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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第3章 レイナ嬢の帰国が巻き起こす騒動
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3-15 イスカルイ王国に迫るカーギル帝国の脅威1

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 変革が進み、慌ただしいイスカルイ王国であったが、突然コサンド王国から急報があった。今のところイスカルイ王国を中心に周辺3か国は準同盟関係にある。一方で、イスカルイ王国の3万㎞を超える上空には日米英の共同出資の静止衛星が浮かんでいる。


 だから、コサンド王国の王都カトマンの宮殿、タイラー皇国の皇都タイラーの宮殿、リンドル王国の王都ルーラルの宮殿はインターネットで繋がっている。コサンド王国の連絡の相手は、外務卿のイーリダン伯爵なので、イスカルイ王国側は外務卿のミーマス・カスイ・ジライーズ侯爵が応じた。


 話は、コサンド王国の北と西に国境を接するカーギル帝国が服従を迫って来たということだ。それも、イスカルイ王国に攻め込むので先導しろと要求している。どうも、帝国はイスカルイ王国が急速に豊かになりつつあるという情報により、征服しようということで今回の訪問になったらしい。


 そして、帝国は見たことの巨大な船でやってきたという。そして、彼等はそれに兵を乗せて攻め込むと威嚇しているらしい。しかも、船から岸に向けて爆発する丸い球を撃ったという。まさに、砲艦外交そのものであるが、よくコサンド王国が直ちに屈服しなかったものだ。


 帝国に接しているコサンド及びリンドル王国は、帝国との国境を大森林に覆われているので、帝国がこれらの国に攻め込むのは困難である。しかし、海から来るなら話は別である。コサンド王国の王都とタイラー皇国の皇都が海に接しているので、海から大軍で攻められると弱い。


 ただ、海には大海獣が住むため、余程の大艦でないと沈められてしまうので、そのような巨艦を作ったのであろう。外務卿は日本の紹介ビデオを見ているので、異世界では信じられないような鉄の巨艦が航行しているのを知っている。また、異世界の弾を打ち出して爆発させる大砲というものも知っている。


 一方で、そのような巨艦が多数出来るとは思えないし、大砲も異世界のものに比べ遅れたものであろう。だから、海から運べる兵数は多くはないので、イスカルイの隣国のコサンド王国を屈服させてその陸兵を使おうという目論見であろう。


 具体的には、イスカルイ王国をある程度の兵数で港から攻め込み、さらに隣国からコサンド王国に攻めさせるということで、屈服させられるという計画だろう。さらに、イスカルイ王国を攻め取れば、その奥のリンドル王国、さらに東に接するタイラー皇国を攻め取るのは簡単であると考えたのだろう。

そこで、大陸をカーギル帝国がほぼ統一できるわけである。


 カーギル帝国は大陸の北と西を領有して、大陸の半分を占める大国であり、人口も4千万を超えるという。かつては、大陸全体を『カーギル大帝国』が治めており、言語が大陸で共通なのはその名残である。しかし、この帝国は腐敗して、佞臣の専横するところになり、多数の国に分かれた。


 現在のカーギル帝国の皇帝は『カーギル大帝国』の末裔であると称しており、その名を継いでいる。実際には、西部に興った王国が200年ほどをかけて、今の大陸の半分を領土としたのであり、それが征服王朝カーギル帝国という訳である。


 彼等は特別に残忍でも、過酷でもないが、やはり、征服された土地の住民は2等臣民となる。さらに、漸く食っていけるだけの過酷な税制を布いているらしい。だから、彼等に屈服してその領土になるなんて話はとても受け入れられない。


 これが、2年前であったら、極めて深刻な話であり、王国は大騒ぎになっていただろうと、ジライーズ侯爵は思う。しかし、今は全く条件が異なるのだ。2年前であれば、恐らく4ヵ国が集まっても、魔法士も多数いるという帝国の20万人と号する軍が事実攻めてくるなら敵わなかった。


 相当な抵抗はできても、最終的には魔法士を含めた数と装備の質で押し切られただろう。そして、その時点では国土はぼろぼろの上にその後は搾取されるのだ。しかし、イスカルイ王国と周辺3国の首脳は、異世界地球から来た日米英3国の国の紹介と軍の映像を見ている。


 4か国は唯一地球人に勝る魔法を使っても、地球の者達がその気になれば、4か国はすぐにでも占領され、属国になるだろう。その点は、カーギル帝国とて同じことである。人口4千万のこの世界では巨大な帝国とは言え、日米英3国に敵う訳はない。


 彼等日米英、それぞれ人口は、1億2千万人、3億3千万人、6千万人であり、それだけの民を養って自分達より遥かに豊かな生活ができる国力がある。加えて、強大で底の見えない進んだ軍と戦力を持っているのだ。しかし、防衛を他国に頼るのは危険であり避けるべきである。先ずは国王陛下と宰相に相談すべきである。


 結局、国王は外務卿の話を宰相のムーラン侯爵と共に聞き、二―ガン軍務卿と宮廷魔術師の3人であるイリナ・ルラ・カビラスにエニーナ・ミーダイ及びレイナを呼んで会議を開いた。魔術師を呼んだのは、自主的に帝国に抗するには魔法によるしかないという考えからである。


 このうちカビラスは、元から宮廷魔術師であり、現在魔術師団長である。ミーダイは土魔法士で魔術師の称号は持っていた。それが金・銀の抽出で王国に大きく貢献したことから、新たにレイナと共に宮廷魔術師の称号を得た。


 ちなみに、元宮廷魔術師であったが、レイナを殺そうとして罪人になったミーガル・キズラ・スマークルは、その後の調査で矯正の見込みなしとして、魔力嚢を焼き切られた。多大な魔力と才能のあった魔術師であったが、神経のバランスが壊れた魔術師は能力が高いほど危険なので、その措置が取られるのだ。


 さらに、宮廷の魔術師団は3人の宮廷魔術師の他、正魔術師が25人、魔術師が80人、見習いが120人属している。魔術師団は、各々の人工魔石を活用して魔法のレベルを上げ、かつ使える魔法士を増やすという新たに立てられた国策にそった努力が行っている。


 その前提条件として、魔法士の魔力を嵩上げする魔石の大量生産が必要である。このため、大量生産体制を作り上げるために、魔術師団に人工魔石が割りあてられて、在野の錬金術師に製造方法を教え込んで魔石製造を行っている。結果として、すでに人工魔石は日本から輸入する必要がなくなっている。


 さらに彼等は、レイナが日本の科学的な物理学・化学・生物学・薬学・医学などの基礎的な知識を翻訳した資料を勉強して読み解いている。このため、帰国初期にはレイナは毎日魔術師団にレクチャーに通っていた。この魔法師団は、800万人の国民の内から魔法に関して優秀と認められた者達の集まりである。


 彼等は、レイナが持ち帰った知識を使って、魔石によりブーストされた魔力を使った魔法の限界を突き詰め、新たな魔法を編み出すという研究を続けて毎日のように成果を上げている。その一つの現れとして、過去2人しかいなかった、転移の魔法を52人が使えるようになっている。


 また、インフラ建設に土魔法士が極めて有用ということが判り、戦いに余り使えなかったために評価の低かった土魔法士が一気にクローズアップされた。その意味で土魔法士でありながら、正魔術師であったエニーナ・ミーダイ師は優れていた。

 果たして、彼女は宮廷魔術師になると魔術師団の21名の他、在野の有能な土魔法士を多く抱え、有能な一大集団を作っている。


 彼等の近年の一つの成果は、土魔法で地下に管などの渠を作る方法の確立である。現在王国は王都で水道、下水道、電気、通信などの管渠を埋設しようとしている。だが、管渠の埋設という工種は、既存の埋設物を躱さなければならない上に掘削によって周辺に影響を与える。


 日本でも現在電柱から吊るされている電線・信号線を埋設したいのであるが、すでに地下は多くの占有物に占められている地下埋設は不可能に近い。王都の場合は、既存の地下埋設物は排水路程度でたいしたことはないが、それでも多数の地下埋設物を全ての道路に埋めることは容易なことではない。

 

そこに、ミーダイ師率いる土魔法士は、土中の土を地上から、加工して管渠とする手法を魔道具化したのだ。つまり、彼等は土中を探査して、障害物(つまり別のインフラ)がないことを確認して、長さ30m程を一気に地中に管を作り上げるのだ。


 その際には、その区間の設計図を睨みながら、深さとこう配を決めて、魔道具を使って一定の大きさの管や長方形渠を地中に作る作業になる。地中に空間ができるので、余剰の土は地上に浮き上がってくるが、普通の土では管渠の構成部は間隙がなくなり強化されるので、余剰土はでない。こうしたことが起きるのは岩盤の工事の場合のみである。


 話が大幅にそれたが、王宮の小会議室に、国王と現在国王の補佐をしている王太子に外務卿、宰相と軍務卿にレイナを含む3人の宮廷魔術師が出席してカーギル帝国の対策が話し合われた。外務卿がまず、コサンド王国の外務卿から得た話をしている。この話は、国王と宰相はすでに聞いている。


「このようにカーギル帝国の特使は巨大な船でコサンド王国の王都カトマンに現れて、彼等の言う爆裂砲を岸近くにある岩に撃って見せたそうです。それはそれなりの威力であったようですな。またその上で属国になれ、そして我が国へ攻め込む先兵になれと脅した訳です」


「ふむ、随分強引な手でありますな。ではありますが、わが国が狙いなら、直接わが港町のキラーマイルにくれば良いのです。そうでないというのは、要はその大艦の数が充分でないということですな」

 ニーガン軍務卿が言うと、宰相も同意するが侮るべきでないという。


「ああ、そうであろう。巨船を作るのは手間がかかるものだ。しかし、彼等は何と言っても大陸で最大の人口と国力を誇るし、軍の規模も突出して最大である。今までは、大森林に妨げられて侵攻は出来なかったが、まずコサンドを平らげ次に我が国という自信があるのだろう」


 そこに王太子のオミルクが、日本に視察に行った経験を踏まえて言う。彼は、20人を超える随員を率いて次元ゲートを越えて、1ヶ月かけて日本と米英を巡って来たのである。


「確かに帝国は自信があるのでしょう。しかしながら、それはこの世界の常識に基づく自信である。だから、すでに地球世界と接触して交流を始めた我々には通用しない。

 つまり、我々には地球との交流で学んだ知識から生まれた数々のものがある。具体的には、人工魔石を使って機能する魔道具としての結界があり、さらに雷の魔道具があって、数千の兵をそれで武装できる。

 

 結界の魔道具は従来からあるが、極めて貴重かつ高価なもので、しかも値がつけられないほどの高価な最大級の魔石が必要である。

 また、雷のみではない、風の刃、火魔法としての爆裂弾、転移と土魔法による質量弾などの魔法が生まれ魔道具化しつつある。しかも、我が魔法師団には50人以上の転移を使える者がいると聞いている。だから、私はカーギル帝国を何ら恐れる必要はないと信じている」


 王太子の言っていることは間違っていない。レイナも、王太子の視察の日本視察について同行したが、物静かながら積極的に新しいものを学ぼうという姿勢は大いに評価している。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  日本にレイナ嬢が現れ日本(地球)の科学知識を得て、日本もイスカルイ王国(惑星カガルーズ)の魔法の知識を得て、それぞれの世界が異世界の技術を吸収して急速に発展していますね。急速な発展が一方…
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