表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第4章 地球と異世界カガルーズの交流とその余波
60/86

4-12 地球・カガルーズ両世界の交流3 -日本とイスカルイ王国の交流

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 地球とミズルー大陸の交流は日本とイスカルイ王国との交流から始まった。これは、レイナが母国へ帰還することで、次元ゲートが機能することが証明された。さらに、レイナはイスカルイ王国の上層部を説得して、日本との交流を認めさせたことによる。


 また、日本側もカガルーズという一つの惑星世界が、次元ゲートを通じて出入りできることに大いに期待を抱いた。しかもその世界にはレイナという存在が立証したように、人々が魔法を使う世界である。また、地球にはすでにフロンティアはなく、他の惑星世界は近い将来において到達は不可能とされてきた。


 それが、次元ゲートいう魔法を使った反則技で繋がるのだ。最初に動いたのは学会である。レイナの属していたN大学が全学を挙げて、ミズルー大陸及びイスカルイ王国の自然と社会の調査にかかった。ただ、前提条件として疫学的な調査を行って、両者の交流が伝染病の原因にならないことは確認している。


 N大学の調査は、イスカルイ王国の王都イスルー隣接した宿泊所が基地になり、そこから大陸中に調査の手を伸ばしている。この場合の足は、政府の協力もあって、地上ではランドクルーザーであり、空中からはヘリコプターである。調査に当たって力を発揮したのは、日米英共同で打ち上げた人工衛星である。


 それは、ミズルー大陸上の静止衛星と、地上の写真を撮るための低軌道の衛星である。このことで、ミズルー大陸においては、衛星写真から正確な地図が作られ、大陸の中での通信が可能になった。衛星の打ち上げは、イスカルイ王国とその近隣国家への交流を決めた日米英の負担で行われた。


 日本は、カガルーズ世界との交流を独占することで、必ず地球世界での摩擦が起きると判断して、米英の2国を巻き込んだ。米英とは、核無効化と空間ゲート、そしてMストレージの技術共有とそれを使った共同での実用からの縁である。


 日本もそうであるが、アメリカとイギリスの判断は、技術的には未開な国との交流は、少なくとも資源面でのメリットがあると見込んでのことである。そして、これらの国々は人口密度において、地球の国の1/10のレベルであるので、農業面の協力も見込める。


 地球側の国々はいずれも民主主義国家であので、軍事的に侵略することは国民が許さないので少なくとも考えていない。しかし、隙を見せれば経済的に支配することは十分に考えられる。この点は、地球の歴史と現在を学んだレイナが、王国政府を通じて各国に注意喚起をしている。


 こうした交流の当初において、イスカルイ王国の隣国リンドル王国が飢饉に陥り、イスカルイ王国へ侵略の構えを見せていた。このため、レイナの斡旋で日本を通して小麦を買って、それをリンドル王国に送り込んで戦争を防いだ。


 この動きの中で注目すべきは、この取引において日本国の運搬面の援助はあったが、リンドル王国が自ら持っていたきんによって自らがその小麦を買ったことである。つまり、援助でなく商取引で済ませた。この流れは、その後の地球側とイスカルイ王国周辺国の交流にも引き継がれた。


 つまり、ミズルー大陸諸国が、地球側からの借款などをなるべく避けるという傾向が続くことになったのだ。そこにおいて力を発揮したのは、人工魔石によって嵩上げされた魔法による種々の生産力強化である。具体的には、まず土魔法師による金銀などの鉱脈の発見と抽出がある。


 こうした魔法師は、鉱脈を探査で発見でき、さらに鉱脈から金属をインゴットの形で直接取り出せるのだ。つまり、採鉱、破砕、分別、精錬などの工程をすっ飛ばすことができるわけだ。大陸諸国は、当面はこうして備蓄した金銀やその他の希少物質で十分地球から買うコストを賄えている。


 ちなみに、日本側のイスカルイ王国への調査の過程で、イスカルイ王国から国の近代化に対する計画等の支援の要請があった。農業に関する灌漑設備や圃場整備は王国側で計画を立て、魔法士によって進められていた。それに加えて、交配等によって種として進化している地球の種苗を使っていた。


 その進行中に計画のアドバイスの要請があったので、N大学の農業系の研究者が調査の上で様々な提言を行っている。その一人N大学農学部の早川教授が後に語っている。


「彼等の計画は概ねまともなものでしたよ。まあ、イスカルイ王国の灌漑の場合は殆ど自然流下で、ポンプ設備は必要ありませんでしたからね。水理もちゃんと判っていました。ただ、圃場整備には少し変更を提言しました。それと、施肥とか輪作の考え方とかは系統だってアドバイスをしました。

 しかし、逆に魔法を使った農業という点では随分教えられましたね。普通の農民が農業に相応しい魔法が使えるのですよ。見ていると、魔法で耕すと魔力で土がぼこぼこ動いてふっくらするのです。どうも深さ1m位は耕せるようで、肥料も表面に撒いておけば任意の深さで混ぜられます。


 播種についても、農民がばらばらと蒔くだけで適切に広がり、勝手に埋まるというまさに魔法そのものです。また、刈り取り、脱穀に籾摺りまで、風魔法士と協同らしいですが、魔法で出来ると言います。だから、はっきり言って、日本の農機具を使った農業より効率がいい訳ですよ。

 勿論、ミズルー大陸の穀物や野菜、果樹などの種は品種改良を重ねてきた地球産に比べると劣っています。ですが、今は地球産の種苗を積極的に導入していますから、すでに農産全体で日本の効率を大きく追い抜いていますね。最も一人当たりの収量で言えば、極端に大規模なオーストラリア辺りには勝てないでしょうが」


 このように、イスカルイ王国では農産物に関しては、人々の食生活が大幅に改善されて需要が増えた状態で大幅に余剰が出ている。つまり、地球産の種苗を取り入れ収量を改善した上で、独自の魔法を使った耕作と収穫を行って効率のよい農業生産体制を構築している。


 このように、N大学は多数の研究チームを送り込んで、1年ほどでイスカルイ王国と周辺3カ国を含めた自然、社会を含めた基礎調査を終えている。ただイスカルイ王国の農業については、並行して変革が進んでいたので、途中経過の調査になっている。


 そして、その結果をもとに、政府と他の研究機関も加わって、イスカルイ王国に魔法という独自の要素を生かしながら地球型文明に変革するためのグランドデザインを提示している。これは、米英も協力の対象国であるリンドル・コサンド王国とタイラー皇国には同様な提言をしている。


 これは、地球型の生活の便利さと快適さを導入することを第1義としている。

 衣に関して、調査時点において平均的に古着、ぼろ着が主であった状態を、衣類の大量生産技術を導入して価格を大幅にさげることで抜本的に改善する。食に関しては、基本的に栄養が足りておらず、しばしば飢えが襲う状態を解消する。その後、食事に多様性を持たせ、味も改善して食事を楽しいものにする。


 住に関しては、平均的にバラック建ての家を土魔法で建てたきちんとした家にする。土魔法で建てる家本体は地球で建てる家の1/2から1/3で建つのだ。そして、その中には水道、風呂、水洗トイレ、照明、冷蔵庫、通信機器、洗濯機程度の設備を備えて快適なものとする。


 加えて、住を支える基本的なインフラ・産業体制を整える。つまり、道路、鉄道、電力、上下水道、通信の公共的な基礎インフラを設置する。また、日常の消費を支えるための肥料、繊維産業、食品、陶器など日用品などの地元における生産体制を構築する。さらにまた、出版、放送などのマスコミも創出する。


 制度としては、政治については王政など基本的仕組みを変えることはないが、効率と公正さを追求すれば、立憲君主制に移行することを目指すことになる。だが、貴族の反発を考えて時間をかけて移行することになるだろう。基本的に王や皇主は、説明を聞いた上で立憲君主制への移行を望んでいる。


 また、教育については初等、中等、高等の学校を作って、初等学校を義務化する点では一致している。近代化のために、地球の産業体系を持ち込むには、より高度な教育が必要である点は各国とも了承している。これは、人材の質は国力のバロメーターであるという地球側の説得が功を奏した結果である。


 これらの、ミズルー大陸での調査や制度改善の提案とその取り組みが進む一方で、魔法と魔道具をさらに地球側に取り込む努力が行われた。真っ先に始まったのは、イスカルイ王国での資源探査の応用である。N大学地質鉱物学科の坂田圭吾准教授による、資源探査とイアーナイ金山他の金脈の探査と魔法による抽出の報告は日本で大きなセンセーションを呼んだ。


 それは、イスカルイ王国の王室魔術師によるものであったが、地下100m以上の金鉱脈を探り当て、しかも金のインゴットとして抽出したのだ。立ち会った坂田准教授もそれには息を飲んだ。その後、坂田と彼の研究室の田上瑞希等の院生は、王室魔術師エニーナ・ミーダイ師にその弟子ミリナ、パーリャが王国の他の2つの金山で同じく鉱脈の探査と抽出を行うのに同行した。


 さらに、その後坂田は地球での様々な知見と、ミズルー大陸の上空を巡る低軌道人工衛星『ミズルー』の衛星写真を元に、王国内で資源のありそうな地点の当たりを付けた。そして、選んだ20か所について、坂田はミーダイ師ら3人に院生4人と共に、自衛隊から派遣されているヘリで探査して回っている。


 結果として金銀2ヵ所、銀1ヵ所、銅2ヵ所、タングステン2ヵ所、ニッケル1ヵ所、チタン2ヵ所の大きな規模の鉱脈10か所を発見している。実に1/2の当たりの確率であり、それも含有率と、鉱脈の広がりまで確定しており、魔法以外の方法ではあり得ない探査の結果である。


 これらの鉱脈の金属としての量について、地球の時価で計算されているが50兆円を超えるということなので、王国の今後の財政には大きな福音となる。ところで、地球の資源について、とりわけ先進国においてはすでに探し尽くされて新たな発見はないとされている。


 しかし、地中に隠れている鉱床は、ボーリングで当てない限り正確には解らない訳であり、隠れている鉱床はまだまだあると推定されている。とりわけ、坂田などの専門家はそう思っているが、その調査のためのコストと地権者の許可を得ることを考えると、調査の実行には二の足を踏むことになる。


 しかし、ミーダイ師等の力を借りればまた話が違ってくる。彼等は、その場に行くだけで、100m以深の鉱床を探り当てられるのである。しかも、その資源量まで確定できるのだ。坂田は日本政府を巻き込んで、イスカルイ王国との交渉の末に、ミーダイ師にその弟子の2人を1年間借りだすことに成功した。


 実の所、坂田と協力してきた38歳のミーダイ師にその弟子21歳のミリナに19歳のパーリャは、王国政府の合意が得られて日本に行けることに大喜びであった。なにしろ、若い2人は院生たちから日本のことを聞いて是非行って見たかったのだ。それを横目で見ていた、独身のミーダイ師も同じ思いだった。


 ちなみに、惑星カガルーズの1年は地球の1.26倍である。だから、彼女らの歳は地球年に直すと1.26倍になる。ただ、よく知られている事実としては魔力の高い者は老化が遅い。だから、王宮魔術師に加えられるレベルの彼女等3人は、地球年の年齢相当の見かけより若く見える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >衣に関して、調査時点において平均的に古着、ぼろ着が主であった状態を、衣類の大量生産技術を導入して価格を大幅にさげることで抜本的に改善する。食に関しては、基本的に栄養が足りておらず、しばしば…
[良い点]  経済的に支配しようとした地球側が、ミズルー大陸諸国の魔法の存在でそれが阻止されている点がいい。 [気になる点]  改めて気になったのは、静止衛星を打ち上げるための発射場やロケットはどうし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ