モンスターとお見合い
どのお話からでも読める一話完結掌編です。
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
056.出会い
「六月までには決めなくちゃいけないわけ」
逃せばジューンブライドのキャンペーンに乗れなくなる。そうすれば、来年まで結婚は見合わせだ。
本日もコンサルタントと面談。結婚相手に相応しい相手がいないか、情報チェックを行い、それから今後の婚活パーティーの予定を確認する。
既に事務所からの紹介はし尽くされていて、新たに追加されたメンバーはぱっとしなかった。婚活パーティーにも欠かさず出席していたが、社会の出がらしのような人間ばかりが参加していて、これだ! と思える人間はいなかった。
多少お金はかかってもいい。とにかく、いい相手を見つけなければいけない。まあまあ、と言える人間もふるい落としてきたのである。それ以上の相手を見つけないと話にならなかった。
渡された新しいメンバーの釣書にノーを突き付けた後、コンサルタントが言いづらそうに、その癖勿体ぶった態度であるパーティーについて提案をしてきた。
「あー、そうですね。それでは……、お若い雌肉を探していまして」
人で非ざる者が集まる婚活パーティーだった。
「相手は人間ではないお客様の方が多いのですが。なああ、いえ、もちろん人間の雄のお客様もいらっしゃいます。ただ、まあ、人間以外のお客様の方が多いのは確かです。人間もいます。人間も、もちろん。ただ、このパーティーに関しましては人間の雄のパートナーを狙いに……、いえ、お選びになるのではなく、それ以外のお方のお眼鏡にかなった方がよろしいかと。それも、人型にできるだけ遠いお客様がいいですね。いえいえ、食われに行けと言っているのではありません。特区ですけども。えっ、みなさんちゃんと生きていらっしゃいますよ。まあ、ええ、成立した方で生きてない人もいるわけですが……。いえ、わが社でしっかりリサーチをしておりますので、稀、といったところでして。そうですね、昔から特区にお住まいになっていらして、家柄がしっかりしているお方が多いのです。えっ、家柄なんてあるのか? そうですね。家柄と言いますか、種族と言いますか。最近、出現し始めたどこの馬の骨ともしれないモンスターではなく、昔から特区に存在している由緒正しい指定人外のお客様が多いのです。いや、モンスターだけではありません。人間もいらっしゃいます。あとは、経済面でしょうか。家柄なりの扱いをして頂けると思いますよ。とにかく、お相手に不足はありませんので、ぜひ今回のパーティーにご出席していただきたく……ありがとうございます! では、準備を進めますので、」
冷やかしでの参加には違いがなかった。人外婚活パーティー以外の同時期のイベントには申し込んでいるし、このパーティーには人間も参加しているらしかったから、その中でいい相手を探すのもいいだろう、と思ったのだ。
パーティーは盛況だった。洒落たレストランに入ると一斉にこちらを見てくる(おそらく)男性の参加者たち。
人間の男たちは部屋の隅で縮こまっており、なんともちっぽけに見えた。女性の参加者もいたが、モンスターに囲まれて口から泡を吹いて倒れている者もいる。
こんにちは(という類の挨拶だろうか)、と人外の魔物が集まって来て声をかけてきた。人間の言葉がわかる者もおり多少の雑談をする。ちっぽけな男たちと比べると魅力的に見えた。
それは人型ではなく、かといって知った動物の形をしているわけでもなく、手も足もなく、顔には何もついていなかった。楕円状で、床に転がっている。婚活パーティーの参加者か否か、判別のつかない立ち位置にいた。ただ、顔を見るなり固まっているのがわかった。それから、他の参加者を押し除けるようにして前に立つ。ぐるぐると身体の周りを回られ、グレーとも銀色ともつかない表面に赤色のドレスがうっすらと反射した。
その様子を見て、他の参加者がやれやれと首を振る。相手をしてやってくれと言うものまで現れた。
「なにがどうなってるわけ?」
「これはあなたに一目ぼれをしたらしいのですよ」
求愛のダンスとでもいったところだろうか。
***
結果的に、その例えようもない何かの家に迎えられることになった。
「急いでいたから貴方との家に来たわけであって、別に特別に好きなわけじゃあないんだから」
そう口にしつつ、この丸く可愛らしいフォルムのモンスターが自分を甲斐甲斐しく世話してくれるのは気分が良い。優しいし、不自
由がない。
ただし…。
「すっかり自由じゃないっていうのは困っちゃうわねえ」
首に付けられた赤い輪を引っ張りながら呟く。
どうやらモンスターは愛玩動物として気に入ったらしかった。気が付いたところでもう遅い。
まあ、いいかと思うのは主人がつがいとなる新たな愛玩動物を連れてきたところだった。イケメンで屈強。申し分なし。
冬には家族旅行に同行させてくれるらしい。
読んでいただきありがとうございます☺
読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!
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