2-5 レイナという魔法士
読んで頂いてありがとうございます。
誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
私はレイナ。カルチャル伯爵家の長女となる令嬢です。父伯爵のチャール、母マリアヌから生まれた15歳です。兄1人、弟1人、妹2人の5人兄弟妹ですから、男女に係わらず長子が爵位を相続するわが国では兄がいるので後継ぎは問題ありません。
ちなみに、日本にきて地球と私の母星である惑星カガルーズと様々な比較をしました。私の国では全く意識していなかったのですが、重力は主観ですけど殆ど同じのようです。一日の時間は持って来た時間を測る道具によると、こちらの24時間に対して、24.5時間程度ですから、同じと言って良いと思います。
でも1年間は地球の365日と6時間に対して、452日と10時間です。だから、こちらに来て16歳になった私の年齢は、1.26倍することになりますから地球時間の20歳であるということです。日本では成年ですね。魔法少女と言われた私は恥ずかしいですわ。
とは言え、わたしの国では18歳が成人なので、私は未成年ということになります。でも、貴族は5歳から教育を始めて、15歳以上18歳までは王立学園で教育をします。でも私の場合には、魔法の才が見だされて、8歳で魔法学園に入学して厳しく教育を受けました。
50人ほど生徒がいる魔法学校でも、私は10歳になってからは魔力と魔力操作で飛び抜けていましたので成績はトップであったと思います。特に得意な雷の魔法は、軍事面で有用性が高いため重視されますが、使えるものが少ないのです。だから、私の魔法は威力も高いため高く評価されています。
ところで、私共の世界には魔物が多く、特に各国を縁取る大森林には魔物が多く住んでいて、度々人々が耕作する農地や村に溢れ出ます。それほど強力な魔物は少ないので、大抵は農民兵が退治するのですが、まれに魔法士が呼ばれる位の強力な魔物がでます。
このレベルの魔物は、魔法士でも風の刃程度では跳ね返すので、強力な火魔法または槍に風の魔法で加速して退治するか、あるいは雷の魔法より退治します。今のところ、インドレラという全長が10mで火を吐く最も強力な魔物については唯一雷の魔法のみが退治できます。
中でも私は一発でインドレラを退治できますので、年間に5回ほどは呼び出されて魔物退治に赴きます。その場合は遠いと100㎞以上移動することになりますが、念話で緊急連絡があって、それに応じて飛行魔法で100㎞ほどであれば1時間もあれば移動できます。
でもそのお陰で、私が13歳の時に隣国のリンドル王国との戦争に駆り出されることになりました。リンドル王国は我がイスカルイ王国の人口8百万人に対し、6百万人と言われており度々争いをしています。この年は、雨が少なかったのです。
イスカルイ王国では川から農家が懸命に水を汲んだ結果、少し小麦の実りが悪い程度だったのです、ですが、大きな川の少ないリンドルでは旱魃が酷かったらしく、食料目当ての侵攻でした。過去には、略奪されたこともあったので、それに味をしめたということです。
ですが、今のイスカルイ王国は魔法師団が充実しています。中でも魔法師団を含めても私の雷の魔法は別格であったようで、学生の身で参戦しました。リンドル王国からの軍は1万人ほどでしたが、私も加わった魔法師団が兵に守られて突出して、集中攻撃をしました。
ファイアポール、風の刃、爆裂、雷などが乱れ飛び、整然と攻め寄せてきたリンドル軍はすぐさま崩壊して逃げ帰りました。その時私の放った3発の雷魔法は、とりわけ威力が大きく、密集した兵の中で炸裂したので、多分千人以上は殺したと思います。
後に、周りの兵士が私を恐怖の目でみた顔が忘れられません。
その後、私は学園に帰っても、自分の雷で真っ黒こげになり、また目が白くなって死んでいった多くの兵が目に浮かび、暫くはなかなか寝付くことはできませんでした。それでも、だんだんそのような思いは薄れていきましたが、その後は学園で魔法の研究に励み、それが日本への転移に繋がったのです。
ところで、カルチャル伯爵家は、イスカルイ王国では公爵2家、侯爵8家、伯爵12家、子爵22家、男爵80家の中の伯爵家の中堅というところです。領土は、王都イスカルより60㎞ほど離れた所にあり、面積は1200㎢、人口は10万人程度です。
人口については、数年に一度調べてはいますがかなりいい加減です。領土に低い山はありますが、大体は平原で川も流れており、産業は農業が主になっています。農民は年貢で5割の産物を領主のわが伯爵家に収め、伯爵家は王国へ1割に当たる金銭を収めます。
だから、私たちは平民に比べると、豊かな生活をしていますが、贅沢をするほどのことはありません。日本で間島様のお宅に居候をしている私は、イスカルイ王国の生活の何倍もの豊かな生活をしています。
便利で住みよい家、はるかに美味しくて種類の多い食事、いつでも入れる風呂、暑さ寒さ知らずのエアコン、極めて安くて優れた縫製の様々な生地の服に履物と大きな格差があります。
そしてなにより家に溢れる家電です。各部屋にあってスイッチを入れるのみの照明、掃除機、炊飯器、換気扇、エアコン、洗濯機・乾燥機、テレビ、オーディオなどは、貴族だった私には余り実感はないものもありますが、生活を快適にできるものです。
また、外に出るともっと驚くべきもので溢れています。まず乗用車は殆どの家庭が持っていて、数十㎞の距離を普通に移動できます。また、電車やバスに大量の荷物を運ぶトラックがあります。私も沖縄と北海道に連れて行ってもらいましたが、飛行機は多数の人を載せて私の飛行魔法の何倍もの速度で飛べます。
飛行魔法を私は使えますが、王国でも使えるものは10人ほどです。だから、庶民にとっては大変良い世界だと思います。間島様は豊かな家で私はその恩恵に預かっていますが、大学で普通の家の方ともいろいろ話を聞き、家やアパートも訪問しました。
その結果を比べると、イスカルイ王国の平民の家はあばら家で、中には何も無いに等しいです。一方で、こちらは、家の作りには差があっても家電などは間島様の家と殆ど変わらない設備です。そして、生活もそれほど経済力によって差のあるものではないと思います。
私が、日本の生活でなにより素晴らしいと思うのは、テレビとコンピュータにスマホです。そして今やスマホにその3つの機能が集中されようとしています。これらによって、人は世界のことをリアルタイムで知ることができます。
さらに、私のその機能を有効に使わせて頂いていますが、これ等の機器を使ってあらゆる知識を瞬時に知ることができます。私は記憶力強化のお陰で、日本語と英語はすでに不自由なく使えますので、主としてパソコンを使って日本や世界のこと、さらに様々な事項を学んでいます。
そして、学ぶほどに、膨大な数の人々によって築きあげられた文明を、私ごときが理解しきれるものでないことは実感しました。しかし、すでに学んだことだけでも、原始的と言わざるを得ない段階のイスカルイ王国並びにその周辺の国々を少なくとも衣食住に関して、貧しさから抜け出すだけのことは出来ると思っています。
また豊かになるのがイスカルイ王国のみであってはならないということは地球の歴史から学びました。
ところで、魔法について、私は理解しているつもりでしたが、その自信は粉々になりました。日本に来て、N大学の先生方や研究者が、私の使う魔法について様々に調べておられました、ですが、なにか特筆することが解るとは思っていませんでした。
そして、日本人に魔力器官はないことはすぐに分りましたから、彼らが魔法を使えるようになるとも思っていませんでした。それで、大学の皆さんが魔道具に興味を示したのを知って、正解ではあるけど難しいと思っていました。それは、結局魔道具が魔力無しには使えないのですから。
また、魔道具を作ることも高度な職人技です。あの細かい魔方陣を金属板に刻みこむのは、滅多な人にはできませんし、私も学びはしましたが苦手でした。さらに、魔方陣の古代語を使いこなすのは長い時間がかかります。しかし、大学の人はコンピュータの言語で機能を再現しました。
そうなると、彼らは『このような魔法』ということを理解すれば、自分で魔法陣を書けるようなりました。それもCADというソフトウェアで、コンピュータ上に書いてしまうのです。それが書ければ自由に印刷できますので、印刷したものを金属板にいわば刻むエッチングという技術で、あっという間に魔方陣の出来上がりです。
また、『魔力』についての解決法も驚かされました。大学にある様々な分析機器で私の魔力を一種の波として捉え、それを特定したのです。そして、大学の研究者はその再現に取り組み、ものの数ヶ月で電力を使って魔力を発生する装置を作ってしまいました。
供給できる電力を増すと発生する魔力は大きくなりますから、王国で最大と言われた私の魔力を上回る魔力も発生できる訳です。最初の魔力発生器は私の魔力の強さを1.0としていますけど、複雑な気持ちです。今はまだ魔力の測定はできないのですが、多分その測定器もできるでしょう。
さて、魔道具は簡単に作れるようになった。さらに魔力発生器は出来た。そうなると、魔道具を試しに作って機能の試験が簡単にできるようになるのです。最初に実用化されたのは治癒の魔道具であり、これは私が持って来たオリジナルのものです。
しかし、私の魔法から雷の魔道具を作り、さらに様々な試作の上で、金属の銅から電力を取り出す魔道具を作り上げたのにはまた驚かせられました。これがどれほど重要かは、日本社会についてある程度学んだ私にも分ります。そして、その魔道具が日本のみならず世界を驚かせ、動かしているようです。




