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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第4章 地球と異世界カガルーズの交流とその余波
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4-17 地球・カガルーズ両世界の交流8 ―日本政府の閣議

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 三宅は、その日に発見した鉱床の大体のことが判った段階で、喜びを押さえながら海津局長に電話した。海津局長はすぐに電話に出た。

「ああ、三宅君。山ヶ野と大口で1.3トンの金を抽出したということだね。それから、串木野に行く途中の菱刈の近くに留まっているということだが、何かあったかな?」


「はい、ありました。大発見です。菱刈から北へ12㎞の青木という峠で、幅1.0㎞長さ1.2㎞の金銀の鉱床を見つけました。今は少し荒っぽい計算ですが、深さ120mのマップができた範囲で金が340トン、銀が2,200トンあります」


「なに!金が340トンだと!?それに銀が2,200トンとな!」

「ええ、そして120m以深の層も期待できますよ。それに対象の土地は国有地ですよ。鉱山にするのに問題になりそうことはないようです」


「おおそうか、国有の鉱山、本当にやるかな、大臣に相談してみよう。いや本当に君の言う通りだった。君の意見を聞いて良かったよ。ところで、120m以深の層は探れるのかな?」


「ええ、3点のみですが、土魔法で100mまでは掘って探査すると言っています。3点あれば、大体の推定できるでしょう。もっとも鉱床がそれより深かったらそこ迄ですけど、確実に深さ方向の資源量は増えます。局長、これは、魔法による削孔という画期的かつ初のことですから、出来ればビデオなど記録をキチンと撮っておきたいのですよ」


「解った、技術屋の君としてはそうだろうな。明日の朝現場に行かせる。君に連絡を取らせるよ。それと、今言ったことと、今日までの成果を簡単にまとめて送ってくれ。明日閣議がある」

「閣議、あ、はい。少し遅くなるかもしれませんが、送っておきます」


 翌日閣議において、経産大臣の亀井鎮郎は、用意したペーパーを閣議担当の秘書に渡した。それは、昨日夕刻に海津資源エネルギー局長から話があって、その報告をまとめた3枚のものである。亀井自身は、イスカルイ王国からの魔術師を迎えた説明会にも出席した。だが、彼が出席したのは、どちらかと言うとレイナ以外の魔術師を見てみたかったという側面が強かった。


 資源探査は海津局長から話があって認めたが、『成果があったらいいな』という程度のものであったが、むしろイスカルイ王国との初の共同調査という点に魅かれたものだ。経産省としては魔道具のお陰で『エネルギーの枯渇』という難題が解決する術ができ、それを実現するのに必死の状態である。


 もっとも、それを全てアレンジしてくれたのは魔法を持ち込んだレイナ嬢であり、体系付けをして実用できるようにしたN大学である。そのレイナ嬢は1年前に祖国に帰ってしまったが、『資源探査のためにイスカルイ王国の3人の女性魔術師を呼ぶ』という話は魅力的で、話があった時に直ぐに認めた。


 無論、彼女等を呼ぶこと、資源を発見した場合の契約については閣議を通しており、その際の反応は首相を始め非常に好意的であった。だから、この日の発表も実際にすでに大きな成果が出ている内容なので、亀井にとっても喜ばしいものであった。


 閣議の最後に、亀井が緊急で提出した議題の順番になり、加地官房長官が亀井に発表を促す。

「さて、イスカルイ王国から土系の女性魔術師を呼んで、国内で資源探査をする件についてはすでに皆さんの合意を得たものです。彼女らが着いたのは1週間前ですが、すでに大きな成果が得られてたということですので、亀井経産大臣から発表して貰います。では亀井大臣」


「はい、皆さんの了解を得て、5月12日にイスカルイ王国から宮廷魔術師の3人をお呼びしました。彼女等とは、N大学の地質鉱物学科の坂田助教授率いる3人の大学院生が、一緒に資源探査に従事することになっています。

 最初に探査に行ったのは鹿児島の菱刈鉱山ですが、ここは皆さんもご存じの操業している日本唯一の金山です。そして、探査の最初の日は見込みの少ない場所の探査をして、それでも……(中略)


 結局、菱刈では探査できる深さまでの範囲で220トンの金があり、今後当分は採掘が続けられることになりました。そして、何よりなのは鉱脈の3次元マップが出来ており、資源量もはっきりしており、それを計画的に掘れば良いという点です。

 さらに、近隣の閉山になった金鉱山から小規模な鉱脈を発見して、1.3トンの金を抽出しています。そこから次の目的地に移動する途中で大発見をしたのです。まだ、1日半程度の調査結果ですが、判っているだけで1.5㎞×1㎞程度の範囲に340トンの金と2,200トンの銀が埋まっています」


「「「「おお」」」」大臣連中も驚いて叫んだ。

「それは凄いな。菱刈以上だろう」

 麻山副首相の言葉に、仁科財務大臣が反論する。彼は流石に数字には強い。


「いや、菱刈はすでに260トン掘っており、さらに220トンの埋蔵が確認されているから、それ以上とは言えないですよ。なにしろ国内で金が100トン以上出ているのは菱刈だけです。とは言え凄い!」

 亀井はそれに付け足して言う。


「ええ、甘利さんの言われる通りですが、今言った数字は地上から120mの範囲のみです。それ以下の鉱脈は探れていませんので、今日は魔法で深さ100mの穴を掘って探るようです。だから、まだ相当に増える可能性もあります」


「ええ!魔法で100mの穴を掘って!?危なくないのですか?」

 工事関係を統括する甘利国交大臣が疑問を呈するのに、亀井が応じる。


「それが、土魔法師は穴を掘るのはお手のものらしいです。それに、堀った壁はがっちり固められているそうです。そういう意味では国交省さんでも、イスカルイ王国から土系の魔術師を招へいするそうじゃないですか?彼等は魔法で土をコンクリート以上の強度に出来るのでしょう?」


「ええ、あちらでの話もついたので間もなく閣議にかけようと思っています。まあ主には地中埋設に関して力を借りようと思ってですね。まあ、それは話が外れるのでここまでですね。確かに土魔法師が掘った穴なら、崩れることはないでしょうな。しかしどうやって100mを降りるのですか?」


「はあ、土魔法を使えるものは、自分で掘った穴の中なら自在に動けるらしいです。なにしろ、100m以上の所から土や岩の中の金属を引き寄せられるのですから、不思議はないでしょう。穴は狭いので、魔術師1人と院生1人で入るそうです。今頃は多分もう潜っていると思います」


 その言葉に西村厚労大臣が慨嘆して言う。

「いやあ、魔法使いは便利だな。その探査とか、穴掘りはキュアラーのように魔道具化できないでしょうかね?」


 それに対して春日防衛大臣が言う。

「ああ、僕はレイナ嬢に魔法の魔道具化のことを聞いたことがあります。探査の魔道具なんかは防衛省としては欲しいのですよ。ただ、出来るのは出来るらしいのだけど、探査については魔法を使える人が一緒にいていわゆる翻訳しないとダメなんだって言っていました。

 さっき、亀井さんが言っていた、魔術師が頭に描いたマップを隣の院生に念話というか思念で伝えるというのは、あくまで優れた魔術師が近くにいるからですね。だけど、やりようだと思うのですよ。魔法を使える優秀な魔術師と一緒に研究すれば、色んなことができるでしょうよ」


 本題に引き戻そうと亀井が更に言う。

「ええと、今回の探査とその結果の使い方ですが、私共で考えているのは、この結果は雇用に効くと思うのですよ。つまり、この1週間の結果は望外に大きなものですが、平均的にはそれほど規模の大きな鉱床はないと思っています。なにしろ、基本的に廃坑になった周辺の残りを探すわけですから。

 しかし、今やっている探査の結果というのは、3次元の鉱床のマップと平均の含有率が正確に出ます。ですから、その採掘や精錬のコストがかなり正確に出せます。


 つまり、一過性ではありますが、日本の至るところで数多くの鉱山という地場産業として成り立つわけです。先般から続いている魔道具による産業改革が起きています。これによる労働市場への影響は、この閣議でも度々話題になっているように誠に大きいものです。しかし、将来のことを考えると止める訳にはいかない。だから、中小資源の採取という手法はそれなりに有効だと思うのですよ」


 亀井のその話に岸辺首相が大きく頷いて口を開く。

「そう、確かにそういう側面がありますね。日本では碌な資源も残っていないだろうにと、私自身は今回の魔術師の招へいは正直に言って効果に疑問がありました。しかし、わずか1週間で金だけで560トンですか、6兆円に近い資源が見つかっています。

 これによっては当然多くの雇用が生まれます。これだけでも、経産省の試みは成功と言ってよいと思います。その上に、先ほど言われた日本全国に渡っての鉱業の産業おこしですか。いいと思いますね」


 首相の評価の話を受けて亀井が新たな提案をする。

「総理、ご評価ありがとうございます。それで、今回見つかった新たな金山ですが、金の高止まりの現状から、極めて大きな利益が見込まれます。これを、民間に任せるのはいささか問題があると思うのです。幸い当該地は国有地です。国の財政の改善のために国有化するというのはいかがですか?」


「国有化ですか。独立法人○○金山採掘機構設立ですね。ふーむ、仁科財務大臣いかがでしょう?」

「いいと思います。今の金の相場ですと、半分以上は国庫に入るでしょう。確かに民間にやらすのは問題があると思いますよ。もうけ過ぎです」


「ふーむ、宜しいでしょう。経産省と財務省が揉んで形にしてください。それに、その今調査中という金山、いや金銀山か。調査の進展を私にも教えてください」

 首相が承諾しての話を亀井は受けて、仁科に協力を依頼する。

「はい。解りました。仁科財務大臣、相談させて頂きますのでよろしく」

「もちろん、こちらこそどうぞ」


 そこに守田文科大臣が手を挙げ、加地が話すことを認める。

「あの、官房大臣。その魔法のことで提案があります」

「提案ですか、どうぞ」


「はい。今の話題になりましたが、魔道具が現在我が国の形を大きく変えようとしています。現在は石油資源ひっ迫ということで、エネルギー関連に的を絞っていますが、今後は他の使い方も考えるべきと思います。とは言っても、まだ我が国のノウハウの蓄積は貧しいものです。

 その意味で、イスカルイ王国に拠点をもつ、魔道具研究所を設立するべきだと思いまして、現在省内で揉んでいます。次回の閣議でそのたたき台をお持ちしたいと思いますが、趣旨に賛成頂けないかということです」


 その話に春日防衛大臣が手を挙げ、加地が話すことを認める。

「その件ではちょっとよろしいですか?」

「はい、どうぞ」

「現在、イスカルイ王国には宿舎基地という変な名前で呼ばれていますが、N大学と防衛大学の研究者が詰めて、魔法の魔道具化の研究を行っています。今の所はあまりはかばかしい結果は出ておりませんが、そこに文部科学省の組織の研究所を作るというのは、どうでしょうか?」


「い、いやだから、そのように学会を無視して勝手に研究するのは……」

 言い返そうとする守田に麻山副首相が遮って言う。


「ああ、守田大臣。今日本で進んでいる魔道具による変革は、レイナ嬢の能力と知識を旨く使って魔道具化して実用化したN大学の功績を抜きに語れない。それを、T大中心の学閥のコントロール下に置こうという動きは承知している。守田さんもT大だよね?」

「え、ええ、ですが、それとこれは別で、日本の科学技術を率いるわれわれが……」

「へえ!文科省が日本の科学技術を率いているの?魔道具の出始めは邪魔をしていたようだけど」


 口げんかになった2人の話を首相が遮る。

「ああ、加地官房長官、守田大臣の発言の件については、内閣官房で調査して報告してください」

「はい、総理承知しました。さてこれで閣議を終えたいと思いますがよろしいですか。はい、では今回の閣議を終了します。ご苦労様でした」


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