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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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能力について

『いくら歩いても疲れなくなったらいいのに……』


リセイがそう思ったにも拘わらずそうならなかったのは、実は能力が発動していないからじゃなかった。


と言うのも、『疲れなくなったらいいのに』と考えていたのと同時に、


『あ~、しんど……』


などと、自分が疲れていることを彼自身が受け入れてしまっていたのが原因だった。


だから、正しくは、


『自分は疲れてない。疲れない!』


と思い込むことが必要だったのである。


前にもふれたとおり、無意識に思っていることでも、場合によってはその通りになってしまうことがあるのだ。


能力を使いこなすにはその辺りを理解しないといけないかもしれない。


でもまあいずれにせよ、今のところは無事にオトィクへと辿り着くことができた。


「どう? 歩ける?」


夕暮れの街は通りを行き交う人も多く、活気に溢れた街のようだった。その中で、ティコナはリセイを気遣ってくれた。


エルヘムという老人の馬車は、目的地が違うので街に入ったところで別れたのだ。


「うん。馬車で休めたからなんとか」


リセイは、やや強がりも含みながらもそう応えた。


「もう少しだから」


ティコナは彼の肩にそっと触れて、励ましてくれた。女の子にそんな風に触れてもらって励まされたことなんか、記憶にある限りではなかったから、リセイは胸がドクンと高鳴るのを感じつつ、不思議と力もわいてくるのを感じた。


これはまあ、単純にテンションが上がったことで脳内物質が分泌されただけだったが。


それでも、ティコナの先導で歩いて、


「ここが私の家だよ、<エディレフ亭>っていう食堂なんだ」


彼女が指し示した先に、なるほどいかにも<大衆食道>という感じの店があるところにまで辿り着いた。


「私も店の手伝いをしててね。それでマルムを採りに行ってたんだ」


笑顔で軽くそう言う彼女だったけれど、何だかんだで片道二時間くらいはかかった気のする森の中まで女の子が一人で歩いて出掛けてたことに、


『自転車とかもないんなら歩くしかないんだろうけど、マジか……』


と改めて驚かされてしまう。


「ただいま! お母さん!」


もう喋るのも辛いくらいにへとへとの自分に比べて張りのある明るい声でそう言ったティコナがなんだか眩しすぎてリセイは目を向けていられなかった。


しかも、


「おかえり!」


と返ってきた声がまた張りがあって力があって、なんだかそれだけで弾き飛ばされそうな気さえした。


その声の主は、ティコナによく似た、でも二回りくらいはふっくらとした印象の、それでいて、


<とても可愛らしいお母さん>


という感じの女性なのだった。



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