姉妹旅行
私も一緒に、妹と同じ場所に連れていかれるのだと思った。
どのお話からでも読める一話完結掌編です。
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
079.祈願
十年ぶりに、妹から電話がかかってきて、どうしても付いてきてほしい旅行があると懇願された。
まあ、懇願されたというのは大げさな表現で、だけども、子供の頃と変わらない「一生のお願い」という表現で思わず笑ってしまい、私は妹との旅行にオッケーを出してしまったのだった。
訳は聞かなかった。なんで急にとか、十年間連絡も寄越さなかったのにとか。そんなことを聞けばこの旅行はご破算になってしまう気がした。
妹が死んだのは十年前の夏の終わりで、祭りの最中で、死んだと言っても遺体は見つからず、特区内では神隠しで片づけられた事件だった。
『一緒に行こう? とにかく、家から離れてゆっくりしようよ。お姉ちゃんも仕事が忙しいでしょ? たまには休んだ方が良いよ。私が旅費全部だすからさ』
旅行の当日、待ち合わせのバス停で妹は消えた時と同じ姿でそこにいた。
「来てくれてありがと」
「ひさしぶり。元気そうでよかったよ」
***
バスの中には私たちの他にも客がいる。近所で死んだおばさん。一つ目の足の裏。霞のような白い影。
私も一緒に、妹と同じ場所に連れていかれるのだと思った。あるいは、私は知らないうちに死んでいて、妹が迎えに来てくれたのかもしれない。
まあいいか。身内に連れていかれるならあんまり怖くないし。
ツアーは妹曰く、霊験あらたかなパワースポットだった。この世からこれから消えるのにも関わらず、呑気な行き先である。
旅館で一泊して、次の日霊験あらたかな山に登る。冷たい霧が身体を包み、自分の身体が空気と一体化していく感覚があった。ここが終着なのだろう。
大きな御神体がある。参拝客が皆、祈りを捧げていた。それに倣って、手を合わせ……、頼んだことは死んでも妹と仲良くいられますように。
二人で同じ道を妹と帰る。異界に連れていかれるのではなかったか。この旅の目的は本当に養生だったのだろうか。
妹に何を祈ったか聞くと、私の安全祈願をしたと言った。
不思議な旅行からアパートまで帰ってみれば、住んでいた建物は無くなっていた。モンスターに壊されて、生き残った人は誰もいなかったという。仕事場も怪異によって半分が異空間に飲み込まれていた。通っていた洋裁教室は教師が多重殺人で確保されたらしい。
安全祈願が成就したらしい。茫然としつつ、隣にいた妹を振り向いた時、もうそこには誰もいなかった。
ただ、妹とお揃いで狩ったお土産のお守りだけが残されていた。
読んでいただきありがとうございます☺
読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!
もしよければ評価を頂けるととても嬉しいです。
各種リアルイベント、WEBイベントに参加しています。参加情報については、活動報告に掲載中です☺




