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第4話 警告

 午前の授業が何事もなく終わり、昼食をミヤルとスクアーロに誘われる。

 昼食を食べているとミヤルがからかってくる。


「そういやフカ、朝にアクーラさんと一緒じゃなかった?」

「昨日ちょっとあってさ、それで先生に呼び出されてたんだよ」

「ふうん?」


 ミヤルとスクアーロに警告する必要があると思い出す。

 スクアーロもまだ食事中でゲームをしていない。話をするなら今しかない。

 制服のシャツを少しめくる。


「そうだ、二人とも帰ったら着といてくれない、これ」


 そう言って制服の下に着ているパワードスーツを見せる。

 自分が着ているのは普通のパワードスーツではなく、エレメンタルカートリッジを装備できる戦闘用のパワードスーツ。

 ミヤルとスクアーロは同じ型のパワードスーツを使用しているため、すぐに物が何かを理解したようで目を見開いている。


「フカ、それ……普通のじゃないだろ?」


 ミヤルが戦闘用とは言えないためか言い淀んだ。


「そうだよ。昨日そのくらいやばい違法品が出てきてさ」


 今朝エレメンタルカートリッジの事を話しているときに聞かれてしまったので注意する。

 自分が着ているパワードスーツのエレメンタルカートリッジがある場所を指差し、二人に違法品がエレメンタルカートリッジであると伝えようとする。

 思惑通りしっかりと伝わったようで、二人とも顔が引き攣っている。

 自然と三人の顔が近づく。スクアーロが小声で尋ねてくる。


「どこで出た?」

「自分たちが住んでる寮の前」

「三区かよ」


 ミヤルとスクアーロが天井を見上げる。


「着といてくれる?」


 再度二人に注意する。


「分かった。今日はまっすぐ寮に帰って着ておく」


 スクアーロの返事と同時にミヤルも深く頷いた。


「フカはどうするんだ?」

「ギルドで事情を説明して、製造番号照会してもらう」

「製造番号までよく分かったな」


 スクアーロに言われて思い出し、小声で話す。


「二人も関係あるから注意して欲しいんだが、MPが自分たちのギルド証を確認すると、隠してあることも見えるみたいだ。それで事情を知ったMPが情報くれた」


 三人共通の秘密であるため、注意を促した。


「そう言うことか。しかし、MPって見えるのか」


 スクアーロとミヤルが顔をしかめている。


「じゃ、そう言う感じなんでよろしく」


 ミヤルとスクアーロが頷く。

 昼食にふさわしい話題ではなかったが、伝える必要があったことだ。


 昼食後の授業前、全校生徒向けにメールが配信された。

 不審者が出たため、寄り道せずに寮に帰るようにと書かれている。さらに授業が始まる前、教員から連絡事項として同じ内容を口頭で伝えられる。


 最後の授業が終わると、アクーラさんが近づいてきた。


「フカくん、メールって朝のことかな?」

「そうじゃないかな」


 不安そうな様子のアクーラさんを見て尋ねる。


「アクーラさん、今日は仕事あるの?」

「仕事はないから、今日は寮に帰ろうと思うんだけど……フカくんは?」


 自分はギルドに直接行こうと思っていた。ミヤルとスクアーロにアクーラさんを寮まで送らせようかと一瞬考えたが、随分と不安そうなアクーラさんを見て止める。

 自分が寮まで送っていくことにする。


「ギルドに行く予定だけど寮まで送ってくよ。車でギルドまで行く予定だったから」

「いいの? 遠回りじゃない?」


 遠回りかと言われるとそうなのだが、五区まで行くことを考えると誤差の範囲。


「通り道みたいなものだよ」

「ありがとう」


 アクーラさんと話していると、クラスメイトのサンオさんが近づいてきた。


「アクーラ、今日はどうするの?」


 アクーラさんとサンオさんは仲がいい。

 サンオさんは自分と同じような東アジアをルーツにもつため肌の色や髪の色が似ている。違いといえばサンオさんは黒髪を肩ほどまで伸ばしているところだろうか。後は黒目にうすだいだい色の肌ととてもよく似ている。


「あ、サンオ。今日は寮にまっすぐ帰るつもり、フカくんが送ってくれるって」

「フカさんに? それほど仲がよろしかったかしら?」


 サンオさんが不審そうな目を自分に向けてくる。

 昨日のことを直接は話せないため、メールの内容にあった不審者として話す。


「昨日アクーラさんが不審者に襲われて、自分が偶然居合わせたんだ」


 サンオさんが目を見開いたあと、アクーラさんへ視線を移す。


「メールの不審者に出会ったのは、アクーラでしたの?」

「うん、そうなの。フカくん通らなかったらって考えると怖くて……」

「そうでしたの」


 昨日のことを思い出したのか、アクーラさんの顔色が良くない。

 サンオがアクーラさんを心配そうに見ている。


「でもアクーラ、二人で帰るのはどうかと思いますの。私も一緒に寮まで帰りますわ。よろしくて?」

「サンオも一緒に?」

「そうですわ」

「私はいいけど……」


 アクーラさんがこちらを見る。


「フカくんは問題ない?」

「問題ないよ。二人が帰る準備ができたら行こうか、車は用意してあるから」


 アクーラさんとサンオさんが頷く。

 勉強道具を片付けた後、三人揃って教室を出る。

 学校の駐車場に停められた自分の車に近づく。車のドアを開け、二人に乗るようにエスコートした上で、自分は運転席に座る。

 サンオさんが不思議そうな声で尋ねてきた。


「フカさん、女性慣れしているというよりも、執事みたいですわね?」

「ちょっと前だけど、そういうバイトしたことあってね。色々教わったんだ」


 サンオさんは財閥のお嬢様、当然家には執事がいるのだろう。

 エスコートの仕方が執事ぽいと言われて自分はちょっと動揺する。


「珍しいですわね? そのような仕事は普通募集していないものです」


 あんまり続けて欲しい話題ではないのだが、サンオさんは続けて聞いてくる。


「その通りだよ。自分がやりたかったかと言われると、そうでもないんだけど……」

「あら、そうなんですの? というか、あまり詳しく聞いて良いような話題ではないようですわね」

「うん、まぁ……その、正直そう」

「失礼いたしました」


 正直にいうとサンオさんは引いてくれる。

 サンオさんは喋りたくなさそうなのを理解したからか、それ以上尋ねてくることはなかった。仕事先の相手など喋れることではないので、とても助かる。


 目的地を寮へと設定すると、車が自動で進み始める。

 アクーラさんが運転席を覗き込んでくる。。


「あれ? 自動運転なんだ。運転席に座ったから、自分で運転するのかと思った」


 今は自分で運転するよりも、何かあった時すぐに動けるように自動運転の方がいいと考えている。アクーラさんを不安にさせないように伝える。


「緊急時以外は運転しないかな。免許は持っているから運転できるよ」

「そうなんだ。サンオはよく自分で運転しているよ」


 お嬢様であるサンオさんが自分で運転?

 思わず驚き振り返ってサンオさんを見てしまう。


「そうですわね。私は運転が好きですから」


 なるほど趣味か。少し珍しい気もするが、ないわけではない。


「ところでフカさん、この車レンタルじゃなくて、自家用車で随分改造されてますわね。レース仕様ではありませんか?」

「分かるんだ。この車は個人所有で、少し変えればサーキットで走れるようにしてあるよ」

「あら、私も結構サーキットで走るの。今度一緒にどうかしら」


 サーキットか。嫌いではないのだがもっと適任がいる。


「自分もできるけど、自分の友達でクラスメイトのスクアーロを誘ってやって欲しい。この車は元々スクアーロのだったんだ」

「あら、そうなんですの?」

「新しい車に買い替えた時、壊れた時の予備で残しとくから乗ってろって。ついでにサーキットでのレースに付き合えと言われてる」


 実際のところスクアーロは予備として残しておくというのは言い訳で、実際はサーキットでの練習相手が欲しかっただけ。自分は以前からスクアーロに付き合ってサーキットで走っており、運転が嫌いでなかったためすぐに了承した。


 しかし、渡された車は完全にサーキット仕様で公道を走れない上に、乗り心地が非常に悪かった。自分はサーキットでのレースに付き合いながら、公道でも走れ、乗り心地も良くなるように車を調整している。

 速度は多少落ちてしまったが、快適になった。


 ちなみにスクアーロの車は完全レース仕様で、公道で走れない。三人で乗る場合は車を手配するか、自分の車で移動している。


「スクアーロさんですか。ゲームしている印象しかありませんわね」

「あ、私もそうかも」


 サンオさんとアクーラさんのスクアーロに対する印象は間違いない。


「スクアーロの印象はそれで間違いじゃないよ。やっているゲームは全部レースゲームで、車、バイク、宇宙船と種類は色々だけど」


 スクアーロはトーナメントの予選があるゲームを暇がある時はずっとやっている。本戦は実際のレースで、予選はゲームというレースが意外に多い。ゲーム側で感覚機能を同調できるため、擬似的に大会と同じ感覚で走れるようになっている。

 本戦に出る前に実際に走っておくべきだが、数周もすれば予選を突破する能力があるのなら慣れる。


「でしたら、今度サーキット場を借りられたときお誘いしますわ。アクーラも仕事がなければ来てくださいな」

「サンオ、もちろんだよ」


 自分も走るのは嫌いではないため、財閥の令嬢が借りるサーキットの場所が気になる。


「サンオさん、サーキットはどこの借りてるの?」

「色々ですが、大体は二区にあるサーキットですわね」


 さすが財閥ご令嬢、いいサーキットを借りている。


「二区のサーキットは良いコースだよね」

「あら? 普通の人は借りられない場所ですが、行ったことがあるんですの?」

「友達のミヤルの家がレースチームのスポンサーしているから、スポンサーチームが借りてる時に走らせてもらっているんだ」

「なるほど。二区の出入りもミヤルさんのご実家が保証しているのですね」


 二区への出入りができる身分証は自分で所有しているが、詳しく教えるのわけにもいかない。それに、中等部の時はミヤルの実家に保証してもらって出入りしていたので間違いではない。


「そうだね。ところでサンオさんは一区のサーキットに行ったことは?」

「レース観戦ならありますが、走ったことはありませんわ。普通借りられませんでしょ?」

「普通なら借りられないんだけど、スクアーロの努力で時々借りられるんだ。借りた時は誘おうか?」

「まあ、まあ、まあ、まあ! 良いんですの!」


 サンオさんの反応が想像以上にいい。

 一区のサーキットは自分達の住んでるコロニーで最上位の公式レースが行われる場所。普通は練習用としては貸し出していないのだが、抜け道を使って借りられるようにしている。

 アクーラさんが、予想以上に興奮してしまったサンオさんを落ち着かせようとしている。


「サンオ、サンオ。落ち着いて」

「アクーラ、一区のサーキットですのよっ! 本当に本当にいいんですの!」

「フカくん。良いんだよね!」


 刺激が強すぎたようで、サンオさんが興奮しすぎており、アクーラさんが慌てている。

 知り合いの少人数で走っているだけであり、自分がサンオさんを誘ったところで問題はない。


「勿論良いよ。次借りられる時期は分からないけど、借りられたら連絡するよ」

「一句のサーキットで走れますの!」


 その後も寮に着くまでサンオさんの興奮は収まらず、アクーラさんは宥め続ける。

 サンオさんを宥めているアクーラさんに少し申し訳ないなと思ってしまった。


 寮の前まで来るとサンオさんもさすがに落ち着く。

 自分は二人が車から降りるのをエスコートする。


「フカくん、送ってくれてありがとう」

「フカさん、ありがとうございます」


 アクーラさんは普通に、サンオさんはちょっと顔を赤ながら恥ずかしそうにお礼を言ってくる。


「気にしないで。じゃ、明日また学校で」


 挨拶した後、自分は車に乗ってギルドに向かう。

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