そのなな
「あーちゃん!ありがとー!」
岬が初めておばあちゃんから例のバッジをもらった時の事だ。
その日は暑かった。
夏なのに夏が嫌いになるくらい。
毎日遊びに行っては、ボロボロになって帰ってくる。
それは岬の秘密な部分のせいもあった。
(いい意味で引っ張り凧だったのだ)
おばあちゃんこと、みかさんは、そんな岬をみていてサポートしたくなった。
それが例のバッジだ。
「岬、ひとつだけ言わなければならないことがあるんだ」
みかさんは、縁側から外を見ながら言葉を吐露する。
そんなみかさんの後ろ姿を、岬は黙ってみていた。
「そのバッジは、岬の悩みを解決してくれる。だけどその代わりに問題があるんだ」
真剣なみかさんに、岬は気にせず聞く。
「問題?なんなの?あーちゃん」
「副作用‥があるみたいなんだ‥」
みかさんの言い方がなんだか心地よく聞こえる岬。
岬はボーっとしている。
岬はおばあちゃんの声が好きだからだ。
「ごめん!ごめん!岬には難しい話だね!つまり、何かわからないけど、体に反応が出るってことでわかるかな?」
さすがのみかさんも、少し困ってしまう。
「お熱でたりとか?」
岬がボーっとなりながらもこたえる。
「‥かもしれないね!」
みかさんの岬への気遣いでもあった。
実際は熱なんかでなかった。
岬の副作用は、心にでたからだ。
そうして今の岬がいるわけである。
この心の中の岬は、他人から見えないし、バッジでごまかす事はできない。