消える日の夜
モンスターの首を見たさに特区が湧きたっていた。
【マニブス・パルビスシリーズとは】
どのお話からでも読める一話完結掌編です。
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
019. 前夜
特区図書館に幻獣の首が展示され始めた。
特区北地区から現れたと思われるモンスターが東地区で行き倒れていると通報があった。怪物は首だけになって転がっており、モンスターの専門家たちが緊急配備されたが、死んでいることが確認された。
その姿の美しさから展示されるに至る。
生憎、特区博物館は改修中で、怪異を保管するだけの設備を持ち合わせていない。そのため、何があっても対応ができそうな図書館で展示をされることになったのであった。
首は宝石で彩られている。皮膚に埋め込まれたような石はキラキラと輝く。皮膚は絹のように滑らかで、そこに金の意図で刺繍がなされたように模様が浮き出ている。鬣も黄金でまるで王冠を頂いているようだった。死んでいるのに、生きているかのような首であった。
この美しいモンスターの首を見たさに特区が湧きたっていた。
***
その首が盗まれる、前夜の話である。
図書館に忍び込んだ反自治会勢力に籍を置く盗賊がひそひそと会話をしていた。
「警報は切ったか?」
「展示ガラスに穴は開いた」
「結界を端から剥がしている」
「重機は必要なさそうだ。手持ちで運んで車に乗せよう」
身体を低くしている男たちの上から覗き込んでいるものがいる。
「この首、動いているぞ!」
「そんなはずはない……ぎゃっ」
「動いた‼」
首を噛みちぎられた仲間を見て、残りの男たちが床に転がる。モンスターの首についた青い瞳がぎらぎらと光り、柔らかい肉に狙いを定める。
首が煌めき、脆い肉体を咀嚼する音が室内に響いた。
***
翌日、首は消えていた。
「もちろん遺失物係で処理してくれますよね⁉ いえ、困ります! 処理してくれないと、図書館の責任になるんです‼」
司書が興奮しながら警備署の署員に詰め寄っている。
「処理はしますけど、盗難事件として扱うのは難しいと思いますよ」
人間の血があたり一面に飛び散っている。入り口に向かって引きずられた跡もあった。
「盗まれたというよりは、逃げて行ったというのが正しいので」
読んでいただきありがとうございます☺
読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!
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