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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第3章 レイナ嬢の帰国が巻き起こす騒動
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3-14 イスカルイ王国で進む変革2

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 イスカルイ王国と日本国は、経済協力協定をすでに結んでいる。この中で、日本が王国の総合的な経済成長を助けることを約束して、その具体的なスキームができつつある。これは、農業改革に加えて道路、鉄道、港湾、電力、通信などのインフラ整備を進めて、その莫大な投資の中で国民所得を嵩上げして経済成長を遂げようとするものである。


 ミズルー大陸の中には10の国があるが、判っている限りではイスカルイ王国の面積は、むしろ狭い方である。各国の人口は定かではないが、常時国交のある国境を接している3カ国の中では中くらいの人口である。


 また、これら4カ国は大陸の東よりに位置し、東側と北側は大陸の面積の半分を占めるカーギル帝国が占有している。しかし、国境を接している国々についてもその状況がはっきりは判っていないが、カーギル帝国については殆ど何も解らないに等しい。


 このように情報が集まりにくいのは、魔獣の住む森林が陸路を妨げ、海路はこちらも大海獣が住み、往来が困難であるということから交流が困難であることによる。


 日本政府の意図としては、カガルーズ世界に係わろうとしているのは、基本的には自らの地下資源の確保と食料の安定供給を狙ってのことである。しかし、この世界でしばしば飢えや魔獣によって人々の命が失われ、一般の人々、平民が虐げられている状況を改善したいという考えもある。


 さらに、もう一つは魔法が使える人々との協力ということもターゲットに入っている。なにしろ、レイナという一人の魔法使いが日本に現れたことで、日本のみならず世界が大きく変わろうとしているのだ。実の所、その点はアメリカとイギリスにとっては交流の大きな理由になっている。


 日本政府が、イスカルイ王国に投資を集中しようとしているのは、レイナという窓口になる有力者がいること、さらにこの国を経済成長のショーウィンドウにしようという意図である。そして、幸いにも魔法を使った資源探査の結果、この国では莫大な資源が発見されている。


 現状の荒っぽい試算では、インフラ整備の1次計画に当たり、日本側の持ち込みの資機材だけで4兆円を超える。現場作業には関しては、地球基準の工費であれば約10兆円になる。しかし、何しろこちらには魔法使いがいて、かれらが魔石によってブーストされているという条件である。


 だから、地球基準では工事金額は読めないので、建設作業は現地の責任としている。しかし、全体の取りまとめは日本人の監督を付けて、現地の親方の指揮で建設を行うことにしている。そして、日本の無償援助は調査・計画・設計・施工に関する日本人専門家の費用に関するものとした。


 だから、日本からの製品の購入に関しては、まずイスカルイ王国が金を日本政府に預けて、それを日本政府が現金化する。さらに査定の上で、日本政府が代行して支払う。普通は途上国への有償援助の場合には、低利のローンで日本側が資金を貸し付けるのであるが、イスカルイ王国の場合にはこのように現金払いなのだから極めて異例である。


 実際に、王国はすでに金のインゴットのみで400トン以上の金を持っており、今後も各金山の坑道を伸ばして地下の採取を続けていけば数千トンはあると見られている。さらに金山付近から取れる銀は、金の10倍ほどもあると見られている。


 加えて、見つかった資源の内、銅鉱脈については特に規模が大きく、資源量から言えば金属として50兆円を超えると見られている。


 つまり、イスカルイ王国は経済的には非常に安全かつ優良な援助先と言える。ちなみに、アメリカとイギリスは日本のやったこと、やる予定のことに大きな関心を持って見守っている。それは、彼らはイスカルイ王国の隣国のリンドル王国、コサンド王国及びタイラー皇国の3国に対して、経済成長政策の適用を考えており、その予備協議を始めているからである。


 今のところ、コサンド王国及びタイラー皇国がアメリカ、リンドル王国がイギリスという分担になる模様である。そして彼等も、日本と同様に資源調査を先行する予定で、すでに衛星写真を元に専門家による地層の分析を進めている。


 ちなみに貨幣の交換レートであるが、イスカルイ王国及び周辺3国は、似たような金銀銅貨を使って交換レートも殆ど同程度である。これは当然であり、相互に商取引があるので意図的に合わせているからである。この場合には金については、地球世界より2.5倍ほど価値が低い点も同様である。


 銀については地球とほぼ同等なので、1万ドラ金貨相当の各国の金貨は使用禁止として、代わりに5千ドラ大銀貨を発行して、1万ドラ金貨の代わりとした。この際に、イスカルイ王国には金と共に土魔法士によって抽出された2,000トン以上の銀がある。


 だから、イスカルイ王国についてはその銀を用いて、日本から輸入したプレス機で、当面必要とされた1千万枚を6ヶ月で製作した。他国も同様なことをしているが、銀が足りずイスカルイ王国から借りている。なお、紙幣発行の話もあったが、時期尚早と判断されて見送られた。


 この際に、王国は金貨を1枚に対して、大銀貨2枚で回収したが、自主的に提出しない場合には金貨は没収とした。無論、商人の間では、異世界では金は王国より値打ちがあると言う話は広まっており、金貨を隠す者もいた。しかし、地中から金を探査出来る魔法士が商店を巡察すれば直ぐにばれてしまう。


 そのことで、没収された金貨のみで10万枚を超えたが、まもなく当然噂になって隠すものはいなくなった。王国が回収した金貨は自ら所有していたものを含めると400万枚に近かった。これは鋳つぶして、100トン余の金が確保することができた訳だ。


 ところで、国の事業として農地への灌漑設備と、農地整理、肥料工場の建設はすでに始まっている。さらには、日本式の設備を導入した邸として王宮とカルチェル伯爵王都邸と領都邸には多くの貴族が訪問して使ってその良さを実感している。さらに、地球から輸入した車も羨望の目で見られている。


 従って、彼等はこぞって自分の邸の改修を行い、さらにMカーとしての乗用車を買っている。ちなみに、大量生産によるMカーは彼等の使っている馬車よりむしろ安く、貴族のみならずある程度豊かな平民もこぞって買っている。このため、どうしてもガタガタの道路が気になることになる。


 だから、土魔法によって王都を始め、ある程度大きな街の道路はどんどん改修された。そこで、活躍したのは主として地元の土魔法士である。だが、各種機器は日本から買い付けなければならない。


 そのような王国の需要の増大に応じたのは、マジマコーポレーションであり、この会社は金貨を地金の価格で受け取るなど良心的な価格で資材を調達した。ちなみに、イスカルイ王国では、すでにCADによる魔方陣の描画とエッチングのシステムは出来ており、次々に魔道具が量産化されている。


 また、人工魔石についても、その成分を魔法で知覚することによって、王国の錬金魔法士が量産するようになっている。なにしろ魔法士は魔石の助けによって、魔力切れがなくなったので、1人が1日に100個以上を作ることが出来ている。だから、20万人といわれる土魔法士にはすでに魔石が行き渡っている。


 現状のところ、土魔法士が圧倒的に活躍の場が多いために、彼等に魔石が優先して配布されている、ちなみに、人工魔石は空になったら魔力を充填の必要があるが、そのためのMラジエターと、魔石充填ホルダーは日本から輸入している。


 1日に6時間作業する場合には、3日に1度程度魔力の充填が必要なので、平均的には5人の魔法士に対して1セットの充填設備が必要である。また、大体10回充填すると人工魔石は割れて使えなくなるので、30日に1個程度魔石は新しいものと交換することになる。


 ただ、様々な工事は土魔法士のみでこなせるものではなく、様々な段取り、関連作業、雑作業を行う人員が何倍も必要である。このため、全国で一斉に始まった大規模な工事によって、極めて大きな需要が喚起されて、王国の景気は一気に上向いた。


 ちなみに、これらの投資の7割程度は国が行うが、国は増えた支払いは大銀貨の発行によって行うので当面は問題ない。さらに、国の投資の農業改善については、確実に収穫増という果実があるので、回収に不安はない。それに、貴族の領の工事については、増えた収穫の利益から支払わせる。


 さらに、今後のインフラ整備については、鉄道、電力、通信等については料金で回収する。ただ、道路については、国と領主の持ち出しになる。だが、大部分が土魔法で出来るので、コストは極めて低いし、流通の改善による経済活動の活発化は税になって返ってくる。


 ちなみに、道路や鉄道については橋やトンネルが必要であるが、トンネルは土魔法士がいれば全く問題ない。橋については、水魔法士と土魔法士がいれば、川の中、海の中においても地盤改良も含めて橋脚を建てることは難しくはない。


 そうなると橋の支持する橋脚間のスパンを、日本のように100m以上もあるような長大橋にする必要がない。そこで、上部工を土魔法によって溝型にすることで最大40mのスパンを標準とした。だから、橋は最大スパン40mの同形式に標準化することになった。なお、上部工の架橋は両側からのせり出しによって行っている。


 日本においては、橋は一種のランドマークになっており、様々な形式があって目を楽しませてくれる。その点で、イスカルイ王国の道路の建設費は、日本の平均の1/15程度と極めて安くは出来ている、だが、均一で面白味がないと日本からの観光客に言われている。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  現状はともかく、魔法という存在で、惑星カガルーズは地球世界を圧倒するポテンシャルを持っているのが良いですね。今後の小説の展開というか結末を読むのが楽しみです。 [気になる点]  英国と米…
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