれば、30年以上にわたり修繕は不要である。


 なお、イスカルイ王国の主要道の大部分を占める2車線の場合に、道路の遣り方まで終わった後の施工速度は、2人の魔導士が従事して1日20m余りである。以上がイスカルイ王国の新造の道路の建設手順であり、日本での施工に比べて速く大幅にコストが安い。


 日本の国交省としては、基本的に日本で出来ていて、今後も続けて支障のない工種に魔法を使うつもりはない。これは、建設業者の雇用を守り、その存続を守るためである。地域における建設業者は、小回りの利く種々の建設を行うほかに、災害時の対応において非常に重要であることは良く知られている。


 だから、国交省としては建築の躯体の建設や、様々な構造物や土の施工に魔法士を使おうとは思っていない。彼等の狙いは、道路の舗装と地下埋設への利用である。大部分がアスファル舗装である我が国の舗装修繕において、近い将来に問題になるのはアスファルトの材料である瀝青材である。


 瀝青材は、大部分が石油を精製した残りかすから作られている。ところが、Mジェネレーター等やMバッテリーなどの導入によって石油精製量がどんどん減っているため、すでにその需要に追い付いていない。このため、瀝青材を使わない舗装を考える必要がある訳だ。


 一方で、地下埋設工事であるが、日本では多くのインフラが地下に埋まっている。上水道、下水道、雨水排水路、ガス、電力などで一杯であり新たな埋設は困難な道路が多い。これらの内で、すでにガスは家庭電化の法制化で要らない子になりつつあるが、家庭用の電力線は今後も使う予定である。


 一方で、世界的に言えば電力線の地中化は日本が例外的に遅れている。このため、あらゆる道路に電柱と張り巡らされた電線がある。しかもその電線に光ケーブルが絡みついて見苦しい上に、地震時の停電の原因になる。そこに、政府がオール電化の法制化をしようというのだから電線の地中化は必須である。


 そこで、魔法を使って電線管を地中に構築しようという訳だ。電線の地中化は、日本では殆ど実施されていないので、雇用には関係しないし、むしろ新たな雇用を生むことになる。実のところ、技術的に電線の地中化は不可能ではないが、様々な地中埋設物を避けて埋設するので難しくコストも膨大である。


 結局今まで地中化が進んでいなかったのは、必要となる膨大なコストに電力会社と国が二の足を踏んできたというのが実情である。そこおいて、イスカルイ王国で使われ始めた魔法による地中での管渠の形成工事がクローズアップされた。


 王国では、都市部において上下水道管と電力や通信管の道路への埋設が盛んに行われているが、その際に魔法によって地中に管を形成している。これは、ミーダイ師などが日本でやったように、土魔法によって地中に穴を設けるために、そこにあった土を周辺に寄せて、穴の周の周りの強度を高めて管とする、


 そのため、地中に意識を浸透させて障害物を避けながら管を形成していくが、10m毎程度に形成して順次接続していっている。基本は電線と光ケーブルを兼ねた管として、100m毎にマンホールを作成して敷設・点検が出来るようにしている。深さ5m位までは、訓練を受けた魔法士によって施工可能である。


 舗装の技術基準と、それを使った施工とその結果の評価は国交省も積極的に加わった。そこにおいて、日本における舗装の修繕への魔法の応用が提議されて魔道具化が試みられた。全体としての道路の建設については、現地で調整する因子が多すぎて全体を魔道具化が不可能であった。


 しかし、舗装の修繕、それもアルファルト舗装の代替は可能と判断された。まずイスカルイ王国で、日本の壊れたアスファルト道路が再現されて土魔法士による修繕を試みた。それは、アスファルト道路の厚みが5cm、10㎝、15㎝の場合について土を10㎝被せて魔法士が舗装として固化したのだ。


 その手法は、下層の砂利層10~5cmを含めて壊れた舗装を固化するので、アスファルト混じりで固化されることになる。色は茶色になり、強度としては無筋コンクリート程度であるが、弾性があって十分な強度があることが判った。舗装に当たる固化部分の厚みはそれぞれ15㎝、17㎝、20㎝であった。この試験施工の結果、これは十分使える方法であることが判った。


 また、地中埋設の電線管については、地中の探査や土中での管の形成を魔方陣にすることはできなかった。だから、イスカルイ王国とは土魔法師を派遣してその施工に従事してもらうことで話がついた。そこで、国交省は舗装の魔道具化と電線管の地中埋設のために、土魔法師を12人、魔方陣に詳しい宮廷魔術師2人の派遣を王国に認めさせた。


 内訳は、土魔法士の10人は電線管の地下形成に従事し、2人が舗装の魔道具化のための試験施工を行い、その2人は後に電線管の地下形成に加わる。また宮廷魔術師の2人は舗装の魔方陣を作成する。その魔方陣をN大に送ってプログラミング言語に翻訳して魔道具にすることになる。


 ちなみに、王国ですでに始まっているテレビやタブレットによるテレビ番組の放映によって、日本についてはよく知られており、人々のあこがれの的になっている。だから、日本行きの志願者の募集には苦労はなかった。宮廷魔術師は1ヶ月で帰国するが、土魔法師は2年程度日本に滞在する予定である。


 ドン・シャー・ムンは22歳の土魔法師である。残念ながら王立魔法学園には入学できなかったが、王都の魔法学園を出て土魔法士になった。魔法士は土系の数が一番多いが、戦いに向かないというので評価が低い。だが、魔力の限界で実施に時間はかかるものの、ムンはこんな便利な魔法がないと思っている。


 しかし、令嬢レイナが帰ってきてから様相は一変した。特に人工魔石が大量生産されることで、ムンのような平凡な魔法士にも買える値段になった。そのことで、従来だったら10日かかるような仕事が魔力のごり押しにより1日で終わるようになった。


 しかし、親方は1日当たりに同じ賃金を渡そうとしたので皆が集まって抗議した。そこに王国政府から、仕上げた仕事の量に応じて手当てを払うように命令がでた。レイナ嬢がそのようには計らってくれたと言う。とは言え、仕事量に比例とはならなかったが、収入は3倍から5倍になった。


 その頃から、土魔法を使った工事が沢山始まり、土魔法士は引っ張りだこになった。それで、ムンはケチな親方の組を抜けて、レイナ嬢の実家のカルチェル伯爵家の建設会社に入った。そこで、日本から来た技術者と縁が出来て、日本行きの話が出たのだ。


 ムンは魔力が少ないのが弱みであり、結局王立の学園に入れなかったのはそれが原因である。しかし、使える魔法の数と魔力操作は自信があったので、人工魔石のお陰で今では自分は宮廷魔術師にも劣らないと思っている。


 彼は持っているタブレットで、日本のオタク文化に触れて、こういう世界があるとショックを受けて、是非日本に行きたかった、だから、未熟な記憶術を使って必死に日本語を勉強したので、今では日常会話に不自由ないレベルである。この語学も、付き合いのあったササキさんから日本行きの話があった決め手になったと思っている。


 彼はミーダイ師等と同様にマイクロバスに乗って、霞が関の次元ゲートを潜って東京に入り、まず国交省で挨拶と予定に関する協議に出席した。その後は、埼玉県の土木研究所で試験施工に従事したが、週休2日の休みには、一人出かけて憧れの『アキハバラ』で終日たむろした。


 先払いで日当を渡されているので、金には余裕があったのだ。魔道具化は1ヶ月で終わって、宮廷魔術師の2人は帰った。だが、ムンは当初の志願の通り、その後2年を電線管の地中形成に従事した。その間、日本中を回ってあらゆるところを見て回ったことになる。


 彼は一旦帰国したが、その後、日本での伝手を辿って再度日本に入国して、あるゼネコンの大手下請け会社に就職した。彼等魔法士の活躍が知られて、建設会社では土魔法師は引く手数多なのだ。彼はアキハバラで知り合ったオタク仲間のケイコと将来を約束していたのだ。


作者のモチベーションアップのため、ブックマーク・評価をお願いします。

PVと総合点も低迷していましたが、昨晩から急に増えて嬉しく思っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  地球(日本のオタク文化)の染まるイスカルイ王国人。なんかこう、ほっこりする。 [気になる点]  道路施工の手順が詳しすぎですね。普通ならさらりと流してしまうところをこれだけ詳しく書かれて…
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