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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第1章 レイナ嬢日本に登場、巻き起こる渦
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1-2 レイナ嬢、魔法を披露する

読んで頂いてありがとうございます。


 俺は午前9時からの会議の後、大学の同窓だった香川義人N大学名誉教授に電話した。香川は工学部にメカトロニクス科を作って教授に収まった男であるが、非常に優秀でこの分野では世界的な権威である。未だに、大学に研究室を持って毎日通っている。


「もしもし、間島です。香川君?ご無沙汰です」

「ああ、間島か。相変わらず元気そうだな。それで、大社長がしがない学者に何の用だ?」


「これは冗談じゃないんで、真面目に聞いてくれよな。今朝なあ………

 ………名前はレイナと言うんだが……

 それで、見たのは風魔法と言っていたが、1㎏位あるガラスの灰皿を持ち上飛ばして見せた。その挙動はドローンそっくりだった。あれは絶対にインチキではないぞ」


「うーん。ちょっと信じられんが、百閒は一見にしかずと言うしな。じゃあ、俺達が今から行ってもいいんだな?それに、庭が荒れるかも知れんがそれもいいな?」

「ああ、峰子に言っているから、いきなり行ってもいいぞ。じゃあ行くんだな?」

「行くよ、そんな面白い話はなかなかない。準備もあるんで、家に着くのは午後2時頃かな」

「解った。俺から家には連絡しておく」


 俺はさらに、会社の顧問弁護士の鍋島氏に電話した。レイナの日本への在留資格取得の件である。彼女は当然入国の記録がなく、地球上のいかなる国の国民でもない。俺は鍋島弁護士に洗いざらい状況を説明した。

「なるほど、レイナさんは、地球上ではない国の者で、その国から日本に転移してきたという訳ですね?」


 弁護士の言葉に、俺は自分の意見を言う。

「ええ、その通りです。それに、緑の目の人は居ますが、紫の髪は地球人には居ないでしょう。だから、事実をそのまま申し立てて、私が保証人になって難民申請でいいのじゃないでしょうか」


「まあ、出入国管理法というのは、要は入って欲しくない外国人を排除するためのものです。ですから、間島さんが保証人に立てば、正直ベースでいいでしょう。だって、間島さんがさっき言った、異世界から来たと申したてることが事実でないという証明は出来ないですよ。それに、紫の髪に魔法を使えるのですか?事実、魔法が使えるのであれば、国が率先して滞在させますよ」


「なるほど、安心しました。それで、政界筋、選挙区の美山先生にも声をかけた方がいいでしょうかね」

「うーん。今の所は要らないんじゃないでしょうか。ただ、大騒ぎになったら何で知らせなかったと文句を言うかも知れんですな。香川教授が調べておられるのだったら、その結果がある程度纏まったところで知らせたらどうですか。敵に回すのはまずいですからね」

「そうですな。そうします。いずれにせよ、在留許可は必要ですから、先生の事務所で準備を願います」

「はい、承知しました」


 鍋島弁護士は、電話を切り、「ふう」と息を吐いて、横の机で電話の内容を聞いていた番頭役の仁科洋子に話しかける。

「魔法が使える紫の髪で緑の目の美少女だってさ。間島さんも冗談が好きではあるけど、あのように延々と冗談を言う人ではない。だから、少なくとも間島さんは事実と信じている。まあ、お得意さんの依頼だから何れにせよ対応が必要だ。ええと、木島君が在留許可をやっていたよね?

 いずれにせよ、本人にヒアリングが必要だ。担当は木島君として、ヒアリングには僕も是非立ち会うよ。魔法が使える紫の髪で緑の目の美少女に是非会ってみたいからね。仁科君は?」


「もちろん、私だって会いたいですよ。それで、間島社長は彼女のことは公にする心算でしょうか?」

「うん、僕はそう受け取ったね。でなきゃあもう少し隠すよ。それに彼女は、日本のことを学びたいと言っているらしいからね。その代わりに魔法を教えるのだって、隠したんでは時間がかかるよね」


「ええ!魔法を教えるのですって!?それは日本のみならず世界中で大騒ぎになりますよ。その時の人だとなると、なおさら是非会わなくちゃあ!」

 仁科は45歳のおばさんであるが、手を合わせてはしゃいで見せる。鍋島は苦笑して、事務所の木島所員を呼んで、在留資格取得の業務の段取りにかかった。


 香川教授が、間島家を訪問したのは午後2時過ぎであった。大学のワンボックスカーにメカトロニクス学科の南沙耶准教授と博士課程の山名かえで、それに医学部脳生理学科の風早良治准教授に博士課程の水島亮が同乗している。車には様々な機材が積んでいる。


 魔法が見られる、ということで皆ノリノリであったが、32歳の最優秀と言われている医学部の風早准教授はかなり懐疑的である。医学畑の者も必要ということで、医学部長に話をして風早が推薦されたのだ。彼は、他の者ほど香川教授のことを知らないのも懐疑的になっている一因である。


 香川は最もドキドキしている一人だろう。科学者として、今まで積み上げてきたキャリアと知見からすれば、魔法などはあり得ない。しかし、心の中では本当であって欲しいという部分があった。それゆえに、信用しているとは言え友人の言葉を信じて、自らの名声を賭けて学内から人を集めてきたのだ。


 大学からの訪問者を、峰子とレイナが迎えてひとまず応接室に迎え入れお茶を振舞った。その間ずっと、訪問した者達の視線はレイナにくぎ付けであった。そして彼らは、レイナの言葉が混じった念話を経験することで、少なくとも魔法と言っても過言でない現象が存在することを実感する。


 若い大学院生は目をキラキラさせて、レイナを見つめつつ念話を経験する。皆が供されたコーヒーまたは紅茶を飲みほしたところで、レイナが思念で伝えた。

『朝ここで、そこにある灰皿を風魔法で持ち上げて見せました。もう一度やりましょうか、それとも外でやりますか?』


「ああ、それはカメラの映像に残したいのと、魔法を使うときにレイナさんの身体の測定をしたいと思っています。だから、その準備もあるので是非外でお願いします」

 そのように香川教授が応じる。


 皆外にでて、車から取り出した機器を持ち出してセットする。3脚に据えたカメラと、赤外線カメラをまずセットする。また、レイナには了解を得て頭と腕・胴体にセンサーを取り付ける。なお、レイナはデパートに届けさせた服の中から取りあえず白のジャージを着ている。


「うーん、美人だ。この世のものとも思えない」

 レイナをしみじみ眺めて医学部院生の水島が言うと、風早准教授がボールペンで頭をコンと叩く。

「真面目にやれ!画期的な試技だぞ」

「へへ、そうですね。世紀のパフォーマンスです。でも試技者が美人であることは確かです」


『では、風魔法で灰皿ですか?あれを持ち上げ飛ばします。これに似た動きをするドローンというものがあるそうですね』

 そう言って、レイナは腕をあげて指で芝生の上に置いてある灰皿を指し、「〇×▽〇!」と声を出すが意味は解らないものの、無論録音はしっかりされている。


 径が30㎝ほどもある大きな灰皿は、最初は揺れながら3mほど持ち上がり、その高度で周りをゆっくり回る。安定した飛行である。それが着地すると、見ていたお手伝いの2人の女性と峰子が拍手する。しかし大学から来たメンバーは、真剣な顔で記録を確認しながら機器を操っている。


『では、次は火魔法です。あそこにある木片を燃やします』

 今度は、レイナは皆を庭の隅にある砂利敷きの小さな平地に導く。そこには、30㎝角ほどで厚みが5cm程の木片が砂利上に直においてある。2mほど離れて径5cm長さ20㎝ほどの鋼管がおいてある。


「×〇▽〇〇×」

 レイナがつぶやくように言うと、木片の中央が急激に黒くなって煙が出て、やがて煙に着火する。

『今度は、そこの鉄の管を溶かします』

「〇▽〇×〇▽」

 木片が燃え尽きたところで、またレイナがつぶやくように言うと、たちまち鋼管は真っ赤に赤熱し、やがて白くなってどろりと形を失う。3mほど離れた観測者まで熱が伝わって来る。


『じゃあ、次に光魔法です。単に光るだけですが、余りまぶしくない程度に明るさは押さえます』

「〇×〇□〇▽〇」

 同様に、レイナのつぶやきと共に、直径10㎝ほどの100W程度の明るさの光の球が10個現れ、飛び回る。2~3分ほど飛び回ったそれは消えてしまった。


 その後、レイナは皆の方を向いて念話で伝える。

『これで一応終わります。無論全てではなく、危なくないものを選びました。でも、これで一応魔法というものがあるという点は判って頂けたと思います』


「ああ、レイナさん。危ないという魔法はあるのでしょうか?」

 香川教授が聞く。

『はい、例えばエアカッターです。「▽〇×〇▽〇」あの枝を狙います』

 空気が薄くゆがんで見える塊が、ビュンと飛び10mほど離れた径5㎝程の松の枝をスパリと切り落とす。


『あ!まずかったかな?』

 今更ながら念話で悔やむレイナであったが、峰子が笑って穏やかに言う。

「いいわよ、その位。安心して」


 レイナは香川に向けて言う。

『でも、香川先生、地球は私の国に比べると魔素の濃度が低いです。ですから、余り強い魔法は使えません。でも、強い魔法はここ日本では必要ありませんので、却って安心ですね』


「ええと、見せて頂いた魔法は、我々の世界でも機械的なものを使えば実現できます。勿論、人が意志のみでやれるということは素晴らしいことですが、魔法でないと出来ないことはないでしょうか?」

 南准教授が聞くのに、レイナは穏やかに応える。


『ええ、私はこちらに来て大変驚きました。言われるように、魔法でやれることの大部分はこちらで装置というもので実現できています。出来ないだろうと言えるのは、そうですね、『次元収納』などはどうですか。小さい袋などに沢山物が入り、重量を感じません』


 その後も様々な議論が交わされたが、この日のレイナの試技は大学の研究者に『魔法』が存在して、それに様々な可能性があることを実感させた。その後、その試技に参加した研究者は周りを巻き込みながら、魔法とその関連技術の研究にのめり込んでいった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  間島社長がその人脈を使ってとても現実的な対応をしているのは理解できますが、その人脈で動員された人たちが一部懐疑的な人もいるにしろ、大多数が素直に魔法や異世界人の存在を信じるというのが非現実…
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