表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/88

直し屋さんの原点

どのお話からでも読める一話完結掌編です。

令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。

箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。

ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。


R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)


創作家さんに100のお題よりお借りしています。

010. 歪

 小さなころから何かを作るのが好きだった。図画工作創意工夫の授業が大の得意で、終了のチャイムが鳴るのも構いなく、好き勝手に何かを作っては教師にため息を吐かせていた。


 進学してからは技術増進の授業に執心した。最初はパッケージに忠実に作っていた作品はいつしか改造されて、規定外の機能を持つものに変化した。


 異なる素材を切り貼りして形になった時の達成感が好きだった。


 自宅では壊れた物を分解して構造を知ることに夢中になる。なにか生み出すこと、何かを直すこと、それらが組み合わさり、マニブス・パルビスという特殊な環境で変異し、直し屋という人間を作り出した。


 初めて、猫を直したとき、両親の顔は渋かった。


 猫だったものはちゃんと四つ足で歩いていたにもかかわらず、その首は悪戯した犯人に持ち去られてしまったようで、代わりに陣ノ目が作り出した木の首が据えられており、声帯のない猫は首に電子工作で作ったスピーカーを付けざるを得なくなった。


 両親に秘密裏に処分されそうになった猫を懐に隠して夜道を走る。逢魔が時は別の世界への入り口だ。すれ違う怪異や化け物の影に身震いする。夜の住人達から隠れるように路地の脇のドラム缶の影に隠れた。


 いつの間にか腕の中の猫は息絶えている。今まで二人だったのが急に一人になる。死が笑っているのを感じた。


「陣ノ目」


 ふいに少女が名前を呼んだ。


 手を差し出したのは幼馴染だった。くせ毛を爆発させたシルエットでそれとすぐにわかる。


「迎えに来た」


 抑揚がない声はいつものことで、それでも陣ノ目を元気づけようと言葉を紡ぐ。


「おじさんもおばさんも心配してたよ」


「それは、俺が猫を直したこと?」


 陣ノ目の問いに首を横に振った。


「あなたが夕方から出ていっちゃったことに決まっているでしょ」


 その返答は真実かどうかわからない。


 それでも帰る場所はそこしかなかった。少年は幼馴染と共に猫を埋め、家路を辿った。

読んでいただきありがとうございます☺

読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!


もしよければ評価を頂けるととても嬉しいです。


各種リアルイベント、WEBイベントに参加しています。参加情報については、活動報告に掲載中です☺

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文学フリマ東京39、コミケっと105ありがとうございました。
BOOTH通販を開始しています。よろしくお願いします☺
なにかありましたら、お題箱にて。感想や反応をもらえるととても喜びます☺
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ