そのご
他人にはそうみえても、本人はどうなのだろうか?
そんな疑問を抱いてしまう。
こればかりは岬自身に聞かないとわからないことだ。
蓮は、見た目は男の子だが、乙女心も持ち合わせたいわばジェンダーレスな人である。
蓮は、岬が2人に見えること、周りは、くん、さん、と呼び方が変わることにすぐ適応した。
「だって、岬は岬でしょ?」
確かにその通りだ。
「あたしもあたしだし!」
それも間違いない。
そんな蓮だからこそ、岬は信頼していた。
多分、いや、絶対、蓮は疲れたはずだ。
岬はそう確信していた。
でも、蓮はそんな素振りもみせない。
「岬こちゃんかわいいし、岬おくんは‥あたしのタイプではないわね!」
蓮の笑い声が楽しそうに聞こえる。
そんな当時のボクは、わたし、と自分の事を呼んでいた。
「あたしは、あたし。岬は岬よ!」
また蓮に言われた。
わかっていても、周りを気にしてしまう自分がいたし、それが歯痒かった。
なにより、わたし、が無難だからだった。
でも、その日から僕、ボクと言うことにした。
女の子の時のボクは、男子ウケした。
そんなこんなで、現在に至るわけだが、よく考えると、一番大変なのは蓮だと思う。
蓮は男も女も関係ないところにいるからかもしれないが‥。
ある意味、神様みたいだと岬は思ったりもした。
当の本人は、そんな風に思われてるとは知るよしもない。