脳から直接の悲喜劇
夢の自動筆記システムのお話です。
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
031.記
脳直筆記システムが普及してしばらく経つ。街のある科学者が自身の願望を反映させた世紀の発明品だ。
電極をいくつか脳内に差し込み、頭で考えていることをそのままの形で記述してくれる。最新のシステムだった。
最初はひらがなだけだった自動筆記システムの表現方法は、そのうち漢字やアルファベットも使用可能になった。その後は、自動的に文章を書くことだけに飽き足らず、機能を拡張させて、楽譜や絵も自動で記すことが可能になる。頭でメロディーを奏でたり、絵を思い描くことによってそのままの形で表現をすることができるようになったのだ。
従来、自分の中で限界があったアイデアの表出をそのまま表現できるとあって、街の人間からは大絶賛された……のだが。
この脳直筆記システムには欠点があった。それは、筆記を自分の手で行わなければいけない事だ。
脳の思考は止まることを知らない。その流れるようなアイデアを、間もあけずに自分の手が流していく。あらゆる考えを紙に記す。
例え、その手の皮膚が紙によって擦り切れ、関節が壊れ、手首が取れることになっても休むことなく記述は続く。
脳に直接電極を指していることから、乱暴にシステムを強制終了することもできない。
何人もの住人が病院贈りになったそうである。




