怪奇植物園
食人草以外に怪奇植物園の目玉はあるのか質問した。
【マニブス・パルビスシリーズとは】
どのお話からでも読める一話完結掌編です。
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
018. 庭
怪奇植物園開園時間朝七時。閉園時間夜八時。
「大概の人がすぐやめちゃいますね」
顔だけが日焼けした職員がこめかみに手を当てながら話す。長袖から先の手は白い。ほとんどが外で植物の世話をする仕事である。
上着を脱がないと暑くないのかと聞くと、危険植物が多いから、素肌を晒すのは危ないですよと笑った。
「周りが見えないといけないので頭は透明なヘルメットをかぶっていますけど、見ての通り、防護服です。手袋は場所によって付けたり付けなかったりなんですが……」
食人草があって、あれの世話が厄介で、食べられるのを見た人がみんな辞めちゃうんですよ。まあそうですよね。自分も食べられたくないから。
防護服を着ていても助かるかどうかは五分五分だと職員は語った。
「僕はたまたま運が良かっただけですよ。それで、長く勤めてるものだから慣れてしまって」
食人草以外に怪奇植物園の目玉はあるのか質問する。
「そうですね……。最近、美人の木が寄贈されました。どんな木かと言いますと、毎日毎日、綺麗な女性が生み出される木ですね」
ほら、と指さす先で木の幹から裸の女が浮き上がってきている。美しい裸体だった。男だけではなく女も魅了しそうな、木から彫られた芸術品。それが木から生み出されているのだった。ミステリアスな植物である。確かに、人気になるだろう。
「あれは一応、本物の女なんです。無限に現れてどこかへ消えていきます」
捕まえて、植物園の記念品として販売するようなことは、と少し下世話な提案をした。
「うーん」
飼育員が首を振る。
「人気があっても、美男の木に取られてしまいますからね……」
美人の木の目の前に、同様の男の彫刻が浮き出ている巨木があった。木の皮から美しい男が現れたかと思うと、先ほど生まれ出た女と寄り添ってしまった。二人は手を取り歩いていき、二人でどこかへと消えていく。
人気はあるだろうが、瞬間に幻滅しそうな植物だな、と思った。
「あと、人気があるのは、足が付いている奴らですかね」
インタビューをする吹き抜けの下の温室には、可愛らしい花が付いたモンスターがのんびりと歩いていて、お互いに背中に咲いた花を食べていた。ごつごつとした硬い灰色の皮膚と鮮やかな花弁のコントラスト。大きな方が小さな方に食って掛かられて、喧嘩になっているようだ。
「あれは穏やかでかわいいので子供に人気がありますね」
その後は、問題の食人草の種類や、薬になる植物などの話をし、すっかり閉園の時間になってしまった。
見送りに出てきた職員があいさつをする。すると、男の足から首にかけてがずるずると地面に吸い込まれていった。あっという間に、首から下が土に埋まる。
呪いなんですよと、インタビューのはじめと同じ笑顔を浮かべた。
あの状態ならば、仕事以外でも顔意外に日焼けはしないだろう。
読んでいただきありがとうございます☺
読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!
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