むっつりスケベと口先スケベ 2
「カラスウリって知ってる?」
「知らない」
「カラスウリは、こういうの」
私はスマホの音声認識を呼び出し、「カラスウリ」と検索した。
「何かね、こんな白い朝顔の先端にレース状のひらひらが付いた、妖しげな花が咲くんだ。夕方から夜に花開いて、朝方には萎んでしまう。特殊フェロモンを出して、特殊進化した蛾を呼び寄せて受粉させる。真夏の夜の密会だ。真夏の夜の夢、妖しげだろ。
その成果がこれ。普通の卵より、大き目。縞模様が可愛らしいだろ。秋には真っ赤に熟すんだ。昔は、そこらここらに普通に見られたんだけどなあ。広く浅くのNさんでも、知らないんだ」
「それじゃ、ランコウランって知ってるかい。茶臼岳から朝日岳に行く途中に、いっぱい生えていて、黒い実がなっていて壮観だよ」
Nさん、対抗心を燃やしたのか、そんなことを問いかけた。
「ランコウラン・・・ん、これ乱交って、エロサイトが出てきたよ」
「え~何いってるの、スケベだな~。ランコウじゃあ無くて、ガンコウラン。検索し直し」
「変だと思った、ランコウラン何て聞いたことも無い。ガンコウランね。『ガンコウラン』ああ、出た」
「ったく、根がスケベだからガンコウランが乱交ランに聞こえたんだろ」
そこへ、Hさんが通りかかった。
「ゆうちゃん、聞いてⅯさんがスケベ何だから。オレがガンコウランと言うのに、乱交ランだってよ。むっつりスケベ何だから。しょうがないね~」
「まあ~、そうなの」
「いや、それが・・・」
口先スケベのNさんは、Hさんを引き留め下らないことを喋りだした。
その内、前任の人材シルバーで派遣された人の話になり、『こんな人はダメだろ』というのがけっこう居たと知った。
思うに、年寄りは思考が固まり、何も考える必要がない人は自分の楽な方向へ思考が向くらしく、いかにも意固地な年寄りっぽくなる傾向があるようだ。
中には、お客さんの居る前で大声で怒鳴ったりした人もあったという。いい歳をして、配慮も知らないのかと、呆れてしまう。
中には、シルバーから派遣された男女が、波長があったみたいでHさんの目のまえでデレデレ、イチャイチャして見苦しかったという事もあったという。
『老いらくの恋も、たいがいにしてくれ』といった感じかな。その後のことは知らないと言うが、そんな事は想像もしたくない。おぞましく、ホラー映画よりも恐ろしい感じがする。
「Nさん、口先ばかりじゃなく少しは見習ったらいいんじゃない」
「そうだな、Hさん今すぐ始めよう。仕事なんて、放っておいてさ」
「お・こ・と・わ・り」
茶臼岳とは那須連山の主峰。その隣にあるのが朝日岳、1917mです。