九話 初めての日
「ツーン」
生が家に帰ってきてから一切なにもせずソファーに座っている。うわぁ、怒っているな。でも本気に怒っているわけではないことは見てわかる。機嫌が悪いということはわかるが俺には心当たりがない。
だから俺ができるのはお風呂に入ること。これは目の前のことから逃げることでもある。
一回時間を置くしかないと思う。
独はやはり私を異性として見ていない。きっと親友として見ている。でも親友ということについては嬉しい。でも異性として見られていないことは自分に魅力がないと思ってしまう。
まぁ、仕事場では、
「こんな可愛いのに彼氏の一人もいないのか、残念だね」
とか言われたりはしてるけどそれは私より年齢が高いからのことで同学年の人達は私に対してそうは思わないだろう。
私は学校と仕事では全く違うから。
そんなんだから昔の私はそんなことを気にしていた。
でも今となっては違うから、なんですか?って話だ。だって独がいるから。
独は真面目の時は責任を取る性格しているから、私以外の人とは付き合わないはずだ。だから一生に居られるはずだ。私は独と一緒に居たい。
昔から私は声優として働いていた。だから学校では眼鏡とか仕事の時と違う見た目にして目立たないようにしていた。だから私はそう思っていた。
でも独にあってからは変わった。正確には同学年の誰かの人に私の素を知ってほしかったのだろう。
あれは中学校の時のある日、その日は中学校の近場の遠足だった。
もちろん班活動で独とは違う班だった。
はやり班の人は私の存在を異端として見ていたのか、無視されていた。私から話すことはなかったけど、話し合いには参加出来なかった。
そして私の班の班活動はスムーズに進んでいった。あまりにもスムーズすぎたのだ、だから時間を使うために裏路地に入り、遠回りに行くことになった。
しかし私の班は明らかにやばいグループに絡まれたのだ。なぜか私だけが見捨てられた。
その時、独が助けてくれたのだ。そして独は言った、
「笑えるな」
そう意味がわからないことを。
でも彼は勝てないことがわかっていたのか最終的に私の手をとって一緒に逃げた。
それ以降私は独とよく話すようになって「独」「生」と呼び合った。
それが独と初めて会った日だった。
だから独だって人間だからミスはあるし、失敗だってあるから今回のことは許しますか。