翼を食す
翼を食す話です。
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
048.葬送
親戚から譲り受けた翼をもつ妖精を飼っていた。可愛らしい見た目をしていたが、長く生きている個体で、寿命が近いことを知っていたらしい。しきりに、死んだら鳥葬にしてくれと話す。
「どうしてそんなことを言うんだい」
「翼は翼に返さなくてはならないからよ」
だから、変な気は起こさずに、私を木に吊るしてねと言った。
変な気を起こさずに……、というのは、私が生来の悪食だからだろう。小さいものは蚯蚓から、大きいものは空を駆ける烏賊の脚まで。特区で食べられるものはあらかた食べた。
もちろん、妖精も何度か口にしているし、それをこの妖精も見たことがあるのだった。
そう固く申し付けられていたものの、きっと私はこの翼をもつ妖精を食べるだろうな、とぼんやり予想をしていたのだった。味が気になるのもそうだが、何より食べることは私なりの葬送なのである。
食べることで私の記憶に残す。それを憶えていて、後世に伝えることが対象を未来へと連れていくことだと自負している。
他人からは理解されない自論だとは思う。しかし、私は自分の考えが正しいことだと信じているのだ。それは他人に曲げられるようなことではない。
妖精はその論を聞いて否定も肯定もしなかった。ただ、とにかく、私の事は空に返して欲しい。それが貴方の為であると懇々と説いた。
ある秋の日、それは突然訪れた。私はテーブルの上で倒れて息絶えている翼の妖精を発見したのだった。
この数年、一緒に暮らし、共に笑いあった同居人がいなくなったことに喪失感があった。――やはりこの喪失感を埋めるのは食べることでしか満たされない。
私は、翼の妖精と共にあることを決めたのだった。
***
妖精が忠告した意味はすぐに分かった。翼に返されなかった翼は私の中で空を求めて暴走し始めたのだ。
背中の筋肉を引きちぎられるようにして、骨を力づくで変形させるようにして私の背中には歪な羽が音を立てて生えている。肌はブツブツとした灰色の外皮に覆われ、そこから美しいとは言えない羽毛がまだらに生えた。身体の中はどうなっているかわからない。しかし、異変が起こっているのはわかった。私は緑色の中に血の混じった粘液をしきりに吐きだしては目を剥いて昏倒しているのだから。
翼の呪いが私を変態させて、無理やりにと空に返そうとしているのだった。
窓の外には無数の鳥類が待ち構えている。日に日に増していくその多くのくちばしが窓を破るのは時間の問題だろう。
いつか近いうちに、私は葬送されるだろう。
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