鍵屋のはなし
色々なカギが売っている鍵屋の話です。
R18に至らないグロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
044.鍵
「鍵が欲しいんだけど、合うもの探してくれるかい?」
「条件は」
ある露店の主に話しかけた者がいる。それが胸ポケットから何か取り出すのを待たずに、店主はいくつかの鍵を奥から出した。
「念のため提示しておこうか」
「西地区警備署は律儀だねぇ」
客が差し出したのは警備員手帳である。この署員はある事件を解く鍵を求めて、この鍵屋を訪れていたのだった。
「――さて、これはどうかね。あんたが思った通りの結末に導く鍵」
鍵屋の店主は手元の引き出しから三本鍵を選んで署員に見せた。
「狙ってる人間が犯人だったらいいのになあ、だけで犯人とは決めつけられないよ、親父さん。俺が今睨んでる奴が絶対犯人だと思っているにしてもね。なるほど、商売上手だよ」
「事件の解決は早い方が良いんじゃないのかね。その分、街も安心だ……。じゃあ、これはどうだい。どんなドアでも開く鍵。これは、署員さんの捜査の手助けになるだろうよ」
「これは便利だから一本貰っておこうか。今回はもう開く必要のある扉はなさそうだが、万が一という事もあるのでね。……何度も使えるかい?」
「鍵は一度嵌ってしまえばそれきりさ。欲しければまた買いにくればいい。――それならば、この鍵だ。犯人の堅い口を割る鍵」
老店主が最後の一本を差し出す。
「おお、それを貰おう。なるほど、この鍵ならば犯人も簡単に罪を告白してくれそうだ。腹を割って話せ、という事か。あんた、本当にいい仕事をするなあ。これを貰おう。ありがとう!」
「警備署員さんじゃなきゃあ、こんな物騒なものは出さないさ。使わないことを願うがね。まいど」
***
事件の犯人は既に捕らえられて、保護室にいる。かれこれ一週間、だんまりを決め込んだ女は盗んだコレクション達の行方を口にしない。盗まれたのは生き物で、そろそろ事件を片付けなければ命の危険に晒されていた。
「君の口を割らせるのにいいものを持ってきたんだ。痛いのは嫌だろう?」
警備署員の手には切っ先が鈍く光る鉤状の棒だった。
「拷問でもかける気かい?」
「まさか。でも、君の腹の中身は見せて貰うことになるだろうよ」
署員は捕縛人の服を寛げると、その臍のあたりに鍵屋から得た鉤を引っ掻けた。皮膚を貫いたように見えるそれを引けば、皮膚が伸び、その伸び切った先端から薄い赤色の腸がするすると現れる。
身体を固まらせた女はその腹を撫でる感触に思わず身を捩った。擽ったい。臍を通って這い出てくる内臓が腹をなぞれば今まで感じたことのない生理的な笑いがこみ上げてきたのだった。
保護室に笑いがけたたましく響く。普段、触られることのない場所を撫でられると存外、予想以上の反応をしてしまうものである。
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