大丈夫?
翼を操れるようになったことで、飛んでいった方が早いかもと思いつつ、でも空を飛んでたりしたら目立ってしまうかもしれないと考え、まずは歩いて目指すことにした。
魔人の少女を抱きかかえたままでも全然疲れないし、歩くのももう平気だ。
と、その時、
「……?」
不意に魔人の少女が目を開けて、リセイを見上げた。
本当にただの子供のそれでしかないあどけない表情で。
「あ、気が付いた? 大丈夫? 痛いところとかない?」
リセイは少女に対し、とても穏やかな表情で、柔らかく問い掛ける。
もっとも、言葉が通じる確証はなかったけれど。
すると、少女はきょろきょろと頭と視線を巡らせて、自分の状況を確かめたようだった。先ほどの<敵>がいないかどうかも確認したのかもしれない。
けれど自分とリセイの二人きりだと察したのか、
「オネエチャン、ハ…? ママ、ハ……?」
と尋ねてきた。
『喋った……?』
一瞬、そう驚いてしまったものの、すぐに口の動きと自分が聞き取った言葉とにズレがあることに気付き、クォ=ヨ=ムイに与えられた<能力>が彼女の発した言葉の<意図>を伝えてきているのだと察した。
その上で、
『お姉ちゃん…? ママ…? もしかしたらティコナ達のこと…か? ひょっとしてこの子、ティコナ達のことを自分の家族だと思ったのか…? だからあの時……』
とも考えが頭をよぎった。
なるほどそう考えれば敵意を見せなかったことも、ある種の執着らしいものを見せたことの意味も分かる。
だから、合ってるかどうかは分からないものの取り敢えずはそれを前提として、
「大丈夫だよ。みんな無事だよ」
と応えた。
すると少女は、
「……♡」
すごく安心した様子で、甘えるようにリセイに抱きついてきた。
「オニイチャン……♡」
『お兄ちゃん…僕のことか……?』
少女がどうして自分を『お兄ちゃん』だと思ったのかは分からなかったにせよ、もしかしたら自身と同等の力を持ってることでそう思ったのかもしれないとは推測しつつも、
「よしよし……」
愛おしむように包み込むように抱き締めながら、そっと体を撫でた。
そんなリセイに、少女はますます甘えるように体を寄せる。
ジュオフスとは一緒に行動していたかもしれないが、彼女にとって彼らは<仲間>ではあっても<家族>ではなかったのかもしれない。この子は自分の家族を探していたのかもしれない。
そして自身と同等の力を持った、ジュオフスよりは自分に似た姿のリセイに出逢って彼を<兄>だと思い込んで、そしてその<兄>が明らかに強く意識を向けてるティコナ達を自分の<姉>や<母>と思ったのかもしれない。
もしかしたら、彼女の記憶に微かに残る家族構成が、ちょうど、あの時のリセイとティコナ達と同じだったのかも。




