三話 部屋
「で、部屋とかどうしたらいいの?」
「そうだね…あっ、他に部屋が空いているからそこでもいい?」
「いいけど…」
なにか隠してそうだな。
この際に聞くのはちょっとやめよう。
「じゃあ、ついてきて」
「おう」
生についていき、部屋の前まで来る。
「コホン」
生はわざとらしく咳をする。
俺はというもの透明になっている刀に持ちながら、部屋の前に来ただけ。
「あのさ覚えてるか知らないけど、中学の時に昼一緒に食ってた時に『もしも独が私の家に住むことになったら…』みたいなの話さなかったけ?」
えっと確かその時俺はこう返したはずだ。
「一緒に飯を食って、一緒にテレビ見ながら話してそして一緒に笑い合いたいだったよな?」
生は驚きながらも、
「そうだよ、まぁ少しだけ忘れている箇所があるけど…今はいいかな、さぁ入った入った」
生に押され部屋に入る。
そこにあったのは使われた感じがないのに埃一つない部屋。しかしベッドやタンスといった家具があった。
「この部屋は今から独の部屋だから、この部屋は独の色に染めてね」
「ああ、もちろんだ」
そう頷いた。
「三灼独楽君だね」
「はい」
あれから数時間して生の親が来た。どうやら俺を正式に引き取るために。
「あのね、独楽君、生香のことどう思う?」
「お母さん、ちょっとやめて!」
生が顔を真っ赤にして止めに入る。
こうして顔を真っ赤にしている生なんて久しぶりに見るな。あの時以来か。
「まぁまぁ、いいじゃない」
「よくないよ」
二人が話している間に生の父が、
「生香のことをお願いね、生香はいつも猫被って生活していて学校に友達がいるか心配で…独楽君だからありがとう」
「えっ」
俺は唐突なことに驚き隠せない。
「独楽君に対して生香は猫を被ってないから、本当に仲が良いんだなって、あ、そうそう」
生の父親はなにかを思い出したのかこう言ってくる。
「もし結婚式あげるならちゃんと呼んでね」
「そ、そんなことはありません!」
急になにを言っているんだ。
俺は生のことを女性としてわざと意識しないようにしていたのに。
「もぉ、帰って!」
とうとう生は我慢が出来ずに生の両親は追い出された。
俺の立場から言えることではないけど、生のことお願いされました。
そう心の中で呟いておく。
ガチャ
そうして家のドアを閉めて俺の前に立った。
「とりあいずもう夕方だから部屋を染めるのは明日にしよう」
「ああ」
そうだな、部屋を自分の色に染めることは明日以降にしよう。
しかし刀を隠して正解だったな、生の両親が来る前にベッドの下に隠したけど、さっき確認したら透明化が終わってたから何時間持つかわからないけど、人前で刀を持っとくべきじゃないな。