表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第2章 魔道具の開発と普及
29/86

2-16 魔道具と国の安全保障

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 国の安全保障は、近代においては豊かな国ほど重要であるが、過去は武器や戦慣れなどの面で、戦争の技術が遅れている国や地域ほど危険であった。


 かつてヨーロッパ諸国が、行く先々でそこにいる住民の財を奪って、さらに支配し奴隷化しようとしたことは歴史的事実である。かのコロンブスが西インド諸島に到着して、領土などよりは、金を奪おうとした金の亡者であったことは知られている。彼は金に困ってはいたのは事実だけど。


 その後を継いで、新大陸に上陸したスペインやポルトガルの連中のやったことは、いきなり平和な村々を襲うなどまさに最悪の強盗集団である。さらに彼等は、伝染病で現地の人々を滅ぼしかけた。当時のヨーロッパは様々な伝染病の宝庫であり、彼等自身免疫を持っている病原菌の巣であった。


 スペインは、ピサロ率いる僅か300人ほどの部隊によってインカ帝国を征服した。そのためか、随分自らの戦力に自信があったらしい。1550年代において、スペインが中国や日本などは数百の軍勢で征服できるという書簡が残っている。戦国時代の日本に、スペインの軍勢が上陸したらどうなっていたか。


 ところで、ヨーロッパによる植民地経営は、それほど割の良いものではなかったようだ。スペインも初期は略奪した金や銀鉱山からの銀で潤ったらしいが、暫くすると国の財政は大赤字だったらしいからね。イギリスはインドでは随分儲かったらしいけど、他は大したことはなかったようだ。


 日本の場合、台湾は黒字だったけど、朝鮮は貧しすぎたために投資が大きすぎて大赤字だった。その割に朝鮮の植民地経営について、現地の人から文句を言われている。オランダのインドネシア支配は黒字だったようだ。日本が太平洋戦争で解放した形になって、戦後にオランダからは随分文句を言われた。


 こうした数多くの事例から、人はそれなりに歴史に学んで、他国を征服するのは容易なことではなく、儲かるものでないということを知っている。しかし、世界には過去において武力を使って無理にくっ付けた地域が沢山残っていて、そういう場所では分離独立の内乱が起こることが多い。


 また、未だに他国を武力で侵略する馬鹿な国があるんだよね。そこにおいて核兵器の力を背景に脅してというケースがあった。核兵器は厄介な兵器である。最も威力のあるそれを使えば、大都市の住民をほぼ全て殺し、そこを完全な廃墟にしてしまう。


 そして、その後その都市のあった土地は、放射能による汚染のために数十年は無人化する必要があるだろう。そして、核兵器は通常兵器でその危険性と脅威を持つのに比べて非常に安価である。加えて、さほど高度な技術はいらない。だから、すでに持っている核保有国は必死に保有を制限しようとする。


 KT国のように、支配層がその支配を未来永劫続けるために核を持つ場合が最も手に負えない。つまり、支配者は国民に害が及ぶことを考慮せず、ひたすら自分の独裁体制を保持することのみを追求する。だから、この手の者は自分の体制が危険にさらされると実際に核を使う可能性が高い。


 とは言え、核無効化によって、R国、C国及びKT国の核のうち、地上に配備されていたものは無効化された。これらの国は、独裁体制であってその指導者が自分の体制を保持するために使いかねない危ない国と見做されていた、なお、R国とC国は数が少ないが潜水艦へ配備されている核は残っている。


 ただ、この両国はKT国ほどの強権体制ではなく、その独裁者は少なからず国民のことを考えざるを得ない立場である。そして、彼等にはアメリカが空間ゲートを使って核を無効化したことを知らされている。そのため、好きな所を破壊できる相手が、絶対的に優位であること理解している。


 R国の大統領は、自分の決断で日本の上空をミサイルで撃ったために核を失なった。さらにU国の侵略などの失政から、部下から粛清された。KT国の場合は、他に優越する唯一の梃である核を失ったことから、国を開く以外に選択の余地がなくなり、その障害になる独裁者が部下に粛清された。


 C国の指導者は、核を失うことで、公言しているT国の併合などの軍事路線を諦めた。合わせて、国内の不満を収めるために、外に対して融和路線に転じる決断をした。このために、独裁者の地位から自ら下り、選挙を行うとしたのだ。


 KT国は、世界有数の貧しい国であるために、今後軍備は放棄して諸外国の援助を乞わなくてはならない。一方で、R国はすでに資源頼りの途上国であり、核兵器を無効化され、通常軍備も細っており今後武力による威嚇が出来ない。このために、過去武力でもぎ取った領土をむしられる運命にある。


 その点で言えば、C国は全方向的に威嚇して嫌われてきたが、まだ侵略などは実行に移す前であった。だから、周辺国に実害は殆どなく、融和路線に転じれば、整ったインフラと人口を生かした工業・農業立国は可能である。それが、祭主席が殺されずに、権力の禅譲ができた理由であろう。

 国際社会においても、巨大な生産力を持つが、平和で穏やかなC国の存在は歓迎できるはずだ。


 日本の自衛隊にとって、自らの役割である安全保障環境は、核無効化の実施によって劇的に変わった。日本は、通常兵器においても圧倒的に強者であるアメリカと、安全保障条約を結んでいる。これは、アメリカが日本を守り、逆はないという片務的なものである。


 しかし、これはアメリカが日本を軍備強国にしないための手段であり、どちらかと言うとアメリカの都合である。彼等もまた日本と再度戦争をしたくなかったのである。


 今後、R国、C国それにKT国の核戦力が取り払われた結果、世界の核廃絶は進むであろう。障害になりうるのはアメリカであるが、この国は世界一の核戦力を持って、さらに通常戦力も圧倒的世界一である。だから、そのアメリカであるからこそ、非人道的として使えない核兵器を廃絶することに否やはない。


 他の諸国も、G7の国であるアメリカ、イギリス、フランスが進んで核を廃絶するという条件において、拒否する術はない。その上に、米英がR国やC国対してですら核無効化が実施できたという事実がある。だから拒否しても、世界を敵に回した上で強制されることは明らかである。


 つまり、すでに核無き世界になったと言って良い。しかし、融和政策に転じるというC国は通常兵器においても強者であり信用できないし、R国も核抜きでもまだそれなりの戦力はある。


 ただ、独裁者が除かれたKT国は、最早敵になりえない。ちなみに、KT国の独裁者は、自分に宮殿の前に立てられた十字架に縛りつけられた。独裁者朴を縛り付けた指導者達は、朴が集まった人々から石が投げつけられると思っていた。


 しかし、人々はそのような行動に出なかったが、縛られた独裁者から縄を解くように言われても応じなかった。これは、人々が体制を信じていない証拠とみられている。いずれにせよ、彼は現在宮殿の地下牢に拘留されていて、韓国のジャーナリストが見た時は随分痩せたらしい。


 朴はあちこちの国の秘密口座に預金を持っていて、指導者達はその引き出し方法を、拷問や薬で聞き取りしている段階らしい。彼等は、独裁者を簡単に殺すつもりはなかったということだ。


 そして、自衛隊内では、今後どのような戦略を取るかについては、政府も交えて継続的に議論が続いている。しかし当面の問題として、まだ自衛隊を含めて軍関係にしか供与されていない、Mストレージと空間ゲートの利用について、議論が交わされている。これは、閣議でも議論になった。


「どちらも、危なくて、まだ民用には使えませんよ。空間ゲートは、爆弾をもっていって、ポンとおいて来ればそこを爆破できます。Mストレージは、使えば密輸のやり放題ですからね。その中には危ないものもあるでしょうし」

 防衛大臣の春日が断言すると、国交大臣の甘利が賛同する。


「この両者を全面的に開放すると、輸送業界が大変なことになります。それは、貨物も乗客を運ぶ貨客もです。近い所の輸送はそこそこ残るでしょうが、新幹線、飛行機、鉄道やバス、貨物の長距離便はもう要らないことになります。

 すでに、化石燃料使用を止めるということで、Mジェネレーターの導入で結構な騒ぎになっており、この後も熱利用などまだまだあると聞いています。石油等の使用を止めるのはやむを得ないと思いますよ。これだけ値が上がっている上に、地球温暖化を考えますとね。

 しかし、空間ゲートとMストレージはそれほどの必然性が無いと思います。少なくとも急ぐ必要はないと思います。だから、産業と社会の混乱を避けるために当面は、その両者は凍結するべきだと思います」


「いや、これを軍事にしか使わないのは余りに惜しいですよ。せめて在外公館のみでも、使わせて欲しいものです。法人保護の観点からもあってしかるべきと思います」

 春日に対して、村山外務大臣が反対して、麻山副首相が外務大臣に賛成する。


「うん、私もどちらも今広く使うのは無理だと思う。しかし、在外公館であれば、秘密保持も可能だろうし、私は設置するのはありだと思う。しかし、多分当該国には知れるだろうから、そこのところだね。まあG7レベルの公館ならいいけど、密輸・密入国に使いかねない国もあるからね」


 そこで、加地官房長官がまとめに入る。

「そうですね。空間ゲートは当面棚上げと。ただ、在外公館への設置はありとして、その場合の利点と欠点、問題点を外務省に揉んでもらおうか。それと、Mストレージは、探知なんかの保安技術が無ければ危なくて公館におくのも難しいな。N大に一番接触しているのは春日さんの防衛省か。

 その辺をN大にお願いしてくれませんか?その辺りで総理いかがですか?」


「うん、空間ゲートとMストレージ。如何にも惜しいが現状ではしかたがないね。はい、それで結構です」総理が同意して閣議が終わる。


作者のモチベーションアップのため、ブックマーク・評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
地の文に思うとかだよねとか一人称てきな書き方がされているが、誰の発言か判らない。 横順作品のような作者自身の台詞だろうか
[良い点]   [気になる点] 》1950年代において、スペインが中国や日本などは数百の軍勢で征服できるという書簡が残っている。  これは【1950年代にそのような書簡が発見された】という意味でしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ