表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第1章 レイナ嬢日本に登場、巻き起こる渦
5/86

1-5 レイナ嬢、時の人になる

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 そのパフォーマンスの後、学食で食事である。我が母校の学食は、俺の学生の頃とは全く異なり、業者が入ってメニューが10数種類と豊富だ。ただ、無論物価も異なるが、高くはなっているものの市価よりは安い。俺はかつ丼を勧めた。丼物は栄養と言い、美味さと言い日本の誇る食い物だと思っているからな。


 欠点は上品に食うのは難しいと思うのだが、レイナは本当に美味そうにしかも上品に箸で食う。少し箸の使い方はぎごちないけどな。横に座っている世話役の皆川嬢はラーメンを食っているが、彼女も旨そうに食っている。その向かいで、食っている俺も普段のものが旨く感じる。


 その日の午後、レイナは大学に借りた部屋で、弁護士事務所の鍋島氏、仁科女史、木島氏と面談した。要は滞在許可を得るためのヒアリングである。鍋島は55歳、目が鋭いがきちんとスーツを着た恰幅の良い弁護士らしい風貌であり、事務所のサブである中年の仁科女史と、部下のヒアリングの様子を見守っている。


 担当である20代の木島弁護士は、若いが流石にプロらしく的確にヒアリングを進めていく。

「つまり、レイナさんは、地球にはないイスカルイ王国のご出身であると。そして、ある実験に失敗して気が付いたら、日本の間島さんのお宅に居たということですね?」


『はい、そういうことです』

「それで、自分の国を良くするために、日本のことを学びたいということですね?」

『ええ、そうです。私の国は魔法がありますが、人々の生活は遥かに日本に劣ります。ですから、この日本の技術と社会の知識を持って帰れば、私の国もずっと発展すると思うのです』


 そこに香川教授が口を挟む。

「魔法というものは、まだこの世界で確認されていなかった。小説ではしこたまあるがな。私らは今回その存在を初めて確認したが、これは世の中を変える可能性がある。

 つまり、レイナ君の協力を得て、そのメカニズムとその背景にある理論を解き明かすことで、人類が次への進歩するきっかけになると私は思っている。だから、日本政府はレイナ嬢に是非とも滞在して下さいとお願いする立場だ」


「ほうほう、それは素晴らしい。香川先生、出入国管理局でそのようにおっしゃっていただけませんか?」

「ああ、いいよ。いまの話は私の本音だ」

「では……、ところで、レイナさん。日本から知識を学んでお帰りになりたいということですが、帰る方法は解っているのですか?」


「今のところは解りません。しかし、試行錯誤した結果、偶然日本に来たのですから、今も研究していますが、遅くとも3年、いや5年以内には見つけます」

 レイナの答えに香川教授が追随する。


「魔法を実際に使えるレイナ嬢という存在がある以上、我々もその背景にある理論を解明できるはずだ。その際には当然、レイナ嬢が帰る方法も見いだせると思っている。なにもレイナ嬢のみが研究する訳ではない。その点は大丈夫だと思う。そして、それが発見されれば、異世界と交流する方法を見いだすことになる」


「ほお!」

 木島にもその価値が判ったのであろう。驚いた顔をしたが話を続ける。

「解りました。ええと、間島会長、レイナさんの後見人になって頂けるのでしょうね?」

 俺の方を向いた木島の問いに、俺はしっかり頷いて答えた。

「勿論、責任を持ちますよ。また、滞在の際の住居はわが家にするよ」


 それを聞いて、木島は上司の方に向き直って聞く。

「鍋島所長、香川先生からお話し頂ければ、後見人もしっかり居られるし問題ないでしょう?」

「うん。まあ、このケースは問題ないだろうな。早急に、出入国管理局に連絡を取って申請を出そう」


「ええ、ただ事案が生じて後、可及的速やかに本人が当局に出頭することが必要です。そして、さっき伺ったのですが、大学内で魔法を披露したとか、ひょっとするとマスコミが報道するかも……」

 木島の懸念に鍋島が、難しい顔をする。


「うーん。それはまずいかも知れんな。不法状態で入国したものが。届け出以前に騒がれるというようなケースを役人は嫌うからね」

 鍋島弁護士が言うのに対して、香川が「ふん」と鼻を鳴らして言う。


「嫌う程度であればいいさ。今回の件は遭難のような形だから恣意的にではない。さっき副学長の西野さんがレイナ嬢の魔法を見ていたし、西野さんは法務事務次官の同級生だ。話をしてもらうよ」

 結局、法務事務次官の声かけもあり、レイナの日本滞在許可は後日問題なく下りた。


 しかし、彼女の魔法披露の様子はSNSなどで広がり、その日の午後には大騒ぎになった。大学での法律事務所のヒアリングの終了後には、その部屋の外には7、8人の人が待っており、その内2人はカメラを担いでいる。一人の若い男性アナウンサーがカメラマンを引き連れてやってくる。


「あ、レイナさん。レイナさんですよね。私NBSの海津と申します。ちょっとお話を聞きたいのですが」

 俺は、続いて、MBCの腕章を巻いた女性アナウンサーも話しかけようとするところに割り込んだ。


「悪いが、彼女は日本語を喋れない。まあ地球の言語は全てだけどな。私は、レイナの後見人の間島と言います。まあ、10分くらいだったら、そうね。そこのベンチの所で話そうか、いいかな?」


 俺は、そう言ってテレビ局と他の記者らしき連中に聞くと、皆頷き芝生脇の広場のベンチのところに行く。香川教授と鍋島弁護士もついて来るから、後者は事務所のいい宣伝になると思ったのだろう。

 ベンチ脇で俺が止まると、レイナも横に立ち、マスコミはその正面に来て2台のカメラを向ける。


 俺がまずマスコミの連中に言う。

「まず、言っておきたいが、レイナは念話でコミュニケーションが取れます。しかし、ここにいる人はその意思が伝わっても、テレビのむこうの人は伝わらない。そうだな、レイナ?」

『ええ、テレビで言っていることは解りませんもの。そうです』


「今のが念話ですが、皆さんは解ったでしょう?」

「「「「はい」」」」皆頷くのに俺が言う。


「ということを頭において、受け取った念話を逐次口頭で言って下さい。よろしいか?」

「はい、では私はNBSのインタビューを担当する海津健司です」

「私はMBCでの同じく西野あいりです」


「では。今から録画させて頂きます。西野さんよろしい?」

「はーい。いいですよ」

 それから、10分ほど、様々な角度からレイナに質問があり、彼女の答えをアナウンサーが逐次「このように言っています」と伝える。


 俺と香川は、アナウンサーが違うことを言わないか監視しており、2回ほど「それは違う」と訂正させた。また、滞在許可の話が出たので。鍋島弁護士事務所が手続きをしている旨を説明した。彼も無事に事務所の宣伝が出来た訳だ。


 さらに、レイナが今日大学に何で来たか、さらに今後大学に通う予定であることを香川が説明した。

「当大学で、レイナ嬢が使う魔法について科学的に徹底的に調べます。その結果、それがどのような原理に基づいて、どのように発現し、どのように作用しているか検証します。そして、それを再現し、利用する方法まで踏み込みたいと思っています」


「ということは、私達でも魔法が使えるようになるのでしょうか?」

 MBCのアナウンサーの西野嬢が聞く。

「ええ、その可能性はあります。或いは補助具が必要になるかもしれませんが」

「それは素晴らしいですね。夢が広がります」


 最後に、魔法を使ってくれとのリクエストがあった。それに対してレイナは、講堂でやった光の球を飛ばし、風魔法による飛行をやって見せた。いつの間にか周りには、十重にもなりそうな人垣が出来ており、パフォーマンスに「「「「おお!」」」」との歓声が上がった。


 その後の様子を見ると、レイナの顔には疲れが出ていたので、香川達に辞去して俺たちはその後まっすぐ家に帰った。

 家に帰って、俺は暫く書斎で事務仕事をしており、レイナは自室でくつろいでいる。夕方になると峰子が書斎に呼びに来る。


「ねえ。エイさん。レイナとあなた達がテレビに出ているわよ!」

「ほお?まあ取材を受けたものな。見てみるか」

 俺は居間に移ってテレビを見る。確かに、インタビューの様子が映っている。最初には講堂での魔法をパフォーマンスが映されたそうだが、映りは悪かったようだ。じっくり見たが、おかしな編集はしていないようだ。


「最初はどういう紹介だった?」

「ええ、魔法少女が現れましたって。N大学講堂で魔法を披露したと言って、光の球を飛ばし、光りながら空を飛んでいる映像が出されたわ。でもスマホで撮ったようで、ブレブレだったけど」


 その時、俺のスマホが鳴った。社長をしている息子の亮一だ。もう体調は戻っている。

「おお、亮一、どうした?」

「どうしたじゃないよ。何だよ、魔法少女って?」


「いや、異世界から来て魔法が使えるレイナだよ。昨日の朝、家に迷い込んでな。家で保護することにした。綺麗だろう?紫の髪に緑の目だぞ。亜美と稔を連れて家に来いよ」

 話に出た亜美は、亮一の長女で稔は長男だ。


「ええ!そうか異世界から来たレイナかあ。そりゃ見に行かなくちゃな。明日は土曜だから行くよ」

 やがて、外も暗くなってレイナを夕食に呼んだ。もう元気そうだ。食卓を見て目を輝かせているから、よっぽど日本の食事が気に入ったらしい。今日のメインメニューはステーキだ。


 午後7時になって、NHKの7時のニュースであるが、テロップの最初に『N大学に魔法少女現る』とあって飲みかけたビールを吹き出しそうになった。


 そこにレイナからの喜びの念話がある。

『この肉、柔らかい!こんな美味しいお肉、食べたことがない!』

『うん、そうだろう。松阪肉だからね』と思いながら俺はニヤリとして尚画面を見る。


 それは、大学の講堂でやったパフォーマンスを綺麗にとっており、レイナの少したどたどしいアナウンスもちゃんと入っている。

 ビデオのみで5分ほど時間を取っているので、異例の扱いである。その後、アナウンサーが解説しているが特殊撮影でないことを強調している。


「このビデオですが、今日の午前にN大学の講堂で撮られたものです。このパフォーマンスには大学の先生方も大勢いらしており、これが仕掛けや特殊撮影でないことを保証されています。これを実施した方は異世界から来たという『レイナ』という15歳の方です。

 もっとも15歳というのが、地球でいう15歳かどうかは解らないそうですが。レイナさんは当分N大学に通って、日本のこと学びながら魔法を披露してその研究をしてもらうということです」


 その晩に、東京にいる娘のみどりから電話があった。彼女は稔と同じことを聞いて、その結果週末に帰るとのことだ。みどりは月刊誌の記者をしているので、そこで取り上げたいということである。


作者のモチベーション維持のためブックマーク、評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  なんとなくマスコミの無遠慮さがにじみ出るというか、遠慮のなさというのがちゃんと表現されているのがよろしいですね。しかしやっぱりというか、とうとうマスコミに嗅ぎつけられたというか、間島社長…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ