もろびとこぞりて
どのお話からでも読める一話完結掌編です。
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
008.魔性
全ての存在がこの眼に魅了されている。
『ここで処分されなかったことに感謝を忘れないように』
母親の弟に引き取られた際に言われた言葉だ。叔父は優しかった。自らの姉を狂わせた子供に、感謝をする習慣を教えたのも叔父だった。魔性を宿す眼にいち早く気が付き、視線を遮る装身具を与えてくれたのも叔父だった。この東地区で教育を受ける手筈を整えようとしていたのも叔父だった。その叔父はある夜、魔性に触れたことを恥じ自ら命を絶った。
***
生まれたばかりの赤子と交わろうとしていた妻を発見したのは赤子の実の父親だった。妻が狂ったと思った男は小さな身体をその凶悪な手から引き剥がし、妻に離婚を言い渡した。孤独になった女は半年後に手首を切った。その母親から離れて育った赤子は成長し、父親の肉親である己の祖母とその娘を傅かせていた。周囲の家で関係を持っていない人間はなく、父親の後妻に組み敷かれ、発見した父親に悪魔と呼ばれた。
男は悪魔を殺せなかった。息子の眼に見つめられると殺意以上の衝動に駆られるのだった。すなわち、この男を抱きたいという欲情。飢えにも似たその渇望に辛うじて抗った父親は息子を手放した。
特区外であれば、どのような問題を引き起こしたとしても、その戸籍管理上、一人の人間を抹消することは不可能だ。しかし、ここは特区。子供一人の命を消すことは容易い。その簡単なことが成されなかった。不思議な巡りあわせだろうか。それとも、魔性ともいえる少年の力のせいだろうか。
読んでいただきありがとうございます☺
読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!
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