魔王について
『魔王について詳しく教えてください…!』
リセイにそう言われ、ライラは、
「ごほんっ!」
と咳払いをして、
「分かった。私が知る限りのことを教えよう……」
そう口にした。それから、
「まず、これから伝える話は、基本的には口外無用だ。話したとしても罰は特にないが、無駄に人々を不安にさせるだけだからな。故に私達は、このことについては積極的に触れることはない……」
と前置きする。
『ああ、それでか……!』
瞬間、リセイは腑に落ちる物を感じた。というのも、オトィクの街に来てから、魔王や魔獣についてあまり話題になったことがなかったからだ。
アムギフを倒したことはお祝い騒ぎにもなったけれど、それもあくまで、
『危険な猛獣が、勇敢な兵士達の活躍によって退治された』
程度の印象しかなかったのである。
それらについてのリセイの疑問を、ライラが解き明かしてくれる。
「魔王や魔獣については、私達人間にとっては<嵐>や<日照り>といった災害の一つにすぎないというのが習わしだ。だから、恐れはするものの、備えはするものの、ことさらに不安を煽り立てる必要もないんだ。それが迫った時にはしっかりと対処するというだけで。
だが同時に、魔王が力を強めると<勇者>が現れて共に戦ってくれるというのも確かだった。先代の勇者である<リ=セイ>も、そういう勇者の一人だったそうだ。
だから魔王の気配が感じられるのと同時にお前が現れたのも、そういうことなんだろう。お前が勇者なら、それを狙って魔獣が現れるのも道理。お前の所為じゃない。だから気にしなくていいんだ」
「……はい…」
それまでの疑問が解決されていくと同時に、リセイは自分が安心していくのを感じていた。改めて自分の所為で魔獣が現れて皆が危険に曝されているのでは?という不安がほどけていく。
さらにライラは続けた。
「で、魔王についてだが、実はこれについては『よく分かっていない』というのが正直なところなんだ」
「え? そうなんですか?」
この流れでまさかそんな話になるとは思っていなかったので、思わず問い返してしまう。
そんなリセイにも、ライラは丁寧に答えた。
「魔王は、<ドーレーア>と呼ばれてるそうだ。だが、それが本当に魔王の名前かどうかは分かってないとも言われている。
魔王がいつも『ドーレーア!』と唸っているからそう呼ばれるようになっただとかなんとか。
ただ、人間を憎んでいることだけは間違いないらしい。人間に対しては問答無用で攻撃してくるそうだ。
先代勇者の<リ=セイ>が魔王を退けてから二百年。魔人まで現れたということは、いよいよ魔王が動き出したということだろう」




