巨大キノコの怪
天まで届く不思議な菌の話です。
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
015.柱
巨大なキノコが空へと伸びていた。
最初は石畳の隙間から生えていた小さな傘を持つ菌は瞬く間に成長し、にょきにょきと音を立て、地を割りながら天空へと伸びていく。
菌傘は空を覆うようにして広がり、太陽の光線を遮って夏の暑さを和らげている。
犯人は植えたら伸びると思って、と道にキノコを立てた子供たちである。道草の脇に佇んでいた菌類はあっという間に天を支える柱になった。
しかし、胞子を飛ばされては厄介である。
自治会は週末にもこのキノコを伐採処分する手筈を整えた。
夏休みの自由研究としてこの柱を提出しようとしていた子供たちはがっくりと肩を落とす。
その噂を聞いてか聞かずか、そのキノコを食した者がいる。子供たちが商店街から買った、食用キノコである。食べられないわけがない、と。
誰かが齧り、賞味することができるとわかると、途端に自治会は方針転換をした。すなわち、伐採処理ではなく伐採収穫。切って販売することとしたのだ。
当日。
柱を切り倒す準備をしている自治会警備署の職員。それに指示をする自治会員。見守る住人たち――鍋を準備している商店街の飲食店。ざるを用意して待つ八百屋の親父と仕入れたものを購入したい主婦。この菌類が大きく育った要因を研究したい博士、そしてこの大捕り物の原因となった子供たち――が準備をして住人が空を見上げながらその時を待っていた。
今にも幹に刃が入れられるその時、地面が揺れた。石畳に沿って地割れが起こり、柱がぬきっと自分の足を引き抜いた。
大きなキノコ柱に足が二本。それから身体を支える根のような細い触手。
おののく住人をよそに、のしのしと北の方へと歩いて行き、壁をよじ登ってどこかへと行ってしまった。
残されたのはキノコを食べ損ねた住人。
齧った住人は美味だったと話す。
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コミケ新刊を書き書きしながらになりますが、ゆっくり更新再開したいなと思います☺




