グルメレポート
特区で食べることができる不思議なご飯のお話です。
前半はほのぼのに猫吸い、後半は人を選ぶグロテスクな描写があります。
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
003.楽園
食通にとって特区は食の楽園だった。ドリアンやバラムツなんて目ではない。もっと多彩で危険な食材を使った料理を口にできるのである。
外にはない変わった食べ物を目的にやって来る観光客も少なくはない。食べるコンクリート、飲むうさぎ、モンスターの刺身、怪異の薄皮せんべい……、すべて特区で食べることができる珍味である。もちろん、食べてはいけない物も金を払えば食することが可能だ。
一番良い体験だったのは猫吸いだった。一般には猫吸いは飼い猫の体臭を吸って可愛がり、猫欲を満たす好意であるが、特区ではその意味が違う。
猫吸いはまず猫の形をした瓶で出てくる。その中には猫を模して造られた液体が入っており、これから起こることなど想像もしないかのような顔をしてこちらを見上げているのだ。それを一気に吸う。
途端、身体は猫になっている。これが小一時間続き、猫として活動をすることができるのであった。体験中は何をしても自由。一時間すれば代謝されて身体は元の人間に戻る。
原材料はアルバイトの猫から採取された毛の記憶を煎じた薬品らしい。料金は高いが、バイト猫の給金になるほか、一部は特区猫の保護に使用されている。
猫吸いの良質な体験のほかにもリピートしてしまう理由である。
一番嫌な体験は人間がそのまま挟まった巻物屋に行ったことだろうか。
東地区の半ば、怪しい店が出現し始めるあたりにその屋台はあった。クレープ、北京ダック、餃子などの皮ものを売るその店の主な食材は小さく呪われた生きたままの人間。
踊り食いが名物であるこの店の店主も人間だったが、この皮に巻かれる人間は特区内でも許されざる行為を働いた者や反自治勢力から裏切り者として売られた人間を使用しているのだと語った。
人間が叫びながらこちらを見ている。その血走った一つ一つの目が飛び出ているのが印象的だった。
さすがに食べられなかった。




