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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第2章 魔道具の開発と普及
23/86

2-10 魔道具・空間ゲートの活用3

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 空間ゲートの存在については、たちまちマスコミに漏れた。そもそも日本、アメリカ、イギリスから多数の戦車、戦闘ヘリ、銃器さらに大量の重機や資機材に加え、2千人を超える人員がM国に渡った訳であるからばれない訳がないのだ。


 しかも、基地建設や整備の人員は毎日ゲートをくぐって本国とM国を行き来している。自衛隊の基地建設隊は朝朝霞駐屯地からM国に行き、夕刻夜間工事班と交代して工事を進めてきた。その中で機材などは必要になる都度運んでいる。ただ、ゲートは常時開いている訳ではなく、時間を決めて開閉している。


 朝霞駐屯地所属の秋月陸曹長は昼間の作業班であり、彼はフェンスのH鋼打ち込みの指揮を担当している。M国の昼間の気温は35℃までは行かないが、日本の夏と同じで暑い。クレーン車のオペレーターはエアコンの効いた運転席での作業であるが、長さ7mのH鋼を定位置にセットする役の隊員や、様々な雑役の隊員は外での作業である。


 このような外での作業は汗びっしょりになるのは避けられないので、2時間ごとの交代である。2m毎に撃ち込んだH鋼に鋼製横げたを溶接していく。本当はボルト留めにしたいが、地面に撃ち込むH鋼は正確には撃てないのでやむを得ない。重機から延ばした腕で、半自動で溶接していくが手間のかかる仕事である。


 その間に、基地内のプレハブの本部棟と宿舎等が組み立てられている。クレーンを使ってはいるが組み立ては人海戦術であり、これも汗びっしょりである。さらに本部棟は鋼材でカバーされる。なお、場内には20㎝厚で砂利が敷かれて、雨が降ってもぬかるまないようにしている。


 このように昼夜兼行の作業で、4日目には細部を残して基地は完成して、M国政府のメンバーが本部棟にやって来た。無論政権幹部5人ではなにも機能しない。このため、日本在住のカヤク会からの志願者50人に、基地まで車などを使って集まってきた50人ほどのM国人も働いている。


 基地の役割は、M国正当政府はM国にいて、政権を取り戻すための活動をしているというアピールのためが主である。だから、役割は定期的な宣伝活動であるので、放送機材やインターネットなどの通信機材がその武器になる。


 これらは日本から持ち込んだものも多いが、地元メディアも機材持ち込みでやってきており、彼等も自分達なりの放送を始めている。このための情報発信基地は、日本の業者が入って整えている。そして、この騒ぎになって、M国軍が察知できない訳はなくすでに偵察部隊が周辺に出没している。


 しかし、彼等が近づこうとすると戦闘ヘリが出動して、チェーンガンで威嚇されて逃げ散るという繰り返しをしている。また、1,000人を超える部隊が戦車10両を先頭に進軍してきたが、空母エンタープライズ3世から飛び立った戦闘機の超低空飛行と威嚇射撃に逃げ帰っている。


 外の世界のマスコミもこの状況を取材しようと躍起になっているが、M国は国軍に封鎖されているので、現地からの取材は出来ない。このためマスコミの報道協会から、防衛省に対してゲートからM国基地に入り、取材させるように申し入れがあった。


 この報道機関の動きは日本のみならず、アメリカ、イギリスも同様であり、3国は話し合って、M国首脳の了解の上で、各国20人を限度としてマスコミを受け入れた。つまり、まさに軍事クーデターが起きて戒厳令が引かれているM国の基地から、世界に向けてのライブ放送が始まったのだ。


 そして、M国軍の首脳部は、その事態に慌ててその基地を攻撃するように命令を発した。だが、国軍の全兵員は、地元テレビ局の映像で世界最強と言われる戦車が40両、さらに凶悪な戦闘ヘリの20機が配備されているのを見ている。


 さらに、エンタープライズ3世からは艦長からの警告があったこと、さらに警告通りその戦闘機に追い散らされた部隊の存在を知っている。また、アメリカの原子力空母1隻は、M国軍をせん滅できる存在であることは常識である。


 要塞化され、戦車と戦闘ヘリが配置された基地の映像を見ながら、エンドワ総司令官兼・臨時大統領から攻撃を命令された第3師団の師団長リマン・ボゾラム少将はため息をついた。そして、自分のデスクの前に座っている参謀長のミャムラ・ジライに話しかける。


「どうだ、ジライ大佐。この基地をせん滅できると思うか?」

 切れ者と言われるジライはあっさり首を横に振った。

「たどりつけば、あのプレハブの建物位は破壊できるでしょうが、射程圏内にたどり着けません。

 まず、空母艦載機にやられます。あいつら夜でも関係ないですからね。さらに、そっちが出動しなくても、戦闘ヘリで戦車は全滅、兵員は1/3はやられます。ですから無理です」


「ふん、そうだろうな。しかし、なにもしないとエンドワは許さんぞ。どうする?逃げるか?」


「ハハハ、エンドワに何ができます。こっちに、部隊を送るなんてことは出来ませんよ。私の掴んだ情報では首都の第1師団はすでに半分兵が残っていないようです。我が第3師団からも、3割が逃げ出していますがね。

 馬鹿げたことに、ほんの40㎞の所に要塞ができて、そこに正当政府という連中が籠っています。そして、彼等は世界に向けて我が国軍の不当性を訴えているのです。しかもそれを米軍と英軍、それと日本が公然と支援して軍事行動も辞さない構えです。


 その上に、彼等には空間ゲートというものがあります。それを使って、彼等は戦車などの兵器に、重機や機材も好きなだけ持って来れるのです。つまり我々には、物量でも兵員の数でも勝てる要素はありません。しかも、世界的には我々の政府は正当ではないのです。

 出撃命令が下ったことで、この基地からも兵がどんどん逃げています。あと数日内に、兵の殆どはいなくなりますね。幸いに我々は手を汚していません。逃げても追われることはないでしょう。私も逃げますよ。ビジネスの世界で誘ってくれている友人がいますから。師団長も逃げた方が良いと思いますよ」


「いや、逃げることはしたくない。私は、兵が逃げても構わんが銃器は持たせないように命じている。山賊になっては困るからな。そこは、ムーラン中佐がやってくれているはずだ。うーん。どうだ、この際正当政府に投降しようじゃないか?」

 ムーラン中佐は、実務の服師団長格であり、部下を良く従えている。


「うん、そうですな。いいのじゃないかな。他の師団も言えば乗って来ると思いますよ。首都の第1師団は難しいでしょうが。そして、正当政府の指示に従うとの宣言を出すのですよ」


「うむ、判った。そうだな。そうしよう。早速親しい第5、第2、第6師団に連絡を取るが、その前に…」

 ボゾラム少将はスマホを取り出して、ボタンを押す。

「こちらはボゾラムだ。ムーラン中佐か。ちょっと状況が変わった。すぐに私の部屋にきてくれ、うん」


 数分で、長身で白髪のムーラン中佐が現れ、敬礼する。

「よく来た。忙しいところを済まんな。そこに座ってくれ」

 ムーランが座った所で、ボゾラムが話始める。

「君も知っての通り、司令部から例の基地に攻撃をかけせん滅するように命令があった」

 ムーランはそれを聞いて重々しく頷く。

「そうです。存じています」


「それで、私としては命令を実行することは不可能と考えている。いや、実行しようとすることは可能であるが、相手の基地にたどり着くまでにわが方は全滅するだろう」

 沈着なムーランも、流石にこの言葉に目をキョロつかせたが、最終的に頷いて同意する。

「わ、私もそうなると思います」


「それで、私は我が第3師団は、正当政府つまり大統領アン・スチー氏の率いる政府に投降しようと思う。どう思うかね中佐?」

 ムーランはしばし考えこんだが、やがて顔を上げて返事をする。


「よろしいと思います。すでに我が国軍が勝利する道はありません。まあ国民を盾にするならば、混乱させることは出来るでしょうが、最終的には敗れひどい罰を受けるか死んでいるかです。私は師団長殿の考えに賛成です」


「よく言った。そうであれば、我が師団の兵の離脱は出来るだけ防ぎたい。離脱して兵はなにをやるか判らんからな。我が師団の脱走兵が罪を犯すことを防ぎたい。なお、今から第5、第2、第6師団に我が師団への同調を呼びかける」


 ムーランは再度頷いて賛同する

「よろしいと思います。では私は兵に正当政府に降伏でなく従う旨を伝えます。本来はそれが正しい姿ですから。兵の説得も楽になります」


 新政府のスポークスマンを務めるアリラが、デスクに座っているハン・アリ首相に呼び掛けた。

「ハン・アリ首相、第3師団のボゾラム少将から電話です。大事な話があるとのことです」

「ほー、ボゾラム少将?」


 ハン・アリはスマホを受け取りながら、心待ちにしていた降伏の連絡かなと思い期待に胸が躍った。

「こちら、首相のハン・アリだ」

「は。私は第3師団長のボゾラム少将です。私は師団長として、我が師団はわが国の正当な政府である貴方ハン・アリ氏が首相を務める政府に従うことを宣言します。この点は我が師団のみならず、第5、第2、第6師団の師団長の合意も得ています」


「うむ、よろしい。私は政府の首班として、君たち第3,5,2,6師団が我が政府の指揮下に入ったことを認める。それでは、我がミーシャ副首相と報道班がヘリで君の駐屯地に行くので、テレビカメラの前で我が指揮下に入ったことを宣言したまえ。私は君ら軍もできるだけ犠牲を出したくないのだ。

 そして、そちらに行くクルーの安全のために、君と総勢5人以下で駐屯地の外で旗を立てて待機していてほしい。よろしいか?」

「はい。承知しました。いずれにせよそうしたことは必要であると思っていました」


 このことで、国軍側は4つの師団(定員各12,000人)が、正当政府の指揮下に入り、その映像がマスコミに晒された。クーデター政権は放送とインターネットを止めようとしたが、すでにそのコントロールの能力を失っていた。


 そして、国軍の寝返りは4つの師団に留まらず、第3師団の寝返りの翌日には、首都の第1師団及び陸軍本部を除くすべての師団が同じ行動をとった。また、その2日後には、すでに首都のエンドワ臨時大統領の率いる軍の兵の数は2,000人を切っていた。


 その日、臨時政府は第3師団を中心として混成師団を結成させて、100両の戦車と1万人の兵力で首都の陸軍本部に進撃するように命じた。その部隊が、陸軍本部に至るまで一切の抵抗はなかった。そして、到着した陸軍本部の正門は開け放たれて、丸腰の100人ほどの将校が待っていた。


 そして、案内されて入ったエンドワ臨時大統領の部屋には、頭を撃ちぬいて死んでいる本人が発見された


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― 新着の感想 ―
[良い点]  登場人物の大半が理性的な行動をとっている点は良いですね。しっかりと彼我の戦力差や国民や国際社会の支持がどちらに傾いているのか。そして大義名分はどちらにあるのか。そういった点を正しく判断し…
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