水質汚染
人魚の成分が混ざるお話です。
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
082.浄化
水質汚染の報告が入り、自治会環境整備課が浄水施設へと調査に入った。北地区近くに構えられている、大規模ろ過システムにはいくつも重ねられた物理フィルター。その後には、呪いや怪異に対するに対する解除網が張られている。
その呪術解除網に人魚の肉が分解されたと思われる変容呪術が引っ掛かっていた。遡って物理フィルターを調べてみれば、身体の一部が付着している。肉片はまだ新しく、周囲を捜索すると人魚の死体とその子と思われる稚魚が隙間に隠れて生息しているのが発見された。
人魚は特区の居住地区には存在せず、どこから浄水施設に入りこんだのかは不明である。
普通、人魚の肉は人やモンスターの体内に入った段階でその呪いの効力が失われると言われており、浄水装置に人魚の肉の混ざった排泄物などが入りこんでも問題はないとされている。
しかし、今回の一件は装置に人魚の肉そのものが混入したというもの。果たして呪いが浄水施設で適切に処理されたのか、あるいは呪いが上水に流れ込んでしまったのか。水は汚染されていたのか。そうであれば、その水をどれだけの人間が使用したのか。
飲んだ者は人魚の身体の一部を身体の中に取り入れたことになるだろう。その結果、特区に引き起こされる事象は未知数である。
住人だけではない。この街には人でない怪異や化け物も済んでいる。その生き物たちにも人魚の肉の呪いがかかっているかもしれないのだ。
真実は住人には十分には伝わらない。事故後処理として、各地区の住人に下剤と解除剤が配布され、簡単な水質汚染として報告がなされた。
今後、コホート調査がなされる予定である。……調査は長引きそうだ。
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