表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第4章 地球と異世界カガルーズの交流とその余波
50/86

4-2 ミズルー大陸での動き2

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 セバス執事長は、レイナ一行を宮殿の中に案内していく。宮殿は古いが、よく手入れされており、歴史を感じさせるものである。一説によると、サイドール王国はカーギル大帝国の皇女の一人が、旧臣に守られて設立したものであるという。イドールの宮殿は、地方にあった主要な宮殿の一つであったらしい。


 その意味で、サイドール王国の王室は誇り高いが、一面変化を嫌う存在であるという。さて、外務卿はどのような相手であろうか。ちなみに、レイナがこの交渉に立ち会った理由は、単純に言えば来たかったからである。


 この時点で、婚約者候補であった王太子は猛反対をしたが、行きたいから行くという言葉に、こういう相手だということを再度確認して諦めた。


 それに、魔術師として最高峰にあり、かつ剣も使え、日本で合気道を習ってきた彼女を害するのは殆ど不可能である。なにしろ、探査ができ、害意を感じる彼女には不意打ちも効かないのだ。そう言うことで、王太子は彼女の出発を見送ることで我慢をした。


 セバスは、ある部屋のドアの前にやってきたが、そこには2人の槍持ちの衛兵がドアの両側に立っている。それにレイナは違和感を持った。宮殿内で外務卿に衛兵がつくなどとは少々考えにくい。サイドール王国の国王は女王であり、まだ年若いという情報はある。


 執事長の顔を見た衛兵は、「セバス幹事長殿、客人をご案内!」と大きな声で言うが、油断なく客人たる3人を見ている。ドアがガチャリと鳴って少し開き、若い女性の顔が覗き、頷いてドアをいっぱいに開ける。

「どうぞ、お入り下さい。女王陛下がおられますので、失礼のないようにお願いします」


 小さな部屋の向かいに木製のテーブルがあり、その中央の立派な椅子に、20歳代見えるブロンドの女性が座っている。顔はふっくらして柔らかい輪郭であるが、知的な印象で目は鋭い。3人はその正面に行き男は胸に手を当てて深々頭を下げ、レイナはカーテシーの最敬礼をして、それぞれが名乗る。


「ふむ、わらわはアリーナ・イスカル・カーギル・サイドール3世である。貴様らの振る舞いは無礼ではあり、罰すべきという道もあったが、わらわの外の世界を知りたい欲が勝った。特に、カルチェル伯爵令嬢は異世界に行って帰って来たという。是非、貴様に会ってみたかった。

 まあ、正使・副使は座るが良い。皆の者も座ったままで良いので自己紹介をせよ」


 年若い女王は言って、共に座っている男2人と立っているドアを開けた少女を加えた2人に目で合図をした。自己紹介によると、若い男が王配のカザイラ、年輩の男が外務卿のキズイ―ク、年輩の女と少女が専用メイドのマリーヌとマインである。


 ここは遠慮しても仕方がないので、その挨拶を待って正使のムルースクとレイナは女王の正面に座った。女王の配偶者である王配は、鍛えられた体で、顔にうっすら傷跡が見えることから実戦経験もありそうだ。また、その視線はまっすぐで裏表はなさそうである。


 一方の外務卿は60歳代の年頃でにこにこはしているが、目は笑っておらず正に古狸といった風貌である。まずは、外務卿が口を開いた。


「ようこそ、我が王国においで頂いた、と言いたいが、聊かというか貴国のやり口は相当に礼を失していると思う。まずは、外務卿の親書を門兵に預け、返事も貰わず転移で消えてしまったこと。まして、その使者どもは正式に我が国に入国しておらんだろう?

 それよりも、問題であるのは、わが国の最も厳重に守られるべき、王宮城壁の中まで断りなしに進入したことだ。この行為は、魔法であの乗り物打ち落とされても仕方がない行為だ」


 それに対してはレイナが応じた。

「いや、お気に触ったのであれば申し訳ないです。なにしろ、私は異世界に1年以上居て、そのせっかちな考えが移ってしまったのです。異世界はこのカガルーズと同様の世界で、すこし小さい位です。一方で、人が80億人を超えています。だから、人がひしめき合ってとにかく忙しいのです。

 だから、いつも早くということを考えています。今回の計画を立てたのは私です。ですが、ご存でしょうか、わが国の王都イスルーから、このイドールまで2,000㎞の距離があります。ご覧ください。これが、この国も入っているミズルー大陸の様子を写し取ったものです」


「な、なんだこれは!これが、ミズルー大陸だと。おお、ここが、我らがサイドール王国とイドール、そして、貴国の王都のイスルー。うーむ、これが長さを示すとすると2000㎞位だな」

 王配のカザイラが目を輝かせて衛星写真を見ている。その写真には暫定的に国境線を入れ、国の名前、首都マークと名前が入っている。


「これは、何だ?どうやって得たのだ?」

 カザイラは、顔をあげてレイナに聞く。


「これは写真と言って、ものをありのままに映すもので、この場合は遥かな高みから写し撮った像です。異世界と交流すればこうした物も手に入ります。まあ、それは置いておいて、私共はイスルーからここまで8時間で来ました。仮に大森林を通れたとして、陸路でしたら80日はかかる距離です」


「8時間!なんと……」

 カザイラは、呆れて言うが、実際のところレイナ達はカーギル帝国と同じ手を使って、途中まで転移で来たので2時間で来ている。


「もし、国境で正式に貴国の国境で許可を貰っていたら、国境から王都を往復しますから20日は要しますよね。さらに城門で2日、王宮の門で1日は要します。今回は強引であるのは承知しておりますが、何人もの人手をかけて、そのような長い時を待っておれません。

 我々はそれに先立って、商人に頼んで貴国への訪問を打診しましたが返事がありませんでした。私共は私たちの貴国への国交の申出は必ずお国に有益であると信じています。だから、聊か強引な手を使っても許さると考えて実行したのです」


 そこで、本題に入らないので少しイライラして聞いていた女王が口を出す。

「よろしい。カルチェル嬢、貴様が言うわが国受ける利益を示してくれ。その強引な手を使っても許されるほどのな」

 その言葉を待っていたレイナはにっこりして応じる。


「はい、『百聞は一見に如かず』と申します。先ほどの、大陸の写真と同じように、異世界には動くものを映しとることができる仕掛けあります。これは異世界の内の日本という国と、他の国を紹介したものです。この部屋のあの壁に映しますのでよろしいですか。この長さは1時間は要しません」


「うむやってくれ」

 女王が応じたのを見て、手早く準備しレイナが映したビデオは、日本のみならず、国連、米英のビデオも繋いで字幕とナレーションを大陸語に直したものだ。これは地球や諸国の明の面のみならず暗の面も加えたもので、地球の現状を概ね的確に捉えたものとレイナは思っている。


 やがて、約1時間のビデオが終わったが、見ていた者は見たものを消化するのに時間を要している。やがて女王が我に返って、レイナに目を向けたのを見てレイナは話し始める。


「今お見せしたのが、私が居た日本を含めて地球の状況です。彼等は、互いに争ってきた歴史と他民族を圧迫した歴史は、我々よりむしろ凶暴で悪辣です。しかし、これは我々のように魔獣という深刻な敵がいなかったせいもあると私は思っています。

 そして、彼等は80年ほど前にその世界の多くの者が参加して、数千万の死者がでるような深刻な戦争をしました。そして今は、その反省にたって、二度と繰り返さないということは社会の合意事項になっています。とは言え、一部の地域ではまだ争っているところもあります。


 そして、その戦争が逆に様々な知見、便利な仕掛けを大きく進歩させて、非常に便利で快適に暮らせる社会を作っています。その世界では、人々の働きによる効率が非常に良いので、15歳以下の子供が働く必要がなく、皆学校に行っています。ですから、全てが字を書けて読めますし、計算も普通にできます。


 私の国イスカルイ王国は、地球の農業や工業の効率の良さ、仕掛けというか生活を便利にする機器、さらに遠くのものと話ができ、情報を送り受け取れる通信については、地球に追い付きたいと思います。

 ところで、彼等は魔法を使えません。魔力を発する器官がないのです。私達は、魔法を使えるという利点を生かして、効率よく彼等に追い付きたいと思っています。

 今日ここに来たのは、その仲間になりませんかというお誘いです」


 女王はレイナの言うことを真剣に聞いていたが、彼女の話が終わると言った。

「うーむ。そうしたことを始めてみれば実際には細部ではいろいろ問題もあろうが、貴様の言うことに嘘はないようだ。我らはカーギル大帝国の伝統を引くとして、永く何もせず腐ってきたこの国は変えなきゃならん。

 というより、貴様らの国がそういう動きを始めた限り、われらがなにもしなかったら、今後遅れた存在になる。わらわは貴殿の言うことを受け入れるしかないようだ。のう外務卿よいか?」


「はは、陛下。今は異世界という大波が押し寄せているのですな。確かに放っておけば、結局は国を開くことになるでしょう。であれば、自ら進んでのほうが何倍もましであることは明らかです。私も頭の固い貴族連中を説いていきましょう」

 このようにして、サイドール王国とは20日ほどの交渉で国交を結ぶに至った。


 しかし、酷寒の広大な面積に、人口100万人に満たないミルチク共和国については、族長の集まりを共和国と称しているだけで、権力の在り処がはっきりしなかった。このため、ある族長の了解のもとで、資源探査に入り、その利益を示すことで2年程の後には全体の族長会議の合意が得られた。



作者のモチベーションアップのため、ブックマーク・評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  オミルク王太子、結婚前なのにすでにレイナ様の尻に敷かれている感がそこはかとなく出ているのに涙を誘われます(嘘)。でもそこが良い! やっぱりこの小説の主人公はレイナ様ですからね。 ※ そろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ