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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第2章 魔道具の開発と普及
27/86

2-14 魔道具のある世界1

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 レイナ出現以来1年半、彼女が齎した魔道具は世界を変えたと言われる。確かに、最初に出たキュアラー、次に出たMジェネレーターは、現在すでに世界を大きく変えようとしている。


 キュアラーは人の健康と命に直結する魔道具であるため、緊急的に世界に供給している。そして、すでに、日本以外に70万台を超えて供給されていて、緊急性は無くなっている。しかし、健康で快適な生活のために個人を含めた需要があり、最終的には世界の需要は1千万台を超えるであろうと言われている。


 日本においては、販売台数はすでに10万台を超えているが、歯科医を含むすべての病院が購入を希望しており、大病院では10台以上希望している。なお、キュアラーで歯の再生は出来ないが化膿や感染症には効くために、歯科医としても必須のものになっている。


 さらに老人ホーム、救急車用として消防署、プロを含むスポーツ関係の組織、大手企業、消防署、加えて個人も購入を希望しており、バックオーダーは100万台を超えている。これは、結局Mラジエターとのセットで200万円という手ごろ(?)な値段で買え、緊急的であれば使うのに専門知識が不要である点が原因である。


 だから、国の圧力もあって生産が更に強化され、今では月産10万台を超えていて、その8割以上が海外への輸出に回っている。通常こうした新製品は、国産化を求める海外からの圧力が強いが、キュアラーはある程度出まわると年間の需要は大幅に減ることが判っている。


 また値段が比較的安いため大きな産業にならないこと、さら日本が世界の需要に概ね応えていることから、この種の技術移転の希望は少ない。なので生産を日本が独占している現状である。


 キュアラーの効果として、即死していない限りほぼ救命できるので、殆ど病死というカテゴリーがなくなってきている。しかし、事故に関しては即死の場合にはどうにもならないが、そのために消防署に備えておいて、救急車の出動時に持たせるようにしようとしている。


 日本のみならず世界においては、キュアラーが医療業界を大きく変えようとしている。日本の場合には、基幹病院のような大病院において、その医者や看護士にとってはキュアラーの出現は恩恵であっただろう。これはそのお陰で、彼等の限度を超えた過重な勤務形態が解消されたからである。


 だが、一方で患者当たりの病院としての収入は大きく減っている。それは、手術などの治療費が大きく減ったこと、さらに入院日数が大きく減ったことが大きい。ただ、これらの大型病院はキャパオーバーのために来るものを拒む必要がなくなったので、患者数を多く受け入れることで収入減を補なっている。


 その面で割を食っているのは中小病院であり、特に入院病棟を多く抱える病院程影響が大きくなっている。このため、経営が成り立たず閉鎖する病院も相当数出てきている。これを受けて、保健の点数の見直しがされており、診療の時間当たりの単価が大幅に見直されようとしている。


 つまり、医者は重病患者で高額の治療費を取れなくなっているので、軽症の病気でもそれなりの費用を負担する必要になるのだ。一面で一人数百万円かかるような医療は無くなっているので、保険団体としては軽症の治療費に手厚くすることでこれを補っている。


 また、歯医者にとっては、キュアラーは歯には殆ど効かないので余り影響がなかったが、化膿や感染症など重症化する場合に使えるので、安心して治療ができると好評である。


 また、大きなマイナスの影響を受けたのは整骨などの業界である。腰や関節などが痛い場合にはキュアラーでほぼ完全に治り、若い場合には再度治療の必要はない。しかし、老齢化による痛みは1週間に一度ほどの継続的な治療の必要がある。


 完全に治るため患者の満足度は高いので、比較的高い診療費は取るが、客の数頻度が減る。そのため、業界としての収入減は大きいと言われる。


 また、認知症に対して、キュアラーの1週間ほどの集中的な照射で顕著な効果があることは比較的早く認められた。そして、その後は1ヶ月毎程度の治療でほぼ健常者の生活が出来る。このため、介護施設を去る者も多く、3万か所程のそれらの施設の経営は悪化している。


 そして、だれしも思うように製薬業界は大きな影響を受けている。無論、風邪薬や鼻炎の薬など必要な薬はまだまだ多いが、服用する期間が短くなっており、抗がん剤など高価な難病用薬剤は不要になったものも多い。従って、製薬業界の収入は半減に近いと言われる。


 このように、医療や介護などの業界は大きな影響を受けて縮小に向かっている。だが、反面で保健・介護など福利厚生費に巨額の支出をしている国の財政は大いに助かっている。


 さらに、最も助かっているのは、医療が必要であった人々である。まず医療費としての多大な費用が大幅に減額された。さらには、お金などより、命が助かって元気に働いている人々、数週間・数ヶ月の入院が必要なくなり職場への復帰が早くなるなど、多くの人々がキュアラーの恩恵に預かっている。


 ―*-*-*-*-*-*-*-*-*-


 Mジェネレーターは、そのお陰で人類の未来が開けたとまで言われている。つまり、人類はその快適・便利な生活のために、極めて長期間をかけて地球に貯えられた石油・石炭などの化石燃料を使い果たそうとしていた。


 代替として原子力や、太陽光や風力などの発電を開始したが、前者は危険な放射能の問題が付きまとう。このため、原子力発電はその危険性除去のため多大な費用が必要であるため、必ずしも経済的ではないことが知られるようになっている。さらに核分裂物質の資源量には限りがある。


 後者の自然エネルギーによる発電は、何といっても昼間しか発電しない、風がないと発電しないなど不安定な供給がネックである。このため、発電した電力も不安定ないわゆる汚い電力である。このことから、補助的にしか使えないことは明らかである。


 そして、現在のエネルギー供給の大部分を占める化石燃料の大量使用の副作用として、大気中の二酸化炭素の濃度上昇による地球温暖化がすでに顕在化している。その結果として、世界的に気候変動という実害が生じており、さらに激甚化する様相を見せている。


 この状況を是正しようということで、二酸化炭素のゼロエミッションなどという言葉を使って、世界は化石燃料の使用を削減しようとしている。その努力の現れが、太陽光発電や風力発電であり、さらに原子力発電である。ただ、その問題点と限界は既に述べた通りである。


 そして、国連が掲げ、各国が目標にしている二酸化炭素削減の目標を達成するためには、生活レベルを落とすしかないことは明らかである。各国はそれぞれに、二酸化炭素の削減目標を掲げているが、結局核融合発電のような大きなブレークスルーを期待しているのである。


 ただ、残念ながら、自然界の太陽の中では起きている核融合を、人類はまだ爆弾という形でしか実現出来ていない。そして、発電という形での実現はまだ相当遠い将来であると見られていた。そこに、銅原子をエネルギーに変える発電の魔道具たるMジェネレーターが現れたのである。


 ちょうど、その時点で地球の石油資源量と需要の見通しが示され、枯渇への道筋がはっきりしたのである。石油については、海底油田などの新発見もあって、枯渇はまだ遠い先であると言われてきた。しかし、先述のような国連からのレポートが示された結果は大幅な値上げであった。


 石油については、すでに半年で30%もの値上げがあり、石炭もその半分程度の率で値上げが続いており、これは今後継続的に続くと見られていたのである。それに対しては、太陽光・風力発電所の増設が計画され、反対の多い原子力発電所も新設が俎上に上がって来ている状態であった。


 実はMジェネレーターの普及については副作用が大きい。これは、既存の発電設備に比べて余りに設備費用が安く、かつ燃料費が事実上ゼロに近いということによる。つまり、競争力が高すぎて、発電機を作る業界、燃料を運搬・精製・利用するための業界を一挙に破壊してしまうからである。


 Mジェネレーターが実現した現在、余りに優位な経済性からそれを使わないという選択肢はない。さらにこれは、資源の問題を解決し、化石燃料の副作用を解決することで、人類の未来を保証するものである。しかし、普通であれば、政府は関連の業界を守るためにその普及にブレーキをかけて、10年とか20年で既存のシステムの代替をしたであろう。


 しかし、化石燃料の価格の急騰は、Mジェネレーターの普及に時間をかける余裕を奪った。しかも、ある意味問題であったのは、コンパクトで簡易なこの発電機の構造は量産に極めて向いており、設置も数日というスピード施工が可能であったことである。


 燃料費の高騰に苦しむ電力会社は、全力で発電機の更新にかかった。㎾hで15円ほど発電原価の差があるので、標準で50万㎾の発電機の設置が1日遅れるだけで、1億8千万円のコストに差が出るのだ。


 建設時間を短縮するために、既存の発電所で送電や変電の設備が整っており部分的改修で済む場所を選ぶことになる。電力会社は最初は古くて効率の悪い発電所を選んでいた。しかし、運転してみると可動部がないこともあって、点検などのために止める必要がなく、完全に24時間運転が可能である。


 このため、既存施設がどういうものかはお構いなしになって、最初は除いていた原子力発電所でもどんどん切り替えていった。結果として、残り1年あれば、電力会社の発電機は殆ど全てMジェネレーターに更新される予定になっている。


 残るのは、比較的新しい水力発電所のみであるが、これらも更新時期に切り替わる予定である。また、太陽光、風力発電は電力会社とは関係ない団体によるものである。これらは余りの割高であるため、無駄が大き過ぎ費用負担に国民の反発が大きい。だから、国がある程度の負担をして廃止に動いている。


 このように、電力会社の発電機は全て切り替わる目途がついた。しかし、化石燃料から脱却するには、エンジンをモーターに変更して車輛や船舶・航空機の電動化を行う必要がある。また様々な煮炊き・加温・精錬など工場内の熱源を電気にする必要がある。


 このためには、技術的に解決する必要がある多くの課題があることは確かだ。中でも大きな課題は高効率な電池であるが、Mジェネレーターの銅から電気を引き出す方法を転化する研究が行われている。さらには産業用に、電気を熱に効率よく変換する方法も高周波の利用の形で進んでいる。


 これらに向けて、魔道具の開発が始まっているが、最初にレイナに魔法によって実現して貰い、その後魔道具化する必要があるのだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  キュアラーの普及により、介護施設での利用者における認知症はほぼ改善、病気も基本的には完治もしくはかなりの改善が見込めるということは、高齢者が亡くなるのはほぼ老衰のみということになるの…
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