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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第3章 レイナ嬢の帰国が巻き起こす騒動
37/86

3-7 レイナ嬢、王宮にて2

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 レイナのパソコンと電子ディスプレイを使った説明で、王国でも優秀な官僚や貴族はレイナの説明と趣旨を十分理解したようである。


「私は、農業管理官のミハジ・ヒル・メイガヌと申します。先ほどの資料で、まず灌漑設備を整備しつつ、モデル的な事業を進めていくといわれましたよね。最初は日本産の品種を使った小麦と、イモ類の栽培を種と肥料を地球から買い込んで行う。

 そして、その灌漑設備の構築に土魔法の素質のあるものに、魔道具を使って工事に従事させる。さらに耕作も同様に、土魔法の素養のあるものが魔道具を使って耕し施肥を行うということですね?」


 農業省の若い官僚の質問にレイナが答える。

「ええ、そうです。間もなく小麦の播種の時期ですから、差し当たっては1万ダノ(10㎢:1ダノ=1,000㎡)面積に相当する優秀な小麦の種、窒素系・リン系・カリ系の肥料を持ってきました。カルチェル伯爵領で2千ダノについては確保しますので、他の領地で残り8千ダノについて選択してください。

 参考までに言いますと、カルチェル伯爵領の小麦の収量は1ダノ当たりで110㎏程度のようです。それが、400㎏程度以上の収量が見込めると考えています。

 この候補地の選択はできるだけ全国に散らばせてお願いします。よろしいですね?」


「ええ、もうそれだけ種と肥料を持ってきておられるのですか?ええ、判りました。8千ドノですね。その程度でしたら急ぎ決めます。その候補地はできるだけ灌漑設備が整っていて、耕作と播種は従来通りですね。いや、播種の時に肥料をまく訳ですね?」


「そうです。肥料の播きかたなどは後で資料を渡します。それから……」

 レイナの言葉を遮って異論があった。小柄で太った御仁であるが、服装から高位貴族である。


「ちょっと待って欲しい。私はオムライ・ドウム・カリーナ侯爵である。それほど効果をある麦ならどの領も早く使いたいはず。我が領もそうであるが、それをレイナ嬢の実家と言え、カルチェル伯爵領に2割を割り当てるのはいささか公平を欠くにではないかな?」


「はあ、今回持ってきたのは私の私物です。元は我が領で全て使う心算でした。ですが、父から全国で満遍なくやった方が、今後の普及によいという意見を頂いたので2千ドノにしたのです。それに、新たな品種が100%この王国の土地に合うとは言えません。リスクもあるのですよ」


「そ、そうか。であればなにも申すまい」

 勢いを無くしたカリーナ侯爵は引っ込んだ。それを見てレイナが続ける。


「それから、灌漑設備のための水路を掘る魔道具と、その壁面を固める魔道具は準備してきています。ですが、当然水源を確保して、取付けの桝を設置して水路の勾配を決めるなどの調査と測量に設計は必要です。それはご理解頂いていますよね」


「はい、無論です。我が王国は水源に恵まれていることもあって、灌漑設備は大陸でも進んでいる方だと自負しています」

「解りました。灌漑設備について、図や絵が多い資料を日本から持ってきていますので、参考にしてください。それと、日本語と当大陸語の辞書もありますので使って下さい」


 そこに、中年の官僚が立ち上がってレイナに聞く。

「私は財務官のフーリエ・カザンと申します。ええと、レイナ嬢、今回持って帰ったものは貴女の個人負担ですね。それから、土魔法使いを雇っての灌漑設備の建設、今後の種や肥料の購入、さらに肥料工場の建設が必要とありました。

 また、出来た作物を使った加工として、製粉は勿論、酒や醸造製品の工場の建設が必要とも言っておられましたが、全部合わせると、莫大な金額になると思います。その費用を賄うのは金が良いと言っておられたね?金が良いという根拠を教えて頂きたいのですが」


「ええ、今日本というより地球世界では、歴史的な金の高騰が起きています。そして、我が国において、金は貨幣や宝飾品に使っていますが、それでも余っています。そして、日本と我が国の金の値打ちを比べると、相当日本の方が高いのです。

 つまり、わが国の金貨は1万ドナですが、1万ドナを日本円に換算すると10万円程度です。しかし、金貨の金の値打ちは日本では25万円です。つまり、取引で金貨を使うと、相手は金貨を鋳つぶして金にした方が得だということです。

 一方で、わが国の大銀貨は、千ドナですが、日本円に換算すると1万円程度で日本での銀の値段は8千円位ですから、これは問題ありません。ですから、日本との取引に金貨を使うことは禁止すべきです。そして大口の取引は金塊で取引すればよいのです」


「ほほう、なるほど。それは、貴重なご意見ですな。そうすると、わが王国が持つ金は日本との取引で大きな意味を持ちますな」

「ええそうです。それに、わが国のイアーナイ金山など3つの金山は、余り積極的に開発・増産をしていませんが、出来たら再度詳しく調査して増産するとずっと多くの金が得られると思います」


「おお、金山の調査と開発・増産ですな。たしかに、私も行ったことはありますが、余り人もおらず規模が小さかったと覚えております。それも貴重なご意見ですな」

 カザンはレイナの言葉に頷いて、丹念にメモをしていた。


 それから、レイナは持って来た諸々の紙の資料を、大きなテーブルの上に出してそれぞれについて説明していった。資料については、皆電子コピーは持っているのでいつでもプリントできる。さらに、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、掃除機、電子レンジ、電気コンロ、ステレオ、パソコン、プリンター、スマホなどの電化製品も一通り展示した。


 電化製品には、電源たるMバッテリーとさらにMラジエターとMジェネレーターも加えている。さらには魔道具としてキュアラーを展示した。加えて、予備のランクル、ジプニーなどを次々に展示すると、空間収納の容量が余りに大きいのに皆が驚いている。王国で最大の収納庫は最大10㎥程度なのだ。


 電化製品については、とりわけテレビやパソコン、スマホなど王国に似たものが無いものが注目を集めた。なかでも、テレビについては放送を受信しないと使えないとの説明にがっかりしていたが、ビデオは見ることができるという言葉に目を輝かせる者が多かった。


「このテレビについては、今では日本で持っていない家は殆どないと思います。これは記録したものを再生できますが、やはり放送局を作ってそこから放送をするべきですが、お金も時間がかかりますね」

 レイナの言葉に国王が反問する。

「その放送局があれば、余の姿が映せて、言うことが国民に聞こえるのか?」


「はい、できます」

「うーむ。しかし、そのためには、その放送局とやらを作り、何より大多数の国民がテレビを持っていないと意味がない。日本ではそのテレビはどの位の値段かな?」

「そう、これより小さくこの位だったら2千ドナ程度ですね」

 レイナは15インチ程度の大きさを指で示して言う。


「ほお、そんなものか。その位だったら平民も少し豊かになれば買えるな。一考の余地はある。しかし、そちらのスマホというものは、それほど小さくて遠くと話ができる訳だの。しかも、映像を取って送れる訳だ。それも欲しいものじゃ」


「ええ、こちらの場合には、これを繋ぐためには、信号を送る塔を立てる必要があります。また、こちらはテレビよりずっと小さいですが、値段は同じくらいです」

「それで、これ等を真似てつくることはできるか?」


「いえ、これを真似るまでになるには、100年はかかります。それと、色んなものをお見せしましたが、これらは日本から買えます。しかし、その代価が必要です。当面は金が使えますが、今ある程度の金では直ぐに無くなるでしょう。

 ただ、地球では何かの施設を作るためにお金を殆ど金利無しに借りることができます。特に日本は、遅れた国に対してそういうことをよくやっていますし、調査などは無償でやってくれる場合が多いです。この場合には、遅れた国というのは、残念ながら我が王国です。


 だから、それを作れば我が国の発展に繋がるようなこと、例えば、私の提案する農業の改革に必要な種や肥料を買う費用に、肥料工場・醤油工場・ビール工場各種酒の工場の建設費用ですね。それから、わが国が特に遅れている服飾産業の工場への投資ですね。これらの費用は、絶対に何倍にもなって帰ってきます。

 それから、電気の普及も必要ですね。幸い魔道具のMジェネレーターで発電がうんと安くなって、またMバッテリーがあるので、随分少ない費用で出来ると思いますよ。

 具体的にはこの宮殿位でしたら、Mジェネレーターを1式つけて、電線を張り巡らせばよいのです。魔法士がやれば大した費用はかからないでしょう」


「うむ、先ほどのビデオを見て、日本に追いつくのは容易なことではないことは良く判った。しかし、それらの家電は欲しいのう。それに、このランクルじゃ。これは欲しいのう」


「ハハハ、判りました。ランクルは進呈させていただきます。王宮に電気を通す工事は私の屋敷もやりますので、一緒にやります。日本から指導員を呼んで、魔法士にやらせばそれほど費用は掛からないと思います。まあ、風呂と便所は快適なものに変えますし、電化製品も適当に選んで買います。

 それで、陛下。私は明日日本に帰ります。日本と我が国の人が行き来をしても安全なことを確認する必要があるのです。そのために、こちらの30人ほどから取った口の粘液の試料を持って行って、分析してもらいます。その間に私は政府とかと色々な交渉します。

 それで陛下、日本と交流を始めることでよろしいのですね?」


「うむ、レイナが日本に貢献して、それが認識されているようでもあるし、日本が侵略を行うような国柄ではないことは分った。そして、あれほど便利なものを見せられたら、それを拒否することは出来ん。日本と交流することは余の責任において認める」


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― 新着の感想 ―
[良い点]  いわゆる金本位制のイスカルイ王国から日本へと金が流出し続けるのはちょと不味いですよね。開国後の日本の状況と同じになってしまいます。(海外と日本における金と銀の価格差の件による金の流出) …
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