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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第3章 レイナ嬢の帰国が巻き起こす騒動
31/86

3-1 レイナ嬢の帰国準備

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 ようやく、N大学において空間ゲートを次元ゲートとすることに成功した。レイナの間島邸への出現より1年半の後であった。すでに、日本側としては、レイナから学ぶべきものは学んではいるが、まだ魔道具化が進行中のものが多い。


 しかし、レイラと魔道具化の過程を共にした研究者は、すでにそのプロセスを学んでいる。だから、先にレイナは魔法で実現して、その後魔道具化というプロセスを踏む必要はない。先に魔道具を作ってその機能を改善していくという手法も可能になっている。

 ただ、彼女の協力があった方が早く確実であることは確かだ。


 レイナの方はというと、当然単身の彼女では、まだまだ学びきれていないことが多い。それもあって、彼女単身で帰っても、地球の文明を再現することはできないのは明らかである。その点は、レイナは間島にもN大学でも研究者たちに相談して概略の方針を決めていた。


 まずは、農業技術を進歩させて、作物の最適化と、設備の改善、及び生産改善によって食料の大幅な増産を図る必要がある。これは全体に食料が不足していることで、戦争がしばしば起きている、さらに栄養状態が悪いために人々の体格が貧弱であるためである。


 作物の最適化に関しては、まず穀物の現状は、ミズルー大陸における穀物は小麦に近いが、品種改良が進んだ地球の普及種に比べ収量が半分程度である。また、サツマイモに近く甘みのないイモもあるが同様に収量が半分程度である。野菜もあるが、山菜的なものが多く、他には葉物と貧弱な根菜が栽培されているが、例によって収量は劣る。


 だから、地球産の小麦に、水が豊富なイスカルイでは米を持ち込む。また、イモ類としてはサツマイモやジャガイモを持ち込む。野菜も同様に収量が高く、味のよい地球産のキャベツ、ニンジン、トマト、ナス等を持ち込む。また、リンゴ、ミカン、スイカ、ブドウ、メロンなどの果物も持ち込む。


 加えて現在では高級品である、砂糖の生産を行いたいところであるが、気候的にミズルー大陸は向かない。なので、南方にある、シズク島のシズク王国にサトウキビの栽培を持ちかけるつもりである、だが、それには時間がかかるので、当分は日本から持ち込むことにする。


 農業設備に関しては、灌漑は基本的に沢や小川から水を引いている単純なものである。イスカルイ王国においては水流に恵まれているので、渇水年でも農民が水汲みに努力すれば収穫はさほど落ちることはない。しかし、他国では、渇水年は水源そのものが枯れるため手に負えず、餓死者が大量に出るレベルだ。

 このため、レイナは土魔法の使える者に工事をさせて灌漑設備を完備しようと思っている。


 肥料については、イスカルイ王国でも落ち葉や堆肥が有効であることは知られているが、施肥は中途半端なレベルであるため、収量は少ない。肥料については有機肥料も必要なのでこれまでの堆肥に加えて、家畜を飼ってその糞を堆肥に加える。


 しかし、こうした有機肥料のみでは不十分であり、周辺諸国へも供給する必要があるので、魔法で窒素・リン・カリウムを確保する方法を確立する。空中の窒素を固定化する魔法は、レイナが日本で学んだ知識を使って作ることができた。そしてこれを魔道具にしたので、問題なく窒素肥料はできる。


 またリン(原子量31)については砂の成分であるケイ素(原子量28)から、カリウム(原子量39)は多量に見つかる石灰岩の成分であるカルシウム(原子量40)から錬金魔法で変換できた。だから、この両者について、魔道具によって工業化できた。ちなみにこの両者は日本でも工場を建設中である。


 こうした改善で、面積当たりの収量は概ね3倍を超えると考えられ、余剰の穀物でビールや発酵酒、焼酎などの蒸留酒の生産や様々な加工食品の生産を行う。しかし、それらを考えてもイスカルイ王国としては大きな輸出能力を持つようになるはずである。


 灌漑設備によって水汲みは不要になるが、人手を必要とする耕作をどうするかであるが、地球にあるような農業機械を使うことも考えた。しかし、イスカルイ王国で生産できるようになるには10年以上を要する。だから、魔道具の助けを借りて魔法で耕し施肥を行おうと考えている。このことで、農業の生産性を上げて、余った人手によって様々な産業を興し、生活のレベルを上げたい。


 ちなみ、家畜については日本の鶏を持ち込もうと思っているが、牛や豚に相当する家畜はイスカルイ王国でもある程度飼われているので、それを増やす心算である。これらの肉は、まだ庶民には高価なので、大量に飼育し価格を下げて国民の栄養状態を改善したいと思っている。


 また、人の住む地域に隣接する大森林は大きな問題である。ここは、しばしば魔獣の氾濫を起こして、多くの犠牲者を出しており、そのためもあって人による開発を完全に拒んでいる。

 だから、魔獣を退治できる手法をなんとかしたい。これはレイナの雷の魔法で現状における最強の魔獣を退治できるので、雷の魔法陣とMラジエターを騎士団の者が使えるようにすることで解決できる。


 加えて、当面起こしたい産業は繊維である。麻、綿花に相当する植物があり、カイコに相当する虫がいて糸が作られ織物が編まれていて、服が作られている。それは、魔法によって効率化されていて、地球の産業革命以前よりはましであるが、やはり衣服は高価であり、古服しか買えない平民が多い。


 レイナはこの事情も調べており、電動で動く糸操機と自動織機を入手して、布を織るまでは自動化できる機械を入手している。染色の技術はイスカルイ王国にはあるのを知っているので、当面は布を織るまでを自動化して価格を下げようと思っている。


 それに、やはり生活を便利にしたい。レイナにしてみれば、電化製品に囲まれた日本のあの便利な生活に慣れると、魔法があるとは言えイスカルイの『原始的な』生活には耐えがたい。そのために、現地で生産できるレベルのもので、見本になるようなものを出来るだけ持ち込むつもりだ。


 ところで、人類文化学の観点からイスカルイ王国の文化はレイナから引き出せる範囲で詳しく分析されている。無論、言語もレイナが日本語を学ぶ段階で、ミズルー語と日本語の音声と書き言葉双方の変換ができており、電子的な辞書と翻訳ソフトも出来ている。


 更にミズルー語の文字変換ソフトができているので、デジタル印刷も可能になっている。だから、デジタル印刷機を持っていけば、コンピュータに打ち込んだミズルー語の文章を簡単に印刷できるのだ。


 レイナは過去数ヶ月、暇を見つけては地球事情をパソコンに打ち込んでいるので、イスカルイ王国に対してすぐにでも、報告書を提出できる。単色の木版印刷しかないイスカルイ王国の人が、カラー写真をふんだんに使ったレイナの報告書を見てさぞ驚くことだろう。


 またレイナにとって、イスカルイ王国に帰ってから、魔方陣作成を効率化することは極めて重要である。これは、王国が地球の機械文明に追い付くことは当分無理である。しかし、能力の強弱はあるが、国民全てが魔法の素養を持っている王国の者は、魔道具をより容易に使いこなせる。


 だから、魔道具を広く普及させるために、ミズルー語による魔方陣を効率よく作ることは極めて重要である。日本ではミズルー語による魔方陣を作り、これをN大の専門家が意訳してプログラミング言語によって魔方陣をCADで作ってそれを魔道具にエッチングで焼き付けている。


 レイナは、間島を介してCADソフトを作っている会社に接触して、ミズルー語を使え魔方陣に特化したソフトを3億円で開発してもらった。無論エッチングが出来る装置は入手している。だから、レイナはミズルー語の魔方陣を自由自在に作ることができる。このことで、現在では特殊技能の職人しか作れない魔方陣の作成を効率化できるようになった。


 レイナは、更に日本人を含む地球人と、ミズルー大陸の人々の人的交流を進めたい。N大においても、レイナが意図する、魔法のある中世的世界であるイスカルイ王国から、近代社会への短時間で移行するという文化的実験に大いに関心を持つ研究者がいる。


 その前提として移行する前と後の世界を比較して、後がより良いという価値観が必要である。比較するに当たって、置かれている立場によって優劣が異なることは当然である。

 イスカルイの人々で上層階層はレイナも属している貴族である。彼等は特権に守られ、平民から得られる税によって衣食住に関しては地元で最高の生活をしている、


 自らは家事に関しては何もすることなく、使用人に任せて置けばよい。ただ、質の面で言えば、食の美味さとバラエティは日本に比べ大きく劣り、エアコンはないので、暑さ寒さに耐える必要がある。風呂だって毎日は入れないし、便所はぼっとんである。


 移動するには歩くか、馬か尻の痛い馬車に乗っての地球の基準ではのろのろとしたものである。通信は念話があるので、即応性はあるが、使えるのは貴族でも10%足らずの人である。娯楽について、男子はいくつかのスポーツがあるが女子はなし。さらに演劇に小説めいた本があるが、テレビなどとは及びもつかない。


 このように、社会の上層の貴族の生活は、日々の生活の便利さ、快適さについて言えば明確に日本の庶民に劣る。しかし、日本社会はなかなか忙しく、精神的なストレスが高いことは事実である。この点ではのんびりした生活のイスカルイ王国が勝るであろう。


 もっともレイナは、領主・官僚など一部は忙しい生活を送っているが、それ以外の貴族の構成員は家事をする必要もなく怠惰な生活を送っている点で問題だと考えている。レイナの意見は、彼等も平民を含めた生活を豊かにするために生産に寄与すべきと考えている。


 それが、一般に食べるものにも不自由する平民においては、議論するまでもなく近代への変革は望ましい。主としてその理由で、レイナはイスカルイ王国およびミズルー大陸の近代化は進めなくてならないと考えている。


 とは言え、レイナは自分の快適さは追及するつもりだ。彼女は日本で知った便利さを手放す気はない。そのため、電源と共にパソコンを始めとして情報機器を持っていき、カルチェル家の王都邸に電線を張り巡らせて、一通りの家電を持っていくつもりである。


 更に、自分の屋敷において井戸ポンプによる給水を整え、風呂の大改修、浄化槽を設置して水洗便所にすることにしている。また、次元ゲートが開くのであるから、日本と王国を自由に行き来するつもりである。だから、足りないものがあっても日本で買えば良いのだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  いよいよ物語の中心にレイナ嬢が復活してきましたね。舞台はこれからふたつの世界を行ったり来たりということになるでしょうが、より面白くなりそうな予感です。  レイナ嬢自身は日本の生活の便利さ…
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