モンスターが生まれるまで
中の黒いものがうねうねと動く。
【マニブス・パルビスシリーズとは】
どのお話からでも読める一話完結掌編です
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
062. 飛び立つ
透明な膜の中に、無数の黒い球が浮いている。細長い形をした滑る膜は絡まって塊状になり、通りに鎮座していた。
時折、中の黒いものがうねうねと動く。球が中でうねると外側は蠕動運動をしているかのように波打った。
夏になると現れるモンスターの卵である。生まれる前から成体になるまでの過程で人間に危害を加えることはない。
むしろ、動かない貴重なタンパク源を狩っていく人間の方が多かった。無数の黒球は透明な管の中で浮いている。その表面に切り込みを入れ、中の玉を取っていくのである。無数にあるうちのいくらかを盗んでも、卵は減ることがなかった。
気温が上がってくると、黒い卵を割って、奇妙な骨の連なりが生まれる。胴体と思われる甲羅状の物に着いた爪のある長い腕、何かを掴むことが出来そうな指が複数ある短い脚。顔にあたる部分には眼窩が一つ空いている。
その奇妙な形をした身体が透明の膜の外からよく見える。全ての球体からその生き物の骨格がはみ出し、そのうちに黒い卵の殻はどこかに吸収されたように消えてしまっていた。
卵を守っていた膜は干からびている。透明だったものはくしゃくしゃと縮み、やがて中の骨を覆っていく。
やがて、無数に連なった鳥になり、繋がったままどこかに飛び去って行った。
読んでいただきありがとうございます☺
読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!
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