再生パウダー
なんでも元通りにする、再生パウダーの話です。
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
028.象徴
特区一の発明品と言えば再生パウダーだろう。
十年前、とある小規模発明所で開発されたその品は、有用性がわかると瞬く間に特区全域へと知れ渡った。
肉体の欠損はもちろんである。モンスターに捕食され消えた人間の耳程度でも残っていれば、あるいは怪異に呑みこまれた人間の下半身でも残って入れば、傷口に振りかけ元の肉体をほぼ取り戻すことができる魔法の粉だ。
欠点は一つある。再生パウダーは消えた肉体の質量を取り戻すだけで、その性質自体は秩序がない組織や臓器の混合物である。そのため、身体の大部分を再生した場合は形成手術を受ける必要があるのだが、消失に比較すれば微々たる手間だった。
それ以外の副作用は今のところ報告されていない。発明当初からパウダーを構成する物質の正体について議論がなされてきたが、つい先日、生成タンパク質に時間遡及効果を添加したものだと公表された。
多くの住人の命を救う再生パウダーだが、反自治組織によって悪用されることも多々見受けられる。
自身の存在を消さんと自滅を図り、再生パウダーを使って新しい人間に生まれ変わるというものだ。形成を上手く使えば、他人に成り代わることも可能。凶悪事件で終われている暴漢が自治会警備署の前で上手く逃げおおせることも可能なのである。警備署は対策として、自滅現場ではタンパク質に反応する色素の散布を導入しているようだ。
そして、今では、再生パウダーを精神の欠損についても応用することが進められている。
この粉には生成タンパク質の代わりに非使用者の記憶と情動活性化物質が使用される予定だ。
怪異に取り込まれて人格の半分を失った者や複数の人間の心が融合させられそれをサルベージした際に欠損した精神に再生パウダーを取り込ませて、思考の活発化を図り、感情再生を促進させるのが目標となる。
特区を象徴する発明の中で、ますます期待を寄せられている。




