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異世界令嬢、日本に現れ大活躍!  作者: 黄昏人
第2章 魔道具の開発と普及
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2-1 魔道具の実用化促進

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 空間収納の研究はレイナが持っていた小さな収納袋から始まった。それは布の袋に縫い付けられた径10㎝ほどの丸い銅板に複雑な魔方陣が刻んでいる。銅板には下部に突起があって小さな魔石が嵌めこまれていてそれが魔力の供給源になっている。


 魔石は、魔力で一杯の時は濃紺で、だんだん色が薄くなるというように貯えられた魔力で色が変わる。魔石が空になると、異次元空間が閉じて入れていたものが零れる。魔石の取り換えの時には、一旦中のものを出しておくか、または魔石の代わりに人が魔力を注ぎながら交換する。


 レイナの持って来た魔法陣はすでに彼女の協力で読み取って、CAD化も出来ており、銅板へのエッチングも出来ている。だから、日本で作った収納袋は、レイナの魔力によって機能することは確認しているし、無論Mラジエターでも機能することも確認している。


 尚、空間収納庫の実用化はメカトロニクス学科の南沙耶准教授が担当しており、理論解析を物理学科の佐知香澄准教授が担当している。そして、レイナの世話役の皆川みずほは、主として空間収納の研究を行っている。現在の彼等の研究は、収納容量を大きくしようとしているところだ。


 単純には魔方陣を変えることなく、50ℓほどのレイナの収納袋から、すでにMラジエターの出力1.0で3㎥の容量があることが確認されている。しかし、Mラジエターを使う必要がある3㎡の空間収納袋が何の役に立つかである。やはり、魔石無くして空間収納庫は意味が薄い。


 だから、魔石の復元は冶金科の遠海准教授のチームでやっているが、現状では実現の目途が立たず苦戦している模様だ。なお、空間収納を行うと別次元の空間にものが貯留されるので重量は無くなるが、時間はちゃんと経過する。現状では電源が必要だが、重量がない条件で価値のある使い方が必要である。


 そこで、例えば爆撃機の爆弾やミサイル庫に使えるのではないかと、間島コーポレーションから自衛隊に話がいって、航空自衛隊が興味を示している。特に文系の大学の先生は左巻が多いため、軍事に関係ある研究をしているとすぐに非難の的になる。

 だから、大学の先生は自衛隊とは積極的に交流しようとしない。そこで間島コーポレーションから南を説得して自衛隊を引っ張りこんだが特に南に否やはないようだ。


 佐知准教授は空間収納の理論解析をやっているが、そのサブに博士課程1年の片山慎太郎がついている。彼は、南が空間収納の理論解析をすると聞いて是非と立候補した院生であるが、変り者ではあるものの最優秀と言われている。


「佐知先生、空間収納って異次元空間の利用でしょう。だから、空間転移も必ずできると思うのですよね。ぜひ一緒にやらしてください」

 片山はそう言って一緒に研究することを申し入れてきたのだ。


 彼等は、レイナからの空間収納袋の魔方陣の解説により空間収納の魔方陣の意味を学び取った。そして、片山はプログラミング言語で簡単にCAD化した。片山については、間島会長が研究室を訪問した時、研究のためにMラジエターは必要と口説いて、南の研究室と共に提供を了解させている。


 これで魔方陣の駆動が可能になるので、プログラミング言語を少しずついじって、その魔方陣をエッチングして各々の効果を確認している。なお、工学部には潤沢に銅板が用意され、エッチングは半自動化されているので、院生が自由に魔方陣を作れるようになっている。これは、間島コーポレーションからの提供である。


 結果として、主として片山の研究の一環で標準出力のMラジエター(レイナの魔力程度の出力)で1,000㎡余の容量の空間収納庫を作り上げた。しかし、これは容易に大量のものを隠して運べると言う点で犯罪に使われ易い危険なものである。そういう意味では、自衛隊という軍に話を持ち込んだのは正解であったかもしれない。


 一方で、佐知と片山のコンビは相変わらず理論立ては進んでいないが、1日1魔方陣の起動という頻度の試行を続けこの条件ではこうなるという現象面の整理はすすんできた。彼等の励みになっているのは、その昔、空間ゲートというものがあったというレイナの証言である。


 試行の中で、彼らは空間収納庫の中に収納する外の荷の位置を、100m以内で選べるようになった。次に、収納したものを指定して100m以内の任意の外に出す位置を選べるようになった。後者は、例えば収納庫のミサイルを任意のランチャーにセットできることになる。


 このことは、戦闘爆撃機F2に空間収納庫を積めば、1,000㎥ものミサイル庫からミサイルを多分300発程度は連射できる。怖いよね。護衛艦でも一緒であるが、移動速度が大幅に速いジェット機の方が効果はずっと高い。これを説明すると、航空自衛隊の幹部が興奮し、すぐさま空間収納庫100組の注文があった。


 しかし、空間ゲートを目指す片山にとっては、このあたりは次のステップへの単なる足がかりである。そして、漸く空間ゲートが出来たのは、治癒の魔道具の狂騒曲が終わり、難病を短時間に治すことの出来る魔道具があるということが普通になった頃であった。


 そして空間ゲートも、なかなか保安上微妙な魔道具であり、すでに自衛隊の監視下に入っていた彼らの研究は公表することは止められた。ところで、片山の指導教官の佐知は、試験は片山に任せてもっぱら理論解析をやっていた。彼女の研究は1年以上かけて完成し、学会に発表してセンセーションを巻き起こした。


 そして、この片山が実施した手法は、レイナが使える魔法を魔道具化されるのに応用された。元々レイナが持っていた魔道具は、灯り、給水、治癒にこれらを入れていた収納である。灯りの魔道具は研究対象としては作られたが、実用化はされなかった。


 給水の魔道具は、同様に作られたが水道のある日本では余り意味がないので、水中から溶解分の分離の機能を取り出すべく衛生工学科で研究されている。現在では、片山手法で様々に魔方陣を改変して試行しており、すでに水中の有害物質の除去に成功しているが、本命は海水の淡水化である。


 レイナは自分の使う魔法を、魔方陣化する方法を知っていた。つまり魔法を使う際には、使う当人が魔法の励起のイメージを頭に浮かべ、キーワードを口に出して言うことで、一瞬魔法励起のための魔方陣が浮かぶのだ。だから、忘れていても当該魔法を使うことで、魔方陣を思い出す。


 逆に言えば、自分が使えない魔法の魔道具、例えば治癒の魔法具は魔力のみを注ぐことで使える。香川教授が注目したのは雷の魔法である。レイナは、雷の魔法を使うときは銅の棒が必要であると言う。彼女が使う魔法の内で、攻撃手段として最も強力なのはこの雷らしい。


 香川は、間島に借りて貰った砕石所跡の500m四方ほどの荒れ地で、レイナに何度も雷の魔法を使ってもらった。当然間島も一緒である。それを映像、音声、温度、放射線、空電、地面の電流値などを綿密に記録に取る。

「雷の魔法なんか役にたたんだろう?」


 怪訝そうな間島の問いに香川は応えた。

「いや、彼女の雷は時間が長い。そもそも雷は1億ボルトで1万アンペア位だ。しかし、自然の雷は2~3秒の持続時間だ。だけど、レイナのものは10秒を超えている。これは結構な電力だよ。自然の雷は膨大な空気の摩擦による生じる電力だ。レイナの場合に、そのエネルギーはどこから来るかと思ってね」


 その後、大学で私は雷の魔法について、レイナ嬢に解説してもらい。その魔法具を電気工学科の宮島助手に作ってもらった。彼はテーマに恵まれず博士号を取れていなかったが、今魔方陣のプログラミング化で博士論文を書いている。これは問題なく取れるだろうし、それで准教授にはすぐなれるはずだ。


 それに魔方陣は権利化するので、彼にも相当な権利料が入るだろう。助手の給料は安いし、今まで苦労してきたけど、今後良くなるといいと思っている。

「宮島君、僕はね。この雷の魔道具については大きな可能性を感じているんだ。それこそ、治癒の魔道具以上のね」

「え!雷の魔道具にですか?」


「ああ、まず雷の魔法には銅の棒を持っていなくちゃならない。そして、この魔方陣のこの部分、棒から雷を引き出すとあるよね。それに、この棒は金属だ。だから、僕は銅の棒から電力を引き出しているんじゃないかと思う。化学的に出力する電力では到底雷にならない。

 だから、原子エネルギーじゃないかと思っている。それで、片山方式って言われているけど、魔方陣をどんどん作っていって銅のシリンダーから電力が取り出せないか確かめてみたい。」


「うーん。でもそれが本当にできたら凄いことになりませんか?」

「ああ、成功したら凄いよ。とは言えレイナ君も知らないことだから、解らないけどね。でもね、僕は勘がいいんだ。今回は当たるような気がして、ドキドキしている。付き合わないか?」

「ええ、勿論。もう主任教授にもOKは貰っていますから、当然です。僕もドキドキしたいです」


 香川教授は助手に院生の博士課程1年の山名かえで使い、宮島に付きっ切りで毎日の試行に同行した。確かに香川教授の勘は良いようで、彼の方針に従っていくうち、雷のような空電でなく電力を取り出せるようになり、瞬間でなく連続で取り出せるようになってきた。


 それは片山方式を始めて12日目であった。

「あ、電力が出ています。340ボルトで12アンペア」

 山名が突然言った。


 それは、魔方陣に接続した径20㎜長さ1mの銅の棒から、電圧・電流計を付けた電線が、横に置いたドラム缶に伸びている。ドラム缶には塩水を張っている。つまり電力が発生してもドラム缶の水に消費されるのだ。山名は電圧・電流計を呆然と見ている。


 香川は慌てて見に行って叫んだ。

「おお、成功だ!電力を発生している。入力は最低の0.2だから160Wだ。出力は4080Wだから、入力より大幅に大きい出力だ」

 Mラジエターを操作していた宮島も駆け寄ってくる。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  雷の魔法を使って、例によって銅から電力を得る展開になりましたね。ワンパターンですが、それが良いです。磨かれています。正直魔法で再現されるとは思っていませんでした。  話は変わって、もしも…
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