十一話 不審者がきてしまった。
あのころの俺は視野が狭かった。でもそんなことを理解していた。だから押し付けることなんてしなかった。
生と初めてあった時、生は明らかに年上のやばそうなグループに絡まれていた。
だから俺はついつい笑ってしまった。
これから俺が邪魔するがその時、どうなるか?もっと笑えるのだろうか?など思っていた。
そして勝てない相手を相手にした時は楽しいのだろうか?
いざ、生を助けようとした時に、少しだけ戦闘をした。その瞬間わかった。
『今の俺では勝てない、だって力の強さ、数に差があり、こっちが圧倒的に不利だ』だから俺は生の手をとって逃げた。でも俺にとってそういうことは刺激にしかならなかった。
生とみんながいる場まで逃げて後、俺は「トイレ」と言って道を戻った。
しかしさっき会ったばかりのグループがいなかった。
おかしいと思った。
もしかして俺はこのころから……ああ、そういうことか。
この刀に救われていたんだな。
俺は輝けない。輝くものが俺には持っていないから。
でも生は声優というもので俺からすれば輝いている。だからといって羨ましいとおもう思うことはない。
人はそれぞれ違う、思考も、天賦の才の有無も、だから俺はそこに笑える。
絶対に追える人を追うよりも自分のことをしっかり見るべきだ。何度見たくなくて逃げてもいい、でもいつかは見なければならない。
だから俺は笑う。
自分を見失なわないように。だから笑う。
俺は憧れがあったとしてもその背中は追わない。そう決めたから。
そうしている間にも生は頑張っている。そうして時間が過ぎて行った。
「独〜」
防音室から出てきてすぐに俺のところにくる。
「お疲れ、でなに?」
「紹介したい娘がいます、加那、来て」
「はーい」
「こちらは雨虎加那さん」
「こんにちは、三灼独楽です」
「こんにちは」
一応お辞儀もしておくか。
その時、俺と同じ瞬間に雨虎さんもお辞儀をしてくる。
少しして顔を上げる。
その時、
受付のいた人が走ってこっちに来た。
「どうしたんですか?今川さん?」
百舌鳥さんが話しかけると、
「ふ、不審者がきて…「ここか!」
大声で叫ぶ男がいた。俺はその姿をみる。
長袖長ズボン、そして帽子やサングラス。手と口と鼻以外の露出がない。
「不審者と言いましょうか、名前はミイラと言います、ミイラだからこんなにも露出をなくしてるんですよ」
確かにその男の手は包帯に巻かれていた。
そしてその男はなにかがおかしい。
「だからなんなんですか?!なんでここんなところに?!」
百舌鳥さんがその男に言う。確かになぜここに来たのか理由がわからないな。
「そうですね…勘ですかね…しいて言えばあの刀の気配がしたもんで」
まさか!俺のポケットに入っている刀のことか。じゃあこの男は刀のことについて知って可能性はある。
「んで、なにをしにきたか、なんですが、簡単です、近日、世界が大きく変わることが起きるでしょう、そのことを伝えにきたのですよ」
「世界が大きく変わること?」
百舌鳥さんは…百舌鳥さんしか話せないか。
「そうです、なにがとはまで言えませんがしいて言うならば…世界が崩壊しかけないことですかね、馬鹿らしいと思うでしょうが…勘違いをしてもらいたくないので言うますが、俺はそのことについて起こす側ではございませんから、では」
男は出口に向か、コツコツと足跡を響かせ残しながら歩いて行った。