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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第3章 レイナ嬢の帰国が巻き起こす騒動
34/86

3-4 レイナ嬢、故郷の領都にて

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 通常、自分の領を持つ貴族の子弟は幼い内は領で育つ。レイナは、5歳の魔力検査の時にその才能を見いだされ、6歳から王都の国立の魔法学校へ通ったために王都邸で育った。魔法学校は通常は10歳以降の入学であるが、レイナの才能が前例のないレベルだったために、レイナの措置は実質国の強制であった。


 だから、レイナは6歳までしか領には住んでいないことになる。とはいえ、王都に移ってからも何度かは帰省し、長期休暇には少し長く泊まってはいた。ちなみに、彼女の魔法の才能であるが、魔力が最大級であり無属性(属性に制限がない、つまり全属性)というごく稀なものであった。


 それを聞いた、王国魔法師の称号を持つアミア・トサム・ミーダラ師が興味を示し、自ら訪れて(とは言え転移の使える彼女の移動は瞬間である)前例のない才能であることを認定した。そこで、6歳から魔法学校に入れるように領主の祖父及び両親を説得した。領主の祖父はともかく、両親は大いに躊躇った。


 ミーダラ師は、すでに120歳を超えており、大陸に名が響いている魔法士である。そして、彼女は滅多に王国政府に物申すことはしないが、一旦意見を言えば、彼女の言うことは国王陛下も否定できないと言われている。それほどの人物が、『自分を超える魔法士になる』と断言し、愛弟子として育てると言っているのだ。


 これは、当時領主であったレイナの祖父にとっては命令に等しい要求であった。父母にとっても、レイナがすでに年齢とは思えない早熟さを見せていることは認識していた。その子が歴史に残るレベルの才能を持っているなら、それを腐らせるわけにはいかないと両親はお互いに言い聞かせて了承したのだ。


 果たして、レイナはミーダラ師の教えをぐんぐん吸収した。そして、13歳にして継ぐ者がいないと言われた師をして、『もはや教えることはない』と言わしめた。これは彼女が、師が身に付けている記憶魔法を8歳の時に習得したことが大きく寄与している。


 記憶魔法の効果は術者の素質に大きく左右され、魔力が大きいほど効果が高い。そして、魔力は膵臓の位置の臓器が魔力器であり魔力が貯えられている。また、魔力は基本的に血管を巡るのであるが、魔法を使うことは脳の指令によると、定義づけられている。


 魔力が高く強力な魔法を使う者は頭が良い。これは、多くの事例から間違いない。その理由は、強力な魔法を使うと、血のめぐりが良くなって脳の働きも良くなるからということになっている。ミーダラ師は魔法のみならず、その理知的かつ論理的な議論ができる点からも尊敬されている。


 レイナもその2世と言われる位だから、当然頭脳についても認められている。彼女については、日本においてもIQテストを受けていて、150ほどであったから地球でも滅多にいないほど高いレベルであった。しかし、IQ200の人でも、レイナのように一つの言語を1ヶ月でマスターは出来ないだろう。


 いずれにせよ、レイナは記憶魔法に適性があり、その効果はミーダラ師を超えており、それが師の魔法を受け継ぐのに非常に有効であったということだ。そして13歳で師の知る魔法は全てマスターしてその後は、師と共に新たな魔法を生み出すべく努力した。


 そして、レイナが14歳の時にミーダラ師は急速に衰え、床についてから1ヶ月ほどで死去した。8年間常に一緒にいた師匠の死は、レイナに大きな喪失感を与えた。その後は、伯爵家の王都邸に住みながら、研究は一人で行うようになった。レイナが日本に跳んだ試行は一人で様々に試している時のことである。


 そういう意味で言えば、伯爵領の邸は幼い頃に住んだ記憶が主で、それほど馴染はない。だが、この日やってきたのは、領の経営で忙しそうな父と兄に会うには、領の邸に行く方がよさそうであったからである。さらに、自分が考えている農業の改善について、現地で父と兄で説明し意見を聞くためである。


 ランクルが領都邸の玄関前にブレーキ音をたてて止まると、始めて見る巨体に、衛兵が慌てながら剣を抜いて「だ、誰だ!」叫ぶ。それにラムサールが、窓から顔を出し「ラムサールだ、奥様とご子弟方々だ。無礼はするな」しかりつける。

「は!ラムサール様、失礼しました!」


「よし、門を開けろ!」

「はい、開けます」

 兵が復唱して門を開く。レイナが礼を言い、笑顔で手を振って邸内にゆっくり乗り込む。

「ありがとう」


 それに対して、兵が「あ!レイナお嬢様!」と驚いて叫ぶ。

「そうよ、帰って来たのよ、それではね」

 手を振りながら、片手ハンドルで石畳を走っていくランクルを、門兵と通りかかった通行人が呆然と見つめている。


 ランクルを邸の玄関前に止めて、皆が下りる。その間に知らせがあって、邸の使用人が慌てて並ぶ中を、執事長がまず母マリアヌに向けて頭を下げ挨拶する。

「奥様、それに何とレイナ様、それとサンドラ様にアーク様、マリー様ようこそ。ただ伯爵閣下とリチャド様は領内の視察にお出かけです。しかし、昼食には帰って来られるとのことです」


「そう、こちらも急でしたからね。すこし休んで居間でお茶を頂こうかな」

「あ、あのレイナ様、長くお留守でしたが?」

 しれっと、レイナのことをスルーする母に、幹事長のマークムが慌ててレイナに聞く。それはそうだ。レイナは突然居なくなって大騒ぎになり、しかも、こちらで1年以上居なかったのだから。


「ハハ、魔法を失敗してね。異世界に行っていたの。これは異世界から持って帰ったの」

 レイナは笑って、ランクルを指さす。

「こ、これは何でしょうか?」

「ああ、これは乗り物よ。馬の要らない馬車といったところ。便利だよ。道が良ければ馬が全速力で走るより早いしね。まあ後でお父様たちにも説明するからマークムも聞いて」


 昼までの1時間ほどの間に、レイナは持って来た冷蔵庫と食品収納庫を調理場に置き、幹事長も含めてシェフのダイカン以下の調理人に中身を説明する。調理人たちは、冷凍機能もある冷蔵庫に驚き、さらにとりわけ高価な、胡椒や砂糖のような調味料が多量にあるのに驚く。


 やがて、父のチャールに兄のリチャドが帰ってきて、玄関前のランクルに大騒ぎになり、騒ぎに出てきたレイナを見て更に騒ぎになった。そこで、すこし落ち着いた所で、久しぶりに一家揃っての昼食を取った。昼食は普通のパンとオムレツのようなものであったが、胡椒などの調味料を早速使って一味違うものになっており、さらに冷蔵庫の中の果物とデザートで父兄も含めて讃嘆した。


「その日本でレイナは何をしていたんだ?」

 父のチャールが聞くのにレイナが答える。

「そうですね。私は魔法と魔道具を伝えて、その異世界の文明を学んでいました。私が行った異世界はカガルーズ世界のイスカルイ王国みたいな国で日本と言います。皇帝はいますが統治はせず、民はこのイスカルイ王国に比べてはるかに豊かです。

 日本の人は魔力を持ちませんので魔法は使えませんが、科学、これは世の理を解明する教えですが、それにおいて我が国に比べ遥かに優れています。そのお陰で人は飢えることなく、電化製品という物が整ったキチンと整った家に暮らし、平民でも使いきれないほどの衣服を持っています。それらについては後で映像を見せます。


 私が出現した家の方が良い人で、また国でも有力者でもありました。その方が大学?王立学校の高等学校のような学問の府の方を紹介してくれて、その学校を通じて、魔法と魔道具を研究して魔道具を広めてきました。その結果、私が日本に行ったことで、その地球という世界全体が変ろうとしています。

 そして、私もそこで学んだ科学のお陰で魔法もより使えるようになり、魔道具に至っては遥かに速く簡単に作る方法を学びました。また、その科学の知識を生かせれば、このイスカルイの人々の生活もずっとよくなります。例えば、今我が領の主たる生産物は小麦ですよね?」


「そうだ。85%以上を占めるな」

 父のチャールが頷いて言う。

「日本で学んだ知識を使えば、小麦の面積当たりの収量を3倍以上にできます」

「なに、3倍そんな馬鹿な!レイナが判っていないだけだ。そんなに簡単なものではない!」


 兄のリチャドが怒って反論する。

「いえ、それは後でお見せしますが、間違いなく日本のみならず地球世界の収量の平均は、こちらの3倍以上です。具体的には、麦の種類と肥料によって収量を上げるのです。これらは持ってきましたから試してください」


 父が腕を組んで考えながら言う。

「ふむ。しかし3倍取れるとなると、良いことではある。平民は麦を食えておらず、雑穀を食っている者が多いからな。だが、それはそれで大変なことだな。逆に大幅に余ることになって値が下がる」


 そこまで、考えが及ぶことに感心しながら、レイナは父の言葉に応じる。

「そうです。お父様の言う通りです。我が領のみなら値は動かないでしょうが、王国全土になると、大きく動きます。しかし、近隣の王国では明らかに不足していますし、日本も全く足りていません。だから、まずそのような収穫ができることを立証して、まず王国にその農法を広げます。


 私の計算では、国内の消費はまだ拡大の余地があるので2倍までになるはずです。だから、3倍の収穫があっても近隣の王国に売っていけば、十分消費できます。それに、小麦のみでなく場合によっては別の麦を栽培して、酒など麦からの加工に使えば良いのです。それで、人々は豊かになれます。

 それでも余るようだったら、私のいた日本であれば、小麦はほぼ全量が輸入ですから、我が国の余った量程度は簡単に吸収できます」


「ふむ。確かに余るなら加工に使うことは考えられるな。いずれにせよ、足りずに飢える者がでるよりも、食料が足りずに戦争になるよりもずっとましだ。まず、そういう方法があるなら、是非試してみよう。いずれにせよ、レイナが持って帰ったというその資料か?それを見せてもらおう」


 父が言って、一家は食事後早々に居間に移り、レイナが収納から出した90インチの画面に目を見張った。それに動画が音とともに映ると、もっと驚いた。


作者のモチベーションアップのため、ブックマーク・評価をお願いします。

済みません。第1話でレイナが転移の魔法を開発したという記述をしましたが、不都合があるので第1話の記述を訂正しました。それは、レイナが無詠唱での転移を試して失敗して日本に現れたとしました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  次元ゲートは王都邸のレイナ嬢の自分の部屋に、ゲート開通後の3日後に再度同じ場所に開く予定ですよね。つまり明日にはまた王都に戻っていないといけないわけです。  その移動方法はまたランク…
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